また渡し逃げする……
牛乳、リボーンフィンチの卵、ホットケーキミックス。
全部混ぜればめっちゃ美味しいホットケーキが出来る……ハズだった。
――だけどラベンドラさんは余計な物も入れちゃった!
それは――異世界バナナ。つまるところ見た目が牡蠣のあれである。
台無しだよ! 主にビジュアルが!!
「? パンケーキだろう? 合うぞ?」
「……分かってます」
唯一の救いは丸のままではなく、スライスして入れられている事だろうか。
ぜんっぜん救いでもないんでもないが。
「あ、ダマとか気にせずさっくりと混ぜる程度で大丈夫です」
意外にみんなが知らないホットケーキの作り方。
コツは混ぜ過ぎない事。
お箸とか泡立て器でガシガシ混ぜるより、ヘラでさっくりと仕上げた方が美味しいよ。
「で、バターをひいて、生地を流して……」
さらにここでテクニック。
片面が焼き終えたら、ひっくり返す前に生地をおかわり。
ひっくり返す先の生地に乗せるように追加してから裏返せば、焼き上がる頃にはパッケージみたいなふんわり分厚いホットケーキが出来上がるって寸法よ。
……昔あってた生活の知恵紹介番組的なので見た。
残念ながら捏造だかやらせだかで無くなっちゃったけど。
「かなり膨らむな……」
「でしょう?」
どや顔ダブルピース。
まぁ、全部企業努力のおかげなんだけど。
「なぁ、これらを用意出来るか?」
「普通に無理」
で、『無頼』さんとアメノサさんはホットケーキミックスのパッケージに書いてある成分表? みたいなのと睨めっこちゅう。
そういや、あれらも異世界語に翻訳されてるんだよね?
……あれ? 俺と『夢幻泡影』に翻訳魔法が適用されてるのは分かるけど、あの二人にも適用されてるの?
もしくはあの二人は自前で翻訳魔法を使ってるのかな?
「『無頼』、アメノサ、お前らも食べるだろう?」
「まぁ」
「愚問」
ポンポン焼いていってるけど、まだまだ食べそうだな。
意外と使わずに眠ってたやつだから、全部作って貰って構わないけど。
「ちょっと味見したい」
なんて言いだしたアメノサさん用に、フライパンの端で極小サイズのホットケーキを焼くラベンドラさんマジでお兄ちゃん。
俺分かったかもしれない。
アメノサさんの動きが根本的に妹ムーヴなんだ。
だから『無頼』さんとのやり取りなんかで兄妹か? って思ったんだな多分。
「ほれ」
……あの、ラベンドラさん?
何をどうしたらフライパンでどら焼きみたいな綺麗な焼き色が付いたホットケーキを焼けるので?
ちょっとその謎を詳しく……。
「ふわっ! ふわふわ!!」
焼きたてなのに素手で持って食べてるのはもはや今更だよね。
異世界人だもんね。
んで、一口食べて目がキラキラと輝いてますぜ。
食べさせ甲斐のある反応しやがって。
「美味いか?」
「すっごく!!」
美味しいという表現なのかは知らんけど、九本の尻尾がウェーブを打ってるのちょっと面白い。
……モフりたいなぁ。
やらしい意味じゃなく、純粋に尻尾モフモフしたい。
うん、やめとこう。何されるか分かったもんじゃないから。
「焼くだけ焼いたら持って帰って向こうで仕上げだ。アイス、生クリーム、チョコ、フルーツ、大量にトッピングする」
「最高おぶ最高ですわね!!」
「パンケーキ、甘い物、ご機嫌な朝食だ」
「コーヒーも頼むぞい。甘い物だけじゃちときついわい」
なんて言いながら、焼き上がったパンケーキは状態保存の魔法を使って焼きたてを固定し、虚空の彼方へ。
で、人数分……にしてはかなり多い量を焼き上げた後、
「ではカケル、また」
「はい。……あ、『無頼』さんとアメノサさんは明日も来るんですか?」
「なンでンな事聞く?」
「もし来るなら二人分も追加でご飯用意しておくので……」
「っ!? 行く!! 絶対に来る!!」
「あ、はい」
来るみたいです。
『無頼』さんが、こいつマジか? みたいな目でアメノサさん見てるけど。
来る気満々みたいです。
「迷惑かけるな」
「まぁ、この際ですし……」
一人前と二人前の料理を作るのがあまり変わらないように、五人プラスアルファ前と七人プラスアルファ前を用意するのももはや誤差だよ、うん。
「そんなカケルに新食材じゃわい」
「へ?」
「お、それか」
「明日を楽しみにしてる」
あの、魔法陣に入りながら食材渡さないで。
何の説明も無しに置いていかないで!
ねぇ! 待って!
……行きやがった。
えーっと……とりあえず白身魚っぽいけど……。
「ヘイ神様? この魔物の事を教えて?」
(闘魚倭種じゃな。こっちの世界で言う……あの……あれじゃ)
どれ?
(捌くのに免許が必要な……肝に毒がある……)
フグ?
(それじゃそれ。大体はそれじゃ)
フグか―……。ちなみに毒は?
(毒は無いが呪いはあるぞい)
毒無し、か。呪いはあるけどまぁ、解呪は出来るし。
とりあえず薄切りして塩茹でにするか。
下手しなくでもマグロぐらいのサイズあるな、これ。
あくまで全体で、だけど。
俺が渡されたのは四分の一くらいか。
「……ん?」
塩茹でにして食べてみたけど、何と言うか……。
思ってたのと違うな。
もう一切れ……。
「なるほどなるほど……」
しっとりした食感にきめ細やかな脂肪。
脂はサラサラとしていて甘みがあり、肉自体はとても旨味が強い。
――えーっと……。
「ほぼ豚肉かな?」
こいつ魚だよね?




