つまりケチャップ無しオムライス
「材料用意しますよ」
「大丈夫だ。私が持ち合わせているもので作る」
「? 出汁とかもあるんです?」
異世界食材だけの他人丼、美味しそうとは思うけど……。
出汁まで頼らないとなると一体どんな味になるやら……。
「出汁も使わない」
「……ほぅ?」
「まぁ見ていろ」
しかも出汁は使わない……と。
んじゃあどんな他人丼を作るのか、お手並み拝見って事で。
まずはテンペストワイバーンを一口大に切って、皮の付いた方から焼いていく。
こんがり焼けたらひっくり返し、反対もこんがりと。
……テンペストワイバーン、皮からかなり脂が出るな。
焼くってより揚げ焼きみたいになってる。
「チーズ水を」
「はい」
で、テンペストワイバーンが焼けたらチーズ水をフライパンに流し、チーズの特性を熱することで出しまして。
……多分バジルかな? よく分かんない緑の葉っぱを手で千切ってまぶし、更に恐らくはブラックペッパーを高い位置から振りかけて。
最後に、溶いたリボーンフィンチの卵でとじて完成。
ムラなく卵に火を通すために蓋をして、その間に丼にご飯をよそっていく。
「この茶もうめぇな」
「ね。香ばしい」
麦茶を美味しそうに飲む『無頼』さんとアメノサさんにほっこりしつつ、完成した異世界他人丼を運びまして。
「こっちでは出汁を用意するのも大変だからな。こうして作りやすいようアレンジしている」
「洋食風親子丼みたいな感じで面白いですね」
実際、出汁をチーズに置き換えた親子丼とか美味しいだろうし。
……ちょっと水分が欲しいかも? 洋食風で考えるならトマトとかかな。
トマトチーズチキンの卵とじ丼。普通に美味しそうじゃない?
「うぉっ!? うめぇっ!!」
「これ美味しい!!」
で、誰よりも先に食べた『無頼』さんとアメノサさんが大きな声で異世界他人丼を褒める。
まぁ、ラベンドラさん作で不味い作り方して無いし、そりゃあ美味しいだろうよ。
「テンペストワイバーンの肉汁とチーズ水の相性が抜群ですわよ!」
「米が進み過ぎる……」
「酒にも合うぞ~い」
もちろん『夢幻泡影』にも好評と。
俺も食べよ。
「むほほほ」
美味し。
美味エルフですわよ。
香ばしく焼き上げられたテンペストワイバーンの肉の旨味と、チーズ水の旨味。
あと、異世界バジルの香りがいいね。こっちの世界のバジルと比べて結構パンチが聞いた香りかな。
甘い香りはしない。
その分、かなりワイルドな感じに仕上がってて、異世界ブラックペッパーもそれに加担してる。
ピリッと来る感じよりは痺れるような感じだね。
山椒とかに近いかもしれない。
でまぁ、それらがご飯に合わないわけ……無くない?
「リボーンフィンチの卵も美味しい」
「良く手に入ったな」
「うちで増殖し続けてますからねぇ……」
本体と言うか、母体は冷蔵庫でずっと待機させられてる。
出て来た分身卵は料理に使わせていただいておりますわよ。
「……いくつか、分けて」
「構いませんけど?」
「分けるほどあるんか?」
「今すぐは無理ですよ? でも、数日卵を使わなければいいだけなんで……」
「? 増殖は間隔開くはず」
「うちのは毎日分身しますよ?」
「……この場所、ズルい」
ズルいと言われても……。
その辺の文句は神様に言ってもろて……。
「てかマジで酒がうめぇ。ガブロのおっさん、この酒、ドワーフで再現出来ねぇのか?」
「とっくにやっとる。……が、まぁなんと言うか。ここまでクオリティ高いものが出来とらん」
「酒に対する情熱がバケモノなドワーフですら再現が無理なのか?」
「材料の質が違い過ぎる。そもそも、お主らも食うた米がこの酒の原材料じゃぞ?」
「は? これが酒になンのか?」
ガブロさん、お酒の話が出来る人が来てくっそ嬉しそう。
話聞く感じ、異世界稲作はあまり順調とは言えないみたい。
まぁ、そんなすぐに現代日本に追いつかれたら、俺らの祖先の頑張りとは……ってなっちゃうけど。
「農業ギルドもかなり力を入れているんだがな」
「私たちの国と共同研究する?」
「こちらの国の技術を一方的に持って行かれるだけですわね。今のままだと」
「稲が生えているダンジョンを教えるから、そこから持って行って独自で研究しろ。こちらと違う研究成果が出たらその話も考えられるかもな」
で、アメノサさん、丞相だからかすぐに政治的な話をし始める。
……どうやって市場に流通させようかとか考えてる『夢幻泡影』も居るし、今更だけど。
「ふぅ。ごっそさン」
「この丼も美味かったのぅ」
「結構自信作だ。今後作っていく」
「こんな美味しい料理、毎日食べてたの?」
「最近になってだ。我々がこの場所に辿り着いたのは」
最近……最近かなぁ?
まぁ、エルフ的感覚だと最近なんだろうな、うん。
考えないようにしよう。
「美味しかった。丼も、お魚ご飯も」
「あれはお寿司って食べ物ですよ」
お魚ご飯て。
寿司をお魚ご飯て。可愛いかよ。
「お寿司……覚えた」
「……何を勘違いしてるんだ?」
「ン?」
「ひょ?」
「まだカケルの提供フェイズは終了してないぜ?」
さて、と。
準備するか。
「カケル、デザートを」
「今持って来ますねー」
ドロー! 現代甘味!! 召喚!!




