血液承認
「ガブロ……何あれ?」
「ん?」
翔宅で玄関に靴を移動させる最中。
ガブロに案内される『無頼』とアメノサは、少し怯えた表情でガブロに問う。
「威圧感っつーか、圧倒するような空気が半端なかったぞ」
「あれ……人間だよね?」
どうやら、その怯えの正体は翔にあるらしく、その翔についてガブロに尋ねる。
「まぁ……人間ではあるな」
「なンか含みを持たせた言い方だな」
「神と直接やり取りできるような存在じゃからな」
「「……はぁっ!?」」
*
「「はぁっ!?」」
なんか玄関から大きい声が聞こえて来たんだけど……。
ガブロさん、変な事吹き込んでないよね?
「……それで? あの二人はどちら様なので?」
「男の方は『無頼』。何度か話題に出したことがあるな」
「あ、あの方が『無頼』さんなんですね」
あれだよね? 日本酒を気に入ったとか言ってた人。
……人? 獣人っぽかったよな? その場合の数え方いず何?
匹は流石に失礼か。
まぁ、人でいいよね?
「で、もう一人の女性の方はアメノサと申しまして……」
「『無頼』の住む国の丞相様じゃわい」
……丞相?
どうしよう、その言葉、三国志以来の顔合わせなんだけど。
何する人? 多分政治関連だよね?
「……で、何故ここに?」
「分からん」
「私たちの転移魔法は、そもそも私達以外転移出来ないような条件ですの」
「それを搔い潜った方法はむしろこちらが知りたい」
と話してたらガブロさん達が戻って来た。
「とりあえず、説明」
「こっちの台詞だ」
戻ってきた瞬間にアメノサさんが口を開くも、すかさずマジャリスさんが反論する。
「どうやって我々の転移魔法にただ乗りした?」
「……秘密」
「カケル、神に頼め。お前の命を脅かそうとする存在で、今後ワインの供給が止まるかも、と」
「っ!? しゃ、喋る!!」
慌てた様子でアメノサさん、喋りはじめたけど……。
そんなにその脅し、聞くのか。
「黙って四人の血を少量ずつ頂いた。その血を『無頼』にも分けて、転移魔法に入った」
「本人証明に血液を用いた、と。確かにそれなら……」
「……転移魔法の制限を厳しくするか?」
「厳しくし過ぎると不都合が起きますわ。あとで考えましょう」
よく分からないんだけど、そんな生体認証みたいなシステムなの転移魔法?
かなり科学よりなシステムだと思っちゃうんだけど……。
「質問に答えたからこっちの質問にも答えて貰う。ここどこ?」
「神によって隔離された、世界から隠された空間だ」
「神の声を直接聞ける存在が私たちの世界に現れたら、どうなるかは想像できますわよね?」
「それを懸念して神が作り上げたのがこの空間。そして、ここにいるカケルはその神の声が聞ける存在だ」
神の声が聞けるというか、一方的にワイン要求してくるというか……。
「じゃから、カケルに危害を加えようとすると神罰が下るぞい」
「……分かった」
すっごく腑に落ちて無さそうだけど、口では分かったって言ってる……。
その証拠に俺の事めっちゃ見てくるし。
「俺からもいいか?」
「何じゃ?」
「……この目の前のこれら――食いもンか?」
*
「魚が生で美味しいだなんて!!」
「神の作り出した空間じゃからな。我らの常識は基本的に通じない」
「おめぇらズリぃよ! ずっとこの場所でこンな美味いもン食ってたんだろ?」
「我々も初めは偶然だったんだ」
えー、即落ち二コマ……と言うか。
食べ物か聞いてきた後、お寿司の説明をしまして。
生魚? と怪訝な顔をしてたのに、ラベンドラさんにマグロを放り込まれたらクッソ笑顔になってた。
そっからはもう……寿司に伸びる手が止まらないね。
「手巻きなどでは味わってはいたが……」
「こうして多種多様な魚が握られているのは初めてですわね」
「カケル、この白身は?」
「それはハマチですね」
「これエビだろ!? プリプリしてて最っ高だな!!」
「『無頼』、甘海老取って」
四人でも中々騒がしかったのに、そこに二人追加されて余計に騒がしくなったな。
近所とは家が離れてて助かったよ。
騒音とかでクレーム入らないし。
「イカもうめぇ!!」
「まず土台が美味しい。なにこれ?」
「米だ。現在我々の国で農業ギルドが栽培の研究に勤しんでる」
「私達も噛ませて欲しい」
「それはソクサルムに言いなさいな。私たちは政治には関わっていませんし」
「リリウム、いくらばかり食べるな」
う~ん、カオス。
まぁ、賑やかな方が楽しいからいいんだけどさ。
……中トロが美味い。
「なぁ、この緑の葉っぱはなンだ?」
「大葉ですね。ハーブです」
「ハーブが生魚に合うのか……?」
『無頼』さんがえんがわを持ってこっちに聞いてくる。
ちなみに『無頼』さんもアメノサさんも手で掴んで食べてる。
最初は『夢幻泡影』の四人に習ってお箸を使ってたんだけどさ。
四人みたくすぐにマスター出来ないどころか、めンどくせぇ! って言って手で食べる事を選んでた。
その間五秒ね。
「お、爽やかな香りが魚の脂の匂いを飛ばすな。それなのに魚自体の香りの邪魔はしてねぇ」
「この甘辛いタレの乗った魚も美味しい」
アメノサさんはうなぎにご満悦。
……? 何か忘れているような……。
「あっ」
思い出した。
……あの、何で全員俺の方を見てるので?
「何を忘れていたんじゃ?」
ガブロさん、俺の心を読むんじゃない。
「日本酒……買って来てたんでした」
「くれ」




