兆候
「……最高……だった」
「野菜や肉、チーズにトマトの旨味を全て吸ったリゾット……」
「そこに合わせたワイン達が、強烈に記憶に焼き付いておるわい……」
「ラベンドラ! 絶対に私達の世界でも作りますわよ!!」
「もちろん!」
チーズリゾット……マジで最高でした。
……ただ、その――。
チーズ水って焦げないからさ、香ばしさって点ではちょっと物足りなかったかな。
本質は水だし。
「……で、カケル」
「なんでしょう?」
「デザートを頼む」
「じゃあ取ってきますね」
マジャリスさんから声を掛けられて立ち上がり、向かうはゴー君の所。
さっきリゾットを作る前に、
「蒸し焼き開始。俺が取りに来るタイミングで焼き上がるように調節して」
と、半ば無茶ぶりな内容を伝えたんだけど、
「ンゴッ!!」
って威勢のいい声と、キリッとした、『(`・ω・´)』みたいな顔で任せろ! って言ってくれた。
と言う訳で窯焼きプリンならぬゴー君焼きプリンですわぞ~。
「ほう、プリンか」
「リボーンフィンチの卵を使っている……いや、抹茶味か?」
「リボーンフィンチの卵ですね」
緑だからね、紛らわしいよね。
「チーズ水は――」
「……」
「その表情だから入っているな」
「早速食べよう!!」
俺の表情から察したマジャリスさんが、我先にとプリンへスプーンを突き立てる。
「む、かなりみっちりとした抵抗があるぞ」
こう……なんて言うか。
全然滑らかにスプーンが入って行ってない。
ゆっっっっっっっっっくりプリンに沈んでる感じ。
「おっ、しっかり伸びるな!」
出来立てだからね、まだ温かいから、そりゃあチーズ水も伸びますよ。
……プリンがチーズみたいに伸びてるの、すっごい違和感あるけど。
「もっっちりとした食感としっかりした甘さ! チーズの風味も合わさってこれは美味いぞ!!」
「茶色いソースのほろ苦さと香ばしさがまた美味しさに拍車を掛けますわね!」
「食感はもっちりとしておるがプリン自体は滑らかで上あごと舌で滑らかに潰せるぞい」
「うまーーい!!」
マジャリスさん……お前……語彙が。
「なるほど。出来立てを食すことを前提にすればこのように伸びるプリンが出来ると言う訳だ」
「まぁ、出来立てじゃなくても状態保存の魔法とかありますし……」
あくまで俺が用意するとこうなるってだけで。
みんなも試してみてね。チーズ水と言う事を聞いてくれるかまどゴーレムが居れば普通のプリンとそこまで作り方変わらないから。
「これもワインに合いそうだ」
「飲むなら白のデザートワインですかね」
「だな。そうなるとフルーツを散らしたい。……ベリー系よりはバナナや白桃が合いそうだ」
……俺も食べよ。
――おー……かなりみっちりと詰まってるというか、弾力ある感じだなぁ。
どれどれお味の方は……。
「美味しい」
なんと言うか、本当にもっちりとした食感。
ミルク餅とかそんな感じ。
……あ、あれだ。冬に炬燵で食べる二個入りのアイス。
あれが程よく溶けた時に食べた感じに似てる。
外側のおもちの食感がどこまでも続いてて、中のアイスのクリーミーさがプリンの味わいに似てるし。
流石にアイスよりは玉子の風味と味が強いけどね。
あと、今回は入れたカラメルソースがまたいいわ。
甘い一辺倒じゃないだけで、味わいに奥深さが出る。
「これは何と混ぜたんだ?」
「牛乳とリボーンフィンチの卵液ですね。どっちでこんなにもっちりとなったかは分かりません」
「牛乳だけは先日のチーズフォンデュの時にやっていたな?」
「ですね。でも、あれはそのまま温めただけじゃないですか? こうして容器に入れて窯焼きにしたら同じような食感になった可能性がありますよね?」
「要検証だな」
チーズ水の反応を調べる時のラベンドラさん、めっちゃ眼光鋭いんだよな。
こう、眼鏡とかかけてくれないかな?
絶対に似合うと思うんだけど。
「伸びるプリン……美味いぞ!!」
「冷めたら飲むプリンにすればいいわけですしね」
「飲むプリンか……あったな」
「そうなるともう少し甘い味付けの方が……」
いや本当に。
プリンが伸びるってなんやねん、って感じだけどさ。
文字通り断面図同士からチーズの糸が……。
これ何も知らない人が見たら、腐ってるとか思われかねない。
「冷ますとどうなるか、気にはなるな」
「やりますの?」
「いや、勿体ない。向こうで再現する時に試す」
「同意じゃな」
で、冷ましたらどんな感じになるかって確認は、異世界でするそうです。
まぁ、出来立てをわざわざ冷まして食べたくは無いよね、美味いし。
「もう無くなる……食べただけなのに……」
「……食べたから無くなるのは当たり前では?」
「もっと食べたいのに……」
黙々と食べてたマジャリスさんがしょげちゃってるよ。
……原因は黙々と食べてたせいでもうプリンが残り少なくなったから、なんだけども。
「食べたいけど食べ終わりたくない!!」
「無茶苦茶言ってますけど……」
「無視でいい」
「甘やかしたらいけませんわ」
「あ、はい」
なんと言うか、三人のマジャリスさんの扱いが手慣れ過ぎてるんだよなぁ。
まぁ、結構長い間一緒だろうし、今更ではあるか。
「うう……ずび」
ずび? 鼻をすすった?
まさか泣いてる?
「マジャリスさん?」
「……目が痒い」
「へ?」
「目が痒い!!」
……察した。
マジャリスさん……南無。




