神様「いいなー、いいなー!!」
「取り分ける段階からもう美味そうだぞ!」
「圧倒的なビジュアルですわね!」
食いしん坊エルフ二人がはしゃぐはしゃぐ。
でもまぁ、気持ちは分からんでもない。
ちょっと想像して欲しい。
トマト鍋からお玉で具材を取ろうと掬ったら、そのお玉にビヨ~ンと伸びたチーズがまとわりついているのを。
俺ならその映像だけでご飯食べられちゃうね。
「そしてワインですけど……」
「初めは赤で。微発泡ではない方から」
「分かりました」
そして食卓に添えられるワイン。
あまりにもなじみが無い……。
「色は深いルビー色……」
「香りも、やや刺激的で果実感を感じられ、鼻腔に僅かに甘さが届きますわね」
「早速トマト鍋と合わせよう」
ワインを注いであげたら、色を見たり香りを嗅いだり。
……待ちきれなくなってトマト鍋を見たり。
はいはい、それじゃあご唱和くださいっと。
「「いただきます」」
と言う訳で先鋒ガブロ、ソーセージにたっぷりと鍋の汁を纏わせて一口でバクリ。
皮をパリッと歯で破る音がこっちまで聞こえてきますわ。
「…………」
なお、無言。
咀嚼し、飲み込んだ後、静かにワイングラスを傾けて……。
ワインを口に含み、目を閉じ、しっかりと味わって……。
「ふぅー」
大きなため息を一つ。
あ、この反応は。
「美味いわい」
「……それだけですの?」
「余計な言葉はいらん。『美味い』ただこの言葉だけで十分じゃわい」
若干思ったのと違ったけど、それでも何となく言いたい事は分かるかな。
美味しさを表す言葉が見つからないとかじゃなく、自分の世界で美味しさに浸っていたい感じ。
大きなため息も、自分の世界に入り込むスイッチみたいな。
「鶏肉とトマト、チーズの相性が抜群。そこにこのワイン……最高だ」
「ワインは果実感が強く、口当たりしっかり。それでいて滑らかで、渋味がお肉やチーズの旨味をより際立たせますわ」
「飲み込んだ後の余韻も高い。肉だけでなく野菜とも合う」
一方三人はガブロさんみたく一人の世界には入らずに、しっかりと食レポをしてくれた。
……俺も食べよ。
そうだな……やっぱり豚肉かな。
「うんめ」
チーズ水、トマト缶と合わせたら、凄いトロミが付くな。
そのトロミと伸びのおかげで具材に絡まる。
トロミのおかげか舌触り滑らかで、香りもいい。
豚肉を包んで離さず、歯が入ると豚肉の肉汁と合わせて突撃してくる感じ。
そこにトマトの酸味と風味、コンソメの旨味の援護射撃。
こーれ美味いわ。
「あ、ワインも美味しい」
んで、みんなが評価高かった赤ワインを一口。
確かに最初は果実感が結構強めに来るけど、そこから渋味や酸味が広がって来て。
でも、強すぎるようなそれらじゃなく、全体が丸く柔らかな印象。
チーズやコンソメの塩味といいマリアージュを形成してる。
普通に美味しい。
「キノコが美味しいですわ……」
「野菜全般大体美味い」
「この肉団子も最高じゃぞ」
「何よりスープが美味いぞ」
……えーっと、ラベンドラさん?
美味しいのは分かったんで、スープだけ飲んでワインと合わせないでもろて……。
ちゃんと具材も食べよ? ね?
「当たり前に米にも合う」
「ちなみに〆はスープにご飯を入れてトマトチーズリゾットを作ります」
「なんなら今すぐ食べたいぐらいじゃわい」
トマト鍋の〆はチーズリゾットと相場が決まっている。
相撲番付にもそう書かれている。
「この葉物の野菜が凄く美味しいですわ」
「キャベツと相性いいですよね、トマト鍋」
キャベツを入れるのってトマト鍋くらいじゃない?
俺のイメージだけど。
あ、ポトフとかにも入れるか。
ちなみにトマト鍋のキャベツはマイフェイバリット具材である。
キャベツがトマト鍋のスープをたっぷり吸ってうめぇんだ。
思わずワイングラスも傾くってもんよ。
「次は微発泡にいきませんこと?」
「構いませんよ」
との事なのでディ・ソルバーラ・セッコ開封の儀。
グラスに注いでやれば、沸き立つきめ細やかな微泡たち。
「先ほどの赤ワイン程濃くはないな」
「ですわね」
「じゃがしっかり果実のアロマな香りがするぞい」
「これもチーズや肉に合いそうだ……」
と言いながらこちらは何かを食べる前に一口。
「む、甘口かと思ったが違うのか」
「でも辛すぎるわけではありませんわね」
「フルーティさがしっかりあり、微泡と合わせて飲み口スッキリ。……かなり奥に甘さが居るな」
「これなら大体の料理に合うだろう。無論、今日のトマト鍋にもな」
こっちも評価高いね。
俺はしっかりチーズ水を纏ったしめじの後にいただきますわ。
……うめぇな、本当に。
こう、お酒が得意じゃないからさ、ワインとか開けたらマジでどんだけ時間掛かるんだってくらい飲むの遅いから、四人が来るまでは買って来なかったんだけど。
こうしてチビチビと楽しめるから、割と新しい発見があって面白いよね。
チーズやお肉の旨味をたっぷり吸ったしめじが、ワインと合わないわけ無いんだって。
チーズの油分を洗いながら微発泡も手伝って、本当にサッパリと楽しめる。
辛口なのもいいね。正しく食事を楽しむためのワインって感じがするわ。
「このような品質のワインが……もうすぐ我々の世界でも……」
「正直三年と言われても待ちきれませんわ」
「わしらはマシじゃろ。カケルがこうして用意してくれるんじゃから」
そうなんだよなぁ……この人らの世界でもエルフ基準もうすぐでワインの品質あがるんだよなぁ。
まぁ、これに関しては神様が飲みたいだけなんだろうけど。
「よし、カケル、次は白行こう、白」
ちなみにワインを飲んで一番テンション上がってるのはラベンドラさん。
普段言わないような言い回ししてるし。




