エルフはダンスをやってないからな
「ボク、満足ぅっ!!」
以上、チョコを食べ――飲み終えたマジャリスさんの一言です。
ちなみに時刻は17時ではない。
小腹が空いていたわけでもなければ、一丁躍ってやったわけでもない。
「持ち帰りの食べ物だが……何かあるか?」
ま、ま、満足してるマジャリスさんを華麗にスルーし、俺に尋ねてくるラベンドラさん。
まぁ、分かってるよね。
自分らで宝石蟹を食いつくしたことを。
宝石蟹を食いつくしたという事は、宝石蟹を食いつくしたということです。
つまるところ持ち帰りに宝石蟹は使えない。
「まぁ、色々と」
ただまぁ、何も用意していないわけでは無く。
でも、正直最近の流れで異世界に戻ってからチョコフォンデュを食べるからいい、くらいは期待してたり。
「向こうで焼いてください」
取り出したるは一人暮らしの味方、冷凍食品。
その中でも、最近はクオリティの上がり方が著しいと俺の中で話題の冷凍ピザ。
それもコンビニが自社ブランドで出してる奴を……。
懺悔します。
どうせ今日も持ち帰りはいらないって言われるだろうと思って用意してませんでした。
ただまぁ、こういう時もあろうかと……あと、休みの日でお昼とか面倒だなって時に食べるだろうと買っておいた冷凍ピザがですね……。
「マルゲリータか」
「保存がきくように冷凍してあるんですわね」
「量が少ない気もするが、朝食にはちょうどいいじゃろ」
うグッ……。
俺用だったから量がそこまで無いんだよな……。
なんとか各自一枚ずつはあったけど……。
「ピザで足りないなら、チョコを食べればいいじゃない」
「お前が食べたいだけだろ」
ガブロさんの言葉に、間髪入れずに返すマジャリスさん。
普段は絶対にこんなこと思わないんだけど、今のマジャリスさんは俺にとっての救世主だよ。
そうだよ、ピザで足りないならチョコを食べてくれ。
……異世界の。
「ちなみにカケル」
「なんでしょう?」
「あの魔道具でチーズフォンデュは出来ないのか?」
「あー……」
ラベンドラさんが指差したのは当然チョコレートファウンテン。
俺は出来ないと思う。
あの動画を見たからだけど。
「基本的に液体じゃないと暴れると思います」
「……そうか」
「回転をさせている訳じゃから、液体でなければ厳しいじゃろうな」
構造を理解したらしいガブロさんからの援護もあり、ラベンドラさんの疑問に解答。
そうだよね、回転させてるんだもんね。
いくら流動していても、全部一塊になってたら無理だよね。
「つまりはチーズ味の液体、であるならば可能か」
「じゃな」
……どうしよう、すっごく気になる。
それってあれ? 水みたいな性質のチーズって事?
チーズドリンク的な? 多分違うな。
「あるんです?」
「あるぞ?」
「あるが?」
「あるんだ……」
やっぱり異世界って不思議が一杯!
……チーズの特性を有してる水、ではないよね?
あくまでチーズ味の水なんだよね?
「確認なんですけど、その液体は加熱したら伸びたりは……」
「それはチーズなのですから伸びますわよ?」
「うむ」
伸びるんだ……。
滅茶苦茶欲しいんだけど。
いや、何と言うか……普通にチーズでいいやっても思うんだけどさ。
俺もやっぱり日本人なわけで、未知の食材にあったら心躍るというか……。
アンコールも沸かすというか……。
「それ……頂いたりは……」
「構わんぞ」
「じゃが今すぐとはいかんじゃろ」
「明日、回収して持って来よう」
やったぜ。
んでも回収って言ってたな。
てことはやっぱどこか特別な所に沸く水なのか。
「ちなみに断っておくが、その液体は果汁だぞ?」
「……果汁?」
チーズ味の果汁?
いやまぁ異世界だし……。
「生息地はマグマの近くじゃな」
そもそもマグマの近くに植物生えなくない?
いやでも異世界だし……。
「割と強いのですよねぇ、あいつら」
しかも魔物っすね、この言い方。
――待てよ? 今まで考えもしなかったけど、どんな魔物か見た目を描いて貰えばいいのでは?
名前が分からずとも、それならどんな魔物か特徴は分かるし……。
「ちなみに、その魔物の絵を描いて貰うというのは……?」
「絵か……」
「私は構いませんけれど……」
「ラベンドラには描かせるな。何が何か分からん」
「……」
すっごいばつが悪そうな顔するじゃん、ラベンドラさん。
そうか、絵が苦手族か。
「私は魔法陣などを描きますし……」
「わしも図面に起こしたりするしな……」
「地図士だぞ? 絵が得意でないわけがない」
「……」
なるほど。
普段あまり絵を描かないから、上達していない、と。
大丈夫だよラベンドラさん、俺も絵は苦手だから。
美術の成績は2とかだったから。
「紙とペンを」
「はいどうぞ」
という事で紙と鉛筆を渡して描いて貰う事に。
サラサラと鉛筆が紙を擦る音が数分続きまして……。
「出来た」
と言って見せられたのは……なんだこの――なんだ?
パッと見は鳥なんだけど、翼部分にバナナみたいなものが複数ぶら下がってる。
で、そのバナナは凶器か? と思う位に先端鋭いし。
「このぶら下がっているのが本体で、恐らく鳥の体に見えているだろう部分が果実だ」
逆ぅー!!
俺の思った事と逆ぅー!!
「鋭い先端で地面に突き刺さって養分を吸い取り、そこから果実を育てて広げ、別の地へ降り立つ」
「ちなみに私たちのサイズと比較するとこうですわ」
と、リリウムさんが描いたのは、鳥型の果実の足の爪レベルのサイズの丸。
……バカでかくない? この大きさだと、先端鋭いバナナでもリリウムさんの五倍くらいの大きさなんだけど。
「ちなみに真下に行くと養分と認識されて本体に襲われる」
「魔法で射出して襲ってくるもんじゃからかなり速度も出るし厄介な相手じゃわい」
「だが美味い飯の為、どれだけでも狩ってくるぞ」
おおよそ現代に生きる俺には到底理解出来ない魔物の生態を説明され、更にはそれを狩ってくる、と鼻息荒く話す四人に。
「……お願いします」
生返事しか出来なかったのは、しょうがないよね?




