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イメージサンプル:蚊

「本当に私達の国に来る気無い?」

「逆でしょう? あなた方がこちらの国に来ればいいのですわ」


 現代から異世界に戻り、『無頼』とアメノサに現状異世界では再現が難しいアヒージョを提供。

 結果、前日の蟹クリームパスタ同様に言葉を失う事となり。

 アメノサは、即座に『夢幻泡影』を自国にスカウト。

 当然それは受け入れられることは無く、逆スカウトを受ける形に。

 もっとも、アメノサも一国の丞相である以上、その逆スカウトは無言を持って拒否されるのだが。


「ほンとお前ら、どンだけのレシピ隠し持ってやがるンだよ」

「叩けば出る……埃みたい」

「例えに悪意しかない気がするが?」

「正解」


 そんな二人を含めた『夢幻泡影』が居るのは、海底ダンジョンの最下層。

 バハムートの存在するボスの間の手前。


「この先にバハムートが居ますわ」

「向こうがこちらに気付き、動きがあった時点で転移魔法で地上に帰る。いいな?」


 ボス部屋の中での流れを確認し、ゆっくりと頷く六人。

 『夢幻泡影』の目的は再びの尾の肉の採取。

 『無頼』とアメノサの目的は、バハムートの確認と対抗出来そうな手段の確認。

 各々の目的をしっかりと刻み、いざ、扉へ。


「デッカ……」

「本当に大きい」


 初めて見る琵琶湖サイズの巨体を前に、思わず立ち尽くす『無頼』とアメノサ。

 そんな二人へ手を伸ばし、転移対象へと巻き込んで。

 一度目の転移魔法。


「まだ……全然……」

「続けるぞ!」


 普段ならそんな事は思いもしない転移魔法も、相手が膨大なサイズとなれば無いものねだりの考えが浮かぶ。

 すなわち、もっと遠くへ、と。


「着いた」

「尻尾ですらでけぇ……」


 転移を繰り返し、ようやく尻尾へと辿り着いた六人は、それぞれの行動に。

 ラベンドラ、ガブロが尻尾から肉を採取し、その間にマジャリスとリリウムが帰還用の転移魔法を展開。

 『無頼』はとりあえず一発ぶん殴ろうとバハムートに近寄り、アメノサはバハムートへと手を伸ばす。

 そして、


「うぶぇ」


 一瞬で、尻尾の毛がどす黒い赤へと変貌。

 続けて、アメノサの口から尻尾と同じ色のどす黒い血が吐き出される。


「ぎ、ぎぶ」


 口から血を吐きながら、ただそれだけを『無頼』へ伝えると、うずくまって地面へと血を吐き続ける。


「だ、大丈夫ですの?」

「あン? あいつが吐いてるのはこのバハムートの血だ」

「……遠隔で血を吸った?」

「それがあいつの血族の力だ。と言っても、あいつはその中でも最高傑作らしいがな」


 とはいえ、と『無頼』は心の中で思う。

 アメノサが血を吸い過ぎて口から吐くなど、初めて見たからだ。

 それもそのはず、アメノサはその能力で吸った血を尻尾へと蓄えるのだが。

 尻尾一本で、大体人間十人ほどの血を吸いつくすことが出来る。

 加えてアメノサの尻尾は九本。単純計算で人間九十人分の血を吸い出すことが可能であり。

 おおよその生物は半分も血を失えば失血死してしまう。

 つまるところ彼女は、手も触れずに遠隔で、外傷も前兆も無く、二百近い人間を一瞬で殺せる存在であり。

 そんな存在をもってしてもなお、バハムートはデカすぎた。

 ……というか、その量では通常サイズのクジラすらも失血死に至らないが。


「大丈夫か?」


 そんな血を吐き苦しんでいるアメノサの近くに、尾の肉を担いだガブロとラベンドラが降り立つと。


「アヒージョ食べたい」

「結構大丈夫そうじゃぞ」

「手は貸さなくて良さそうだ」


 先ほど食べた美味しいアヒージョを懇願。

 なお、あっさりと切り捨てられるもよう。


「かってぇ!!」


 そして、とりあえず一発殴ってみた『無頼』も、バハムートの鋼以上の硬度を持つ鱗と皮膚に絶叫し。


「こちらに気付きましたわ!!」

「早く手を取れ!!」


 そこで、ようやく何かされているらしいと気が付いたバハムートが動きを見せた事で、全員そろって帰還。

 何の成果も得られなかったわけでは無く……尾の肉はとりあえず得ることができ。


「おい」

「な、なに?」


 地上に帰還後、アメノサへと声を掛けるマジャリス。


「尻尾の色が一本どす黒いままだ。血を残しているんだろう?」

「知らない」

「ラベンドラ、こいつのアヒージョはラピスラズリ個体を溶かさなくていい。というか、普通の油でいい」

「!! や、やだ!!」

「じゃあバハムートの血と交換だ。何も全部とは言わん。折半で勘弁してやろう」

「……『無頼』」

「俺に助けを求めるなよ。食いたきゃ受け入れろ」

「? 拒否ったら『無頼』のアヒージョも通常のものにさせますわよ?」

「おら! 血を出せ!!」

「『無頼』が裏切った!!」


 結局、尻尾一本分だけ隠していたバハムートの血は、全て搾り取られてしまい。

 それを改めて折半し、和解。

 アメノサは渋い顔をしながらアヒージョを食べ、美味しさに頬を緩ませて。

 出て来たワインに舌鼓を打ち、すっかり上機嫌に。


「……丞相がこンなちょろくて大丈夫か? 俺の国……」

「だからこちらに寝返ればいいですのに」

「やるわけねぇだろ」


 食事後、勝手に膝の上に陣取り、あまつさえ寝息を立てはじめたアメノサを見て、思わずため息をつく『無頼』。

 そんな無頼の鼻に、何やら気になる匂いが漂って来て。


「気付いたか?」

「なンだ? この匂い」


 アメノサを抱き抱え、匂いに釣られて歩いてみるとそこには……。


「決勝は国王が会談から帰って来てから行われる。ならば予選は、それよりも前に行われなければならないわけで」

「今ではどの町でも、ラメーンコンテストの予選が開始されておりますわよ」


 町の至る所に出店でラメーン……現代で言うラーメンが提供されており。


「ほら」


 ラベンドラより、『特別審査員』と表示されたバッジを渡されて。


「それを付けていれば各店舗一杯だけ無料で食べられる」

「もちろん、食べた後に味の評価が必須ですけどね」


 ズルズルと、食事沼へと引きずり込まれている事に気が付いていない『無頼』は。


「じゃあ、遠慮なく食ってくるぜ?」


 この日より、すっかりラメーンの虜になってしまう事を、『夢幻泡影』以外は誰も知らないのであった。

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― 新着の感想 ―
いつもカケルママと一緒に食欲と味覚の権化と化しているとこばっか見ているから忘れがちだけど、4人は決して事を性急に進めない政治力や胆力を持ち合わせている一流なんだよなあ…… すごいでごんす
まぁ、戦争反対派っぽいけどこの二人…
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