閑話 緊急依頼
「おい!」
いつものように早朝からオズワルドを探し、翔に持たされた唐揚げサンドを渡そうと探していると。
慌てた様子のオズワルドに逆に声を掛けられた。
「今すぐダフェードに向かってくれ!!」
その他の説明のない叫びは、それだけ緊急の用事という事。
その事を理解した四人は、それぞれ顔を見合わせて。
瞬間的に生成した魔法陣に飛び込み、その場から姿を消す。
「ふう……。あいつら送っときゃ、しばらく持つだろ。さて、俺も他の冒険者集めて向かわないとな……」
残されたオズワルドは、そのまま町の宿屋や酒場を巡り、その場に居た冒険者に呼びかけて。
同じくダフェードへと向かった。
四人との違いは、徒歩での移動という事。
そして……。
「腹……減ったな……」
朝食をまだ取っていなかったことである。
*
「まぁ!」
ダフェードへと転移した四人。
その四人が転移し、最初に目にしたのは……。
「バリケード……。何か大型のモンスターでも観測されたか?」
町の住人や冒険者が、資材を使ってバリケードを構築している所であり。
その様子から、大型のモンスターの襲来を予想。
すると……。
「アングラス領からの遠出、はるばるご苦労」
現場の指揮を取っていたカルボスターが四人を発見し、声を掛ける。
「はるばるも何も、転移魔法で一瞬ですわ」
「であるか。大方予想出来ていようが、大型モンスターが付近で観測された」
「じゃろうな。……バリケードの組み方や規模から見てミノタウロスか?」
「その通りだ。ただし、数は二十以上とこれまでの記録より多い」
「季節的に食料が手に入りにくくなる時期ではあるが、それにしてもその数のミノタウロスが群れるというのは確かに聞いたことがない」
そうしてカルボスターから、ここを襲撃予定のモンスターの情報と数を聞き。
「我々だけでも倒せない事はないが、町を守れるかと言われると……」
「建物に身を隠し、建物の損傷を考えずに魔法を放てば余裕なのですけどね」
「それだと本末転倒だろう。……町の外で迎撃は?」
「わしらだけでミノタウロス二十以上は無理じゃな。そも、囲まれた時点でやられるわい」
四人で、作戦会議。
そこへ……。
「カルボスター殿。敵の姿を確認した」
建物の屋根から声が掛かる。
「距離と方角は?」
「距離はまだかなりある。方角は私が向いている方向だ」
「こちらに向かっているか?」
「馬車の残した跡を辿っているようだ。真っ直ぐ向かってくる」
「分かった」
敵の報告をし、屋根から飛び降りたその人物は。
四人の前に華麗に着地。
カルボスターへ敬礼し、四人へと向き直る。
「カルボスター殿によりこの場の副指令に命ぜられた。Sランクパーティ『ヴァルキリー』のアステリアだ。よろしく頼む」
純白に輝く鎧で全身を覆い。
兜も、目や鼻と言った最小限のパーツを露出させるのみ。
頭部や肩、腰に小さな羽の装飾のあるその防具は、自己紹介された通り、Sランクのパーティ『ヴァルキリー』の一員の証。
そんなアステリアは、四人に向けて手を差し出して。
「Eランク『OP』パーティのリリウムですわ。どうぞよろしく」
リーダーであるリリウムが、握手に応じる。
「Eランク『OP』……? それに、リリウムとは――」
握手をしながら、リリウムの自己紹介に首を捻ったアステリアは。
「亡国ファトリの軍師、『最高』の称号を与えられた……あの?」
どうやらリリウムの事を知っているらしく、手を握ったまま問いかけて。
「懐かしいですわね。もうその国の名前を知らない方も居るくらいですのに」
それを否定せず、そう発言したことで、アステリアの中で、リリウムが自分の思う存在と一致。
「なるほど。私一人ではあの数のミノタウロスの相手は厳しいと感じたが、どうやら楽が出来そうだ」
そう言って、笑みを浮かべながらリリウムの手を離し。
「……待て。Eランク『OP』? そう言ったか?」
「はい。何かおかしなところが?」
「……カルボスター殿」
「む? なんだ?」
「なぜ一国の軍師がEランクの、しかも『OP』枠なのだ? どう見積もってもBランク以下にはなりようが無いと思うのだが……」
今度はカルボスターへと向き直る。
「その……記録では――。記録では、だぞ? 冒険者登録から五十年、一切の依頼もダンジョンの踏破もギルドの緊急招集にも応じなかったため、ランクは落とされ続け、『OP』枠に入れられたと聞いている」
そんなカルボスターは、アステリアから、何故か出ている威圧感にたじろぎながら。
あくまでも記録ではそうなってると強調したうえで、説明すると……。
「? 五十年じゃなく、百五十年ですわよ? ……あ、百年以上無活動だと冒険者を除名されると言われたので、そこは配慮して頂いたのかしら」
横から、リリウムが正しい情報に訂正。
なお、訂正した結果、より悪化しているのはリリウムを含めたその場の全員が把握しているが。
「……納得――は正直していないが、納得したとしておこう。……それはそれとして、そろそろ向こうも攻撃してくる間合いだぞ?」
ため息をつき、小さく首を振り。
そう、アステリアが呟いた時。
四人やカルボスター、アステリアの居る場所に影が出来た。
「――ッ!?」
見上げると、そこには。
とてつもなく大きな岩が存在し。
ミノタウロス達に投げられたであろうその岩は、まさに町へと降り注ぐ瞬間だった。




