作者の気持ち()
フィナンシェ……それは――なんだ?
焼き菓子以上の説明が思いつかなかった……。
俺もまだまだ知識不足だ。
「クッキー程ではないがさっくりした表面が美味い」
「中のしっとりした生地も紅茶と合わせて最高ですわよ?」
「バターの風味がとても強い。いいバターを使っているのだろう」
「毎度毎度、出されるデザートは貴族のお茶会顔負けレベルじゃな」
……コンビニで買えるって知ったらどんな顔するだろう。
いやまぁ現代のコンビニスイーツはマジでバカに出来ないけどさ。
あ、俺はコンビニスイーツだととろける杏仁豆腐が一番好きです。
「焼き戻すことで出来立てさながらに味わえる。美味いものだ」
「そちらの世界だと焼き戻すって事はしないんですか?」
焼き戻さないにしても、温めなおすとかはありそうだけど。
「ないな」
「ない」
「出来立てを食べさせるからな」
「作り置きもせんし、よほどのことが無ければ冷めるまで時間を置かん」
あ、なるほど。
それもそうか、な理由だったわ。
わざわざ作り置きとかしないんだろうし、したとしても状態保存の魔法とかあるし。
現代が電化製品とかの科学を使うなら、異世界はトンデモ理論の魔法を使ってるだろうし。
「ふぅむ……バターの風味が違う気がするな」
「そうか?」
「うむ。カケル、このケーキから香るバターは普段料理に使っているそれらではない。バターにも種類があるものなのか?」
「ありますよ?」
そりゃあるでしょ。
通常のバター以外に無塩バターとかよく見るじゃんね。
あとはまぁ、漫画の知識だけどエシレバターとか低水分バターとか、用途に合わせて使われる。
「何が違うんじゃ? バターの種類は」
「俺が知ってる部分だけですけど、まぁ、水分が少ないとか、香りがいいとか……」
「製法から違うのか?」
「材料となる乳とかかと……」
あの、詳しく詰め寄らないでもろて……。
ぷるぷるぷる、ぼく、ただのかいしゃいんだよ。
「材料……か」
「こっちでは牛だけでなくヤギとか羊の乳も加工したりしますし……」
「ふむ……」
……これで異世界に帰ったら酪農に手を出したりして。
流石に無いか。本業冒険者だし。
「カケル」
「はい?」
なんて思ってたら、マジャリスさんから名前を呼ばれた。
先に言っておくとお代わりはない。
「次は倍の量を用意して欲しい」
「……分かりました」
バカな! 先回りだと!?
一体いつから俺の思考が読まれていたんだ!?
「安心しろマジャリス。帰ったら私が作る」
「本当か!?」
「本当だ。……私が満足する出来になるまでどれだけでも試食させてやろう」
「やったー!」
やったー! て。
子供かよ。
あと大丈夫か? ラベンドラさんの言い草だと、クッキーとフィナンシェで満腹にさせられるぞ?
……本望だろうな。
ほな大丈夫か。
「にしても、よくもまぁこんなにポンポンと菓子が出てくるもんじゃわい」
ポンポンとじゃないのよ。
結構被らないように頑張ってるんだぞ(#^ω^)。
まぁ、デザート選ぶのも最近は楽しくなっちゃって来てたりするけど。
「カケル」
「持ち帰りですね?」
「そうだ。だが一つ聞いて欲しい事がある」
「なんでしょう?」
なんだろう? ちなみに持ち帰りは蟹の巻き寿司を想定してたんだけど。
「蟹の炊き込みご飯はおにぎりにすることは可能か?」
「……可能です」
「では解呪した各種蟹と米、海苔を貰いたい」
「向こうで炊いて握るんです?」
「そうだ。出汁は先日干して貰った干物と、蟹の殻から取る」
「絶対に美味しい奴……」
日本人にそんな話するなよ……。
俺も食べたくなるだろ。
えーっと、顆粒出汁はあるし、蟹は解呪すればいいだけだし……。
よし、俺の朝ご飯も炊き込みご飯とみそ汁にしよう。
ついでにたくあんもつけちゃうもんねー。
「分かりました」
「助かる」
と言う訳で言われた材料を渡し、魔法陣が出現。
消えていく四人を確認したところで……。
「よし、じゃあ炊き込みご飯を作りますか」
どうせだし、神様にも恵んであげよ。
(感謝するぞい)
どうせ、今回の宝石蟹達が手に入るよう、手を回してくれてそうだし。
じゃないと七種類も集まってないだろうからね。
それの報酬って事で。
(……?)
あ、してなかったのか。
*
「なぁ?」
「どうした?」
「なンでクッキーや焼き菓子ばっか食わされてンだ?」
「美味いだろ?」
「うめぇけどさ。そろそろ飽きるンだが?」
海底ダンジョンの共同探索。
それを名目にニルラス国へと入国した『無頼』は、『夢幻泡影』と合流。
国王会議まではまだまだ時間があるため、ニルラス国を適当にぶらつこうと考えていた『無頼』だったが、その考えは甘かった。
何故か高級な宿屋に連れていかれ、何故か無言で運ばれてくるクッキーやフィナンシェを、何故か強制的に食べさせられていたのだ。
「まだラベンドラが満足していない。もう少し気張れ」
「いや、マジでもう無理だ」
「頑張ってくださいな。私たちはもうそろそろ本当に限界なので……」
そんな『無頼』よりも長く。
具体的には現代から戻って来てから食べっぱなしのリリウム達は、いい加減持って来られる焼き菓子に殺意を覚えかけていた。
――そんな地獄は、
「ようやく満足のいく出来になったぞ!!」
満面の笑みでバスケット一杯にクッキーとフィナンシェを詰め込んだラベンドラが、スキップをしながら四人の元へと駆け寄ってきたことで終わりを迎え。
全員が胸を撫で下ろした後。
「さぁ! 食べてみてくれ!!」
思わぬ延長戦が始まり、せめてもの抵抗にと、全員が紅茶をラベンドラに頼むのだった。




