居るには居るのか
デン! と置かれるは複数の蟹……と思われるもの。
こう、蟹一匹丸ごとじゃなくて、脚の部分だけを持って来てもらえたらしく。
ありがてぇ、と思う反面、カニミソ……と思わなくもない。
まぁ、タダで蟹が食えるので贅沢は言いませんとも。
「にしても、こんなに種類あるんですね」
んで、俺の目の前に並ぶ蟹の脚は全部で八本。
しかもそれぞれが色が違うんですよ奥さん。
色の違いも、タラバガニとズワイガニみたいな微妙な違いじゃなくてさ。
赤、青、黄、白、緑、紫……ゲーミング?
最後の一本だけなんと言うか、光の加減で何色か変わるみたいな感じ。
何色って言うんだろ、あれ。
「それらは元を辿れば同じ種類の魔物なのだが、育つ環境や食べる餌などでそうして殻の色が変わる」
「色ごとに味や風味が変わりますから、今日はその変化も楽しめると思いますわ」
「蟹が食いたいという事だったから手に入るだけ買って来たぞ」
「早速食いたい所じゃが……」
「まずは解呪からですね」
ラベンドラさん達からこの脚の魔物について説明受けたけど、さ。
現実でもエビだけを与え続けたザリガニの甲羅が青くなるみたいな話は聞くし、結構現実でもあり得そうなんだよな。
それはそれとしてね? なんで宝石みたいに光沢持ってるんだろうなぁとは思う。
「炒り塩水で大丈夫ですかね?」
「恐らくは」
別にこう……強い個体でも無いと思うし、解呪に使うのも清酒じゃなくて良さそう。
……ヘイ神様? 清酒じゃないと太刀打ちでき無さそうな呪いを持つ魔物を教えて?
(なんじゃ藪から棒に。……まぁ、リヴァイアサンやベヒーモス後はドラゴンあたり位なもんじゃろ)
わぁ、翻訳の必要も説明も無い位有名なやつらだぁ……。
ほなこの蟹たちは炒り塩水でええか。
「確認取れたんで塩水で解呪します」
……どうせなら氷を入れて氷水にしよ。
塩って温度で溶ける量にそこまで変化が無いとか習った覚えあるし。
氷水に蟹を入れると身が開いて綺麗なんだよね。
「その間に食べやすい大きさに切っておこう」
「ありがとうございます」
まぁ、例に漏れずこの蟹たちも太いんですけどね、初見さん。
でも、カニミタイナカタマリみたく、パイプレベルの太さは無いよ?
せいぜい俺の腕の太さ位。
……バケツに何本入るかな。
とりあえずバケツに水を入れ、炒り塩を溶かしまして。
冷凍庫の製氷機から氷を……。
「カケルは何を?」
「氷水にしようかと」
「解呪に関係あるのか?」
「いえ。でも蟹の身を氷水にさらすと開くんですよ」
「ほう」
ラベンドラさん興味津々だな。
まぁ、生で食べるのも初めてだろうし、気にもなるか。
さて……?
「……」
うん。とりあえず呪いの色は紫ですね。
闇属性かぁ……蟹が闇属性のイメージ無いなぁ。
スベスベマンジュウガニなんかも居るし、どっちかというと毒属性のイメージ。
「本当に開いてきたな」
「こうなると醤油の絡みが良くなるんですよ」
開くっていうのはアレね、繊維が逆立つって言うのかな?
言い方悪いけどモップみたいになるやつ。
「早速生で一本食べちゃいますか」
「だな!」
持って来てもらったのは天井に届かんばかりに大量にあるし、もう一個……三個解呪用のバケツを用意しまして。
それらに突っ込んで解呪をしている間に、既に解呪が終わったのを食べるって寸法よ。
「これは……トパーズですわね」
「?」
殻の色が黄色の蟹だけど、トパーズって呼ばれてるの?
……という事は他の蟹も宝石になぞらえて呼ばれてたりする?
「カケル、醤油を頼む」
「あ、はい」
呼ばれたので考えは一旦置き、醤油を準備。
更には酢、酢味噌、ワサビ、みりん、ピンク岩塩なども合わせてご用意。
こちら異世界蟹バイキングでは皆様が食べたいように食べていただくことが可能です。
「「いただきます」」
と言う訳で最初の一口。
俺は最初だから何も付けずに蟹の身の味だけで楽しませて貰いますわ。
「ん!」
「んま!!」
「うまい!!」
蟹のプリッとした食感。
それが氷水で締められたか、より強く感じられて。
でもそれは表面だけで、中身は柔らかくトロリとした食感。
その身は甘みと旨味が強く、身の柔らかさと合わせてねっとりとしたうま味を口の中に広がらせる。
あ~……幸せ。
「生で食うと美味いな!」
「食感が柔らかく、そこから広がる濃厚な旨味がたまらん」
「サッパリとした白ワインが欲しくなりますわね」
「日本酒でも美味いじゃろうなぁ……」
無いです。
(無いんか……)
神様まで……。
「初めて生で食べたが、これはそのままで十分に美味い」
「ですね」
俺的には毛ガニに似た味だと思ったわ。
甘み強め的なね?
これ、まだ味が違うって分かってるのがあと六つもあるんでしょ?
おいおい、最高かよ。
「酢の酸味がいいアクセントになるはず」
「海鮮に醤油はハズレ無し」
「塩で甘みを強く感じると美味しいと思いますわ」
「みりんを試してみるかのぅ」
みんなも各々試してみたい調味料に手を伸ばしてるし。
俺はそうだな……酢味噌にしよ。




