そんなあるんだ……
そういや、異世界干物で出汁とろうと思ってたんだった。
頼めば味見させてもらえんやろか?
「ラベンドラさん」
「なんだ?」
「どんな出汁が取れるか味見したいんですけど……」
「ふむ」
そう言って何かを考え始めたラベンドラさんは。
「条件がある」
と言って人差し指を立てると。
「こちらで、作りたい物がある」
と、にっこり笑う。
「何を……?」
「カレーラーメンのスープを作りたくてな」
「手伝え、と?」
ゆっくりと頷いたラベンドラさんに、
「お安い御用です」
と自信満々に返しつつ。
片手でスマホを操作。
カレーラーメン、スープ、レシピっと。
ふむふむなるほど?
「よし、では早速出汁を取っていこう」
「お任せします」
俺がレシピを確認している間に、ラベンドラさんが鍋に水を入れ、水の状態の時から干物をぶち込み。
そこから火にかける。
昆布と一緒か。
「茹でているとぬめりが出てくる。こいつを丁寧に掬う」
昆布か。
いや、見た目魚ですけど?
そんな昆布と近似した特徴持つのかよ。
「沸騰する直前に取り出す。沸騰するまで入れていると香りが飛んでしまうんだ」
だから昆布かっての。
凄いな異世界魚。まるで海藻じゃん。
「と言う訳で取れた出汁がこれだ」
火を止め、お玉で少量掬って小皿に移し。
差し出される異世界お出汁。
その味は……。
「あ、うま」
普通に出汁。
しかも、かなり上質の。
鰹出汁ってか黄金出汁だな。
鰹と昆布の合わせ技。
香りもいいし、この出汁で味噌汁とか作ったらめっちゃ美味いだろうな。
「これをベースにカレーラーメンのスープを作りたい」
「楽勝でしょう」
ここまでしっかりした出汁なら、変なことする必要ない。
醤油で味を調えて、そこに魚卵カレーを入れればそれだけで完成。
問題は麺だな。
「麺は都合付くんですか?」
「いや?」
おっと?
麺の都合が付かないのにスープだけ作る?
妙だな?
ハッ!? つまりこっちの世界から麺を調達するつもりか!?
いや、某ラーメンならストックありますけども。
「自分で打つ」
「……マジすか?」
だが、そんな俺の予想を軽々飛び越えながら空中で三回転捻りをするのがこのエルフ達。
自分で打つマ?
そんな簡単ではないと思うんですけど……。
「カケル、ラーメンの麺の作り方を解説したものはあるか?」
「探せばいっぱい出てきますよ」
しかもやったことがある、とかじゃなく、これから動画見て作ろうとしてません?
あのさぁ、ラーメンがそんなに簡単な訳ないでしょ。
これだから異世界組は困る。
「麺の太さ……」
「ちぢれ?」
「卵の有無もか……」
「かん水とは?」
ほら、言わんこっちゃない。
ラーメンと言っても麺の太さとか千差万別なんだから。
極細、細麺、中麵、中太、太麺、平麵。
パッと思いつくだけでもこれだけあるし、そこにちぢれも加わるし。
ガブロさんが言う通り卵麺もあったりするし、マジで麺だけでもレパートリー凄いな?
「……これ、全部試すんですの?」
「試さないとどの麵がカレーラーメンに相応しいか分からない」
「何食分じゃ?」
「分からん」
文字通り頭を抱えているラベンドラさん以外の三人。
しばらくは向こうでの食事がカレーラーメンになりそうですね。
「王城で貴族を集めて試食会と称して食べ比べをさせよう。ベストな組み合わせを献上するためとか理由を付けて」
その事を察してか、何とか自分たちが食べるカレーラーメンの回数を減らそうと目論むマジャリスさん。
ただ、恐らく咄嗟に思いついただろうその案は、俺的には全然ありに思える。
「そ、そうじゃな。それこそ王城の連中にも魚卵カレーを触らせとかなきゃならん。いい案じゃと思うぞい」
「ですわですわ」
ガブロさんやリリウムさんもマジャリスさんの意図を読んでか、慌てて賛同してるし。
「ふむ。確かに言う通りだ」
「ですわよね!」
「ついでに、次回大会の課題として新たな麺料理、ラーメンを提案すると伝えよう」
「あら、確かにそれはいいですわね」
「そこで試した麺のどれを使ってもいい、とすれば、スープだけでなく麺にもこだわる輩は出てくるじゃろ」
「基本の麺は参加を表明した店や個人が安く手に入るよう、ソクサルムにお願いしておきますわね」
「麺の材料が麦という事で、農業ギルドを巻き込んだ大会になる」
「楽しくなってくるな!」
と、さっきまでの一体何食カレーラーメン食べるんだよ……という沈んだ空気から。
一変して、自分たちの知らないラーメンへの期待に代わり、表情が明るくなる三人。
「ちなみにカケル、この国にはどれくらいラーメンの種類があるんだ?」
「種類……」
種類かぁ……でも、さっきの口ぶり的に、店の数だけ味があるって感じだろうし、普通に日本全国のラーメン店舗数でいいか。
えぇっと、なになに?
――え? そんなにあるの?
「ちょっと古いデータなんですけど」
「構わん」
「ちなみにどれくらい古いデータなんですの?」
「十年行かない位です」
「それくらいなら誤差では?」
エルフ基準で考えないでもろて。
移り変わりの激しい日本で10年前のデータって全然信ぴょう性ないぞ。
「そう言うなら……。――三万二千ですね」
「……へ?」
「ですから、三万二千の味があります」
調べた俺もびっくり。
ラーメン屋だけでそんなにあるなんてな。
「そこまでか……」
何なら『ラーメン屋』ってだけだから、メニューにラーメンがある店ってするとさらに増えるぞ。
中華チェーン店とかにあるだろうし。
「ちなみにカケル」
「なんでしょう?」
「甘いラーメンはあるのか?」
あってたまるか。




