答え合わせ
「…………」
「…………」
あの、ラベンドラさん……?
顔、近いです……。
「マヨネーズ」
「正解です」
「ケチャップもじゃろ」
「正解です」
ちなみに何をされているのかと言うと、カレーに入れた調味料がクイズみたく答えられてる最中。
カレーを一口食べた瞬間、みんなの手が止まってさ。
なんでも、ラベンドラさんが作ったカレーと味が違い過ぎるって事で、何を入れたのか尋ねられてさ。
ここで、
「当ててみてください」
なんて口にしちゃったから、こうして早押し多答クイズが開催されることに。
「甘さも感じますわ。……蜂蜜は入ってますわね?」
「入ってます」
「恐らくはコーヒー」
「あー……半分正解です」
コーヒーが入ってることに気が付くのは凄いけど、コーヒーというか、コーヒー牛乳なんだよな。
流石にアレをコーヒーとして分類すると、色々と言われそうな気がする。
「半分?」
「マジャリスさんが笑顔でごくごく飲む様な味のコーヒーが入ってるんですよ」
「……なるほど」
流石にコーヒー牛乳を苦いとは言わんだろ。
言わないよね? でもコーヒーをホワイトで、とかいうエルフだしなぁ。
「他に出てない物はあるか?」
「ん~と、チョコとか、ヨーグルト。あとは焼き肉のタレくらいですかね?」
正直目についたものを入れていったから、ハッキリどれとは思い出せないけど。
少なくとも、その三つは確実に入れた記憶ある。
「チョコ? ……チョコッ!?」
「です。定番ですよ? 油分とコクが丁度良く隠し味になるんです」
「な、なるほど……」
「蜂蜜もそうじゃが、甘いものを入れて隠し味に、と言うのは中々な発想じゃな」
「カレーと言う香りも味も強烈だからこそ出来る隠し味だ。……しかし、なるほどな」
そう言ってカレーを掬い、口へと運ぶラベンドラさん。
「旨味、コク、辛み、酸味、甘み。全てが複雑に絡み合う素晴らしいカレーだ」
「チーズも合うし、何より米に合う」
「米の美味しさも、カレーと合わせるためとも思えるような調和をしている」
「ワインにも合いそうではありません? 赤も白もいけそうですわ」
……そう言えば、カレーの隠し味に赤ワインがあったな。
いわゆる果実感を追加出来て、フルーティなカレーになるとかなんとか。
フルーティなカレーと言えば、グリーンカレーとかも食べさせたいな。
材料さえ揃えば、割と簡単に作れるし。
「このカレーを食べてみて分かる。やはり我々の提案は間違っていなかったな」
「?」
提案? 何のこっちゃ。
何か提案されてたっけ?
「カケルの事ではありませんわ。近々私たちの国とその周辺国とで国王同士の会談がありますの」
「そこで提供する食事を我らの国が担当することになったのだが、その料理に『カレー』を推してな」
「調整用にいくつか魚卵を献上したし、会談の日取りまでに王宮の調理士達が威信をかけて自分らのカレーを作り出すだろう」
「これだけ何を入れても美味くなるんだ。きっと、自分たちの色を残しつつ、国を代表する具材を入れて提供されるだろう」
……うわぁ。
これあれだ。出される食事やその場の装飾で自分の国の力を示す奴だ。
見た目は質素ながらも材料に高級品を散りばめてたり、装飾で相手の国を尊重した色合いを作り出したり。
いわゆるガッツリ政治の範囲に入る食事だ。
……良かった、俺が作ることになってなくて。
そんなん任されたら俺の胃に穴開くぞ。
「一つの皿で自国を表現する。調理士として、これほどに胸が躍る瞬間もあるまい」
なんか嬉々としてやりそうな人もいますけれども。
まぁ、それは職業料理人だからなのであって、趣味として料理してる俺とは違うってこと。
俺の料理は趣味、いいね?
「もうしばらくすれば、わしらに素材調達の依頼が来そうじゃな」
「どれを調達して来いと言われるか賭けるか?」
あ、はい。翔です。
いや、分かってるよ? でもさ、名前関係の持ちネタだから、ちょっと言いたくなったというか……。
「『――』だと思うぞ」
「いや、『――』だな」
「バハムートは流石に要求してこないでしょうし……『――』では?」
「たこ焼きの話は周辺にまで広がっとるじゃろ? 『――』ではないか?」
すげぇ、どの食材も分かんねぇ。
唯一ガブロさんの言った食材が、ニンテイタコカイナだろうって推測できるくらいだ。
「カケル、この漬物は、普通に酢に漬けるだけか?」
「です。あ、一応砂糖とか蜂蜜とかは入ってます」
「酢だけではないのか」
「酢と砂糖、塩、蜂蜜を全部火にかけて、沸騰直前の温度で数分したら完成ですよ? あ、アクは取る必要がありますけど」
「割と出来そうだ。向こうで作ろう」
うむうむ。
やはりカレーを食べる時にらっきょうは必要だよな。
あとは……日本酒とかのつまみにもらっきょうは美味いし。
「異世界の漬物に興味があるので、もし出来たら少し分けてください」
「分かった。……顔は削ぎ落しておこう」
ああ、そうだった。
異世界は野菜=マンドラゴラでしたね。
酢漬けにされて苦悶の表情してる漬物とかビジュアル悪すぎて正気度減りそうだからその配慮はありがたい。
「ご馳走さまでした。美味かった」
「ですわね」
「隠し味の奥深さを再確認した」
「酒とも合いそうな味じゃったな」
全員綺麗にカレーを完食。
となると次は?
「カケル、デザートを頼む」
ですよねー。




