手加減しろ……
……ただの味見で、なんで塩釜焼きを作ることになったんだろう。
ハッ、いかんいかん。
気にしたら負けだ。
「で、当たり前に皆さん試食、と」
「当然だ。我々も食べた事のない食材なのだからな」
「日本出る前に異世界食材味わわせろー」
なお、普段の試食は俺とラベンドラさんだけなのに、今回はしっかり全員が付いて来てるもよう。
「じゃあ、割るぞ」
という言葉を合図に、塩釜へチョップを繰り出すラベンドラさん。
人間の皆さんは塩釜を割る時はハンマーとか木槌とか使いましょうね。
間違っても素手でやらないように。
「……焼けているのか?」
「色は全く変わってませんね」
なお、割った中から出て来たバハムート肉は、一切色が変わっていない模様。
(あくまで出来たのは解呪じゃ。調理するとなると、そこからさらに過熱などをする必要があるぞい)
「塩釜では解呪までしか進行しないみたいです……」
神様の説明だから納得してるけどさ。
これが普通だったら信じてないからね?
塩釜焼きを三日行ってなお火が一切通ってないって、本格的にこの世界の物ではない食材感が出て来たな……。
「加熱の方法は普通でいいのか?」
「聞いてみますか」
へい神様? バハムートの想定された調理法を教えて?
(一番手っ取り早いのはマグマに落とす事じゃな。ものの数分でよい焼き加減になる)
……。
(茹でる場合はそうじゃな……沸騰した湯に一年ほど付けておけば茹で上がるかの)
……。
(油で揚げるのはおススメせんのぅ。揚がるより先に油が揮発するわい)
……えぇっと。
とりあえず、一か月くらいワインのお供えは断つか。
(何故じゃっ!?)
いや、分かるでしょうに……。
なんでそんな食べるまでが大変な魔物を作ったんですか……。
(いや……その……。この日はサイコロの出目が良くてのぅ)
作るな。サイコロで。
魔物を!
あと、せめて出目の幅をもう少し抑え気味にですね……。
(次から反省するぞい)
まぁ……いいけど。
にしても、加熱の過程がものすっごく大変だから、これは生……というか、解呪後のまま食べる事前提かなぁ……。
流石に一年とか煮込めないし、マグマにもぶち込めないし。
(ふむ……特別じゃぞ?)
? 何がです?
(今バハムートの特性を書き換えた。魔法や自然由来ならばこれまで通りだが、そちらの世界で言う科学由来ならば他の食材と変わらぬ時間で調理できるようになったぞ?)
……えぇと、つまり?
(電子レンジでの調理ならばさっきわしが言ったような時間はかからんという事じゃ)
……科学の力ってスゲー。
(いや、そこは褒めるべきはわしの力じゃろ)
神様カッコいいヤッター。
(じゃからワインのお供えはこれからも頼むぞい)
あ、はい。
と言う訳で異世界の人が聞いたら贔屓もいい加減にしろ! とか怒られそうなことを経て、バハムート肉の調理法が確立。
「神様と交渉した結果、電子レンジで調理するという事に収まりました」
「うん?」
なお、俺の脳内で繰り広げられたやりとりなので、ラベンドラさん達の頭には疑問符が浮かんでいる模様。
「バハムートの肉、こっちの世界だとほぼほぼ調理が不可能だったんですよ」
「ほぅ」
「気になるのぅ」
「で、それを神様に伝えて、ワインのお供えを人質……物質に何とかしてくれと迫りまして……」
「変えさせた、と」
「カケルは神様に対して容赦有りませんわね……」
まぁ……ねぇ。
ラベンドラさん達には聞こえてないからだけど、そっちの世界の神様、結構付け入るスキがあるんですよ。
というか、日本の八百万の神様たちを前にして、わしも仲間に入ーれて、とかしてるので。
こっちの世界の人間には、結構甘いですよ?
(なーんも言い返せんぞい)
「ちなみにカケル。バハムートはどう調理するのだと言われたのだ?」
「マグマにぶち込んで数分で焼き上がり、だそうです」
「あら、でしたら簡単ですわ」
「あなた達ならそうでしょうね……」
まずそもそも、こっちの世界ではマグマの近くに行くって事がかなーり難しいからな。
少なくとも日本じゃ無理なんじゃないかな?
なんか、世界のどっかの観光ツアーにマグマを身近で見られるみたいなのはあった気がするけど。
仮にそのツアーに参加しても、マグマの中に何かを入れる事なんて絶対に許可されてないだろうしな。
下手すりゃ犯罪ですわよ。
「ちなみに茹でる場合は?」
「沸騰状態を維持して一年だそうで」
「……難しいな」
難しいって言うあたり、やれなくはないんだろうな。
なんか、この辺まで来ると某美食冒険ファンタジーの特殊調理食材に近くなってきたような。
そういや、あの漫画でも火山でコーンを温めてポップコーン作ってたな。
「とりあえず、電子レンジで調理すれば大丈夫みたいなので、一旦それで調理します」
「うむ」
「ですわね」
という事で、まずはお皿にスライスしたバハムート肉を乗せまして、塩、胡椒を振り、レモン汁を数滴。
ラップをかけて――、
(神様、何分?)
(一分でいいぞい)
一分に設定し、加熱開始。
はてさて、一体どんな味になる事やら。




