過去最大の……
「さて、持ち帰りの料理なんですけど」
「うむ」
何にしようかねぇ……。
いや、一応候補はあるんだけどさ。
一つ気になるというか、考慮しないといけないものがありまして?
「その前に――バハムートの肉、手に入れたりは?」
それはもちろん、四人が対峙したというバハムートの存在。
この四人だぜ? 絶対に食材として何かしら確保してるはずなんだよ。
「む、お見通しか。ガブロ」
「ほいきた」
ほらね?
俺に言われて、ガブロさんが何やらゴソゴソとしまして……。
「これがバハムートの肉じゃわい」
テーブルに置かれたのは……牛肉?
しかも霜降りが結構入ってる感じのいいお肉。
そんな見た目なんだけど……。
「バハムートのお肉……なんですよね?」
「そうじゃ」
どう見ても魚の身には見えんなぁ。
マジで牛。絶対そっちの方が見た目近い。
「どうかしたか?」
「ああ、いえ。魚の見た目じゃないなぁと……」
俺が不思議そうにバハムートの肉を見ていたからか、ラベンドラさんから顔を覗き込まれちゃったや。
「ふむ……。確かに見た目は魚らしくは無いな」
「でしょう? どちらかというと哺乳類……」
その時、俺に電流走る。
居るじゃん。この世界にも。
海洋生物だけど、最大の哺乳類が。
それはクジラ! で、確か俺の記憶が正しければクジラ肉も牛肉っぽい見た目してた!
「ビンゴ!」
ラベンドラさんに失礼してスマホでクジラ肉の画像検索。
そしたらやっぱり牛肉そっくりな画像が出てきましたわね。
となるとクジラ肉……なのか? バハムート肉。
「ちなみに尻尾の方の肉じゃぞい」
「マジすか……」
クジラ肉で一番高い部位は尻尾。コレ、マメね。
尾の身とか言われてるやつ。
「?」
「あぁ、いえ。こちらの話です」
また不思議そうに顔を覗かれちゃった。
こういうことされる度に思うけど、俺が社会人になってからの出会いで本当に良かった。
これで高校生とかの思春期にこの人らと出会っててみろ。
多分色々とグチャグチャにされてたぞ。
「こちらの世界で似たような生き物を見つけました。恐らくその生き物の肉と同じレシピに使えるかと」
「なるほど」
「と言う訳でまずは味見しましょう」
まぁ、そんなIFの話はさておいて、新食材恒例の味見と洒落こみましょう。
薄くスライスして……、
(待つのじゃ)
? どうしました?
(そ奴の肉は特別呪いの付与が多い。塩茹でだけでは足りん)
な、なんだってー。
じゃあ、一度炒り塩水に浸した方がいい、と?
(それはそうじゃが……果たして一度の浸水で呪いが抜け切るかどうか……)
マジかよ。
そんな強いレベルの呪いなんか。
「どうした? カケル」
「ああ、いえ。神様からこの肉に関する情報を聞いておりまして……」
「神はなんと?」
「呪いが強すぎるため、塩茹でだけでは足りないんだそうで……。どころか、いつもの塩水に浸すのだけでも足りないと……」
「そこまでか……」
今までどんな食材でも問題なく解呪出来ていた炒り塩水が、ここに来て回数が必要になるとか……。
バハムートって名前は伊達じゃないのね。
(ふむ、そうじゃな)
? 何か解決方法でも?
(過去に塩で固めて肉を焼く料理をこの四人に教えたじゃろう?)
塩釜焼きですか?
(そうそうそれじゃ。あれをやれば完全に呪いを出し切れるぞい)
……塩釜焼きにどれほど塩と卵白が必要になると……。
いやまぁ、いいけどさ。
「塩釜焼きにすれば呪いは解呪出来るそうです」
「そんなに……」
思ったんだけどさ。
今までの材料は、火を通しさえすれば、解呪は正直必要なかったじゃん?
でも、このバハムート肉は、こちらの世界の塩で固めた上で加熱してようやくって考えると、マジで呪い強いなって。
となると、異世界組がこの肉を食べるのは難しいのでは?
(異世界組には教会から買える聖水を使えと言うておくのじゃ。特例としてバハムートの肉の解呪に使う場合のみ、わしがちょぴッとだけ協力しよう)
流石神様。話が分かる。
「異世界でバハムート肉を解呪する場合は、協会から聖水を買ってそれを使えとの事です」
「だが、我々の世界の聖水はカケルの世界の塩よりも効果が薄い」
「そこは神様が特例で手伝ってくれるそうなので」
「なんと……」
言われて思うけど、異世界の聖水に勝ってるこの世界の塩マジパネェ。
魔法がある世界の物より上なの凄いわ、普通に。
(八百万のどや顔がうざい……)
ん? 何か言いましたか? 神様。
(何も言うとらん)
さいで。
「となると、味見の為に塩釜焼きにしなければならないのか」
「ですね……。一応焼く時間も聞いておきます」
と言う訳で神様、バハムート肉を焼く時間を教えて?
(三日じゃな)
「三日だそうです」
……へ?
「三日!?」
「三日だと!?」
俺とラベンドラさんが全く同じリアクションになったわ。
三日も焼き続けるの? 塩釜焼きを?
「液体で無いのなら時間跳躍が使えますわよ」
あ、それもそっか。
ほな一瞬か。
「焼くのにゴーレムを使うと良いだろう。塩釜を作り、ゴーレムに焼かせて我々で時間跳躍。これで味見が出来るだろう」
マジャリスさんからの提案も丸っと採用。
……最近、解呪で大量に塩を使うから、消費が早いんだよねぇ。
いっその事業務用買うか?
通販で自宅に届くようにしてさ。
「卵白はリボーンフィンチの物で構わないか?」
「あ、多分大丈夫です」
「卵黄は回収しよう。向こうでプリンを作る」
「プリン!! 大好き!!」
ラベンドラさんの協力で、テキパキと塩釜が作られていきますねぇ。
その副産物というか、むしろ普段は卵白が余るんだけど……。
今回は逆に卵黄が余るという事で、その恩恵は主にマジャリスさんに。
出来た塩釜をゴー君にぶち込み、焼く条件を神様頼りに調整しまして……。
ゴー君着火! 時間跳躍ドーン!!
かーらーのー?
上手に焼けましたー!




