勝てなかった……
「鍋に材料を入れて火にかけます」
「材料はあんこと塩、砂糖、か」
今回はお汁粉という事でこしあんをご用意。
姉貴がぜんざいって言ってたら、粒あんを買って来てた。
……ちなみに俺はこしあん派。
あんパンとかも、こしあんだと嬉しい。
「少し味を見ても?」
「どうぞどうぞ」
ちなみに今日買って来たあんこも砂糖も、結構いいものを買って来た。
材料がシンプルなだけに、味を誤魔化せないからね。
砂糖は和三盆。
あんこも、キロ三千円くらいのやつ。
塩だけは普通の塩だけども。
「結構甘いな」
「お店とかだと、ここまで甘くはしないと思いますけどね」
ちなみに味付けは甘め。
目指すのは、甘党でも一杯食べたら満足するくらいの甘さ。
和三盆のスッキリとした甘さを塩で引き立てて、その味付けにしてみました。
「ちなみにこれは温めたら完成か?」
「ここに一つ入れるものがあります」
お汁粉と言えば……焼いたお餅!
だけど今日はそれじゃあないんだ。
だったら白玉!!
それも美味しいけど今日は違う。
ふっふっふ、本日お汁粉に入れるものはこちら……!!
ババン! タピオカになります。
「?」
「タピオカと言って、芋から作られるものになります」
キャッサバ……だっけな。
タピオカの元って。
「こいつを入れるのか?」
「ですね」
ちなみに今日用意したタピオカは、ドリンクに入ってるような大きいタイプじゃなく。
いくら位のサイズのもの。
乾燥状態のタピオカを、お汁粉に直接入れて煮戻しまして。
タピオカが戻ったら完成です。
「と言う訳で姉貴のリクエストのお汁粉になります」
「やった! ……お餅は?」
「タピオカに代わった」
「……そか」
普段のお汁粉を知る姉貴から尋ねられるも、タピオカとチェンジした旨を伝えたらあっさり納得。
「熱いので……」
気を付けてと言いかけたけど、この人ら熱さに耐性あるんだったな。
ほな平気か。
「さらりとした舌触りと、舌の根に響くほどの甘さ」
「じゃがその甘さは長引かず、スッと切れるように引いていくぞい」
「甘さはしっかりとありますが、上品――いえ、気品のある味ですわね」
「このプニプニしたものも美味い」
早速飲んでるし。
姉貴はまだ息を吹きかけて冷ましてる所だよ。
もちろん俺も。
「甘さもあんこも、舌の上で涼しさを感じるような錯覚がある」
「上等なのでしょうね」
「このモチモチプニプニしたものがいい味出しとるの」
「食感があるというのは大事なんだな」
四人で感想を出し合ってるのを尻目に、ようやく俺と姉貴がお汁粉へ。
火にかけ過ぎたよ……。
「っ!! 美味しい!!」
「あっまいけど美味い」
で、味わった感想だけど……。
四人が言う通り、甘さがまずズドンと来る。
けど、その甘さが長く続かず、本当に糸が切れたみたいに引いていくんだよな。
甘さはあるけどクドく無い。
サッパリと口の中からお行儀よく退散するのに、飲み込んだ後に確かな満足感がある。
やっぱり上等なものって結構違うんだね……。
「これ位べたべたせんなら甘いものでも量食えるわい」
「かなり甘いですわよ? 私はこれ一杯で十分ですわ」
「下唇がシワシワになる~」
……俺の目論見通り、一杯で満足らしいリリウムさんと。
甘いものを食べた後特有の、身体の反応をアピールする姉貴。
――それの意図は?
「この甘さを再現出来る素材はあるか?」
「通常の砂糖ではない。かと言って蜜や樹液にも思い当たらない……」
で、こちらは和三盆の甘さを再現しようとしている男エルフ二人になります。
和三盆がそう簡単に異世界で手に入ってたまるか。
――まぁ、どうやって作ってるのかとかは知らないんですけどね。
なんか大変なんだろうなぁって。
「タピオカ入れるって、どこからの発想?」
「ん? 某究極と至高の料理対決漫画から」
「そんなのあったんだ……」
ちなみに一杯で満足する甘さのお汁粉ってのもその漫画から。
甘党をそれだけで満足させるって描かれ方だったかな?
「タピオカ、こうして食べると普通に和菓子とかと合うのね」
「見た目も奇麗だしね」
こう、着色してないって言うの?
透明なタピオカあるじゃん?
今日買って来たのはそれなんだけど、その無色透明がお汁粉に浮いてるのは見た目としていいんよな。
今までは餅だの白玉だの、白い物しか入れてこなかったけど。
黒に透明というのも趣がある。
「うむ、満足じゃ」
「私も大満足ですわ」
「翔~、お茶~」
「私にもお茶を」
「こっちにも頼む」
と言う訳で全員食べ終わったら、お茶を所望、と。
飛び切り苦く淹れてやろうか?
あと、お茶請けにお漬物なんかもどうぞっと。
「はぁ……美味しい」
「汁粉の後のお茶が美味い……」
「苦さ、渋さが丁度いいな……」
「お茶と一緒に食べると丁度良さそうだ」
で、淹れたお茶はみんなすぐ飲んで、ほっこりモード。
さてさて、もう一息したら、持ち帰りの料理を作りましょうかね。
ただ、もう少しこの団欒タイムを満喫させて欲しい。
「カケル……汁粉のお替わりは……」
「無いです」
……マジャリスさん、満足してなかった……。
お汁粉……敗北。




