華麗に? 参上
どんがらがっしゃんドタバタドン。
急な出来事に呆気にとられるけど……えぇっと?
状況を整理しよう。
俺は晩御飯の為の準備をしていた。
姉貴は明日の出発に備えて荷物を整理していた。
そしたら、紫の魔法陣が出現した。
……うん、ここまではOK。
でも、その魔法陣がいつもなら地面と垂直に出るのに、今日は平行に出て……。
何なら、天井近くに出現して……。
そこから出て来たリリウムさん達が、重力に従って地面に落ちた、と。
……とりあえず、
「大丈夫ですか?」
だよな?
「いてて……」
「無事……じゃな?」
「とりあえずどけ……お前ら重い……」
「な、何とかなったみたいですわね……」
えー、下から順に、ラベンドラさん、マジャリスさん、ガブロさん、リリウムさんの順です。
そりゃあ一番下のラベンドラさんは重いだろうなぁ……。
「ふぅ……騒がせた」
なお、すぐに立ち直って普段通りになる模様。
冒険者って強いなぁ。
「とりあえず、何があったかだけ」
「……作りながらでいいか?」
「あ、はい」
あまりにも気になり過ぎる登場の仕方だけど、料理作りながらでもまぁ聞けるか。
……って、そうだ。
「そう言えば、貝柱の方は……?」
貝柱改めアワビ。
あれがある前提でメニュー組み立てたから、無いと困るんだけど……。
「充分量手に入った」
と言って、ラベンドラさんがガブロさんに目配せ。
すると、
「ほれ」
と、出るわ出るわ。
ひぃふぅみぃ……十個か。
まぁ、一個の大きさが俺の顔くらいあるですけどね。
「ちなみに味見などは?」
「しとらん」
「ですか」
となるとまぁ、本当に見た目通りの味なのかが重要なわけで。
とりあえずスライスして塩茹でかなぁ。
「ちなみに今日のメニューを聞いてもいいか?」
「魔牡蠣とこの貝柱のチャーハン、貝柱のオイスターソース煮込み、魔牡蠣入り麻婆豆腐です」
「確実に美味いな」
「ですです」
「その美味さに拍車をかけるために、この貝柱も美味い物であると良いが……」
知らんのか? 貝柱は美味い。
大体の貝類がそうじゃない?
特にホタテなんてほぼ本体だぞ?
「まぁ、とりあえず食べましょうよ」
「そうだな」
と言う訳でスライスした貝柱が茹で上がったので、ラベンドラさんと試食。
頼むからこれで果物味とかにならんでくれよ……?
「……っ!? 美味い!」
「しっかりアワビだー」
とりあえず第一関門クリアかな。
見た目通りのアワビ味である、なんて関門なのかは分からんけども。
「初めて食べたが美味いな」
「ですね。塩茹ででこれだけ美味いなら牡蠣と一緒にしゃぶしゃぶなんかにしても最高でしょうね」
まずは牡蠣にもある磯の風味。
そこまで強くなく、ふわりと香る程度のソレは、海産物を食べてるなぁ、と再認識させられる味であり。
俺の持つアワビのイメージより、かなり柔らかいこの貝柱。
例えるならそうだな……しいたけみたいな食感がする。
ただ、芯の部分はコリコリしてて、そこだけ噛み切るのに力が要る感じ。
で、味なんだけど最高だね。
ハッキリと強いうま味じゃなく、噛むほどじんわり滲み出てくる旨味。
インパクトより持続力とかにステ振ってる感じだね。
かなり繊細な味だけど、一度美味い味と認識すると、長ーく楽しめる、そんな味。
「牡蠣とアワビのしゃぶしゃぶいいなぁ……出発遅らせようかな」
「働かざるもの食うべからず」
「ケチ」
姉貴は明日出発だからな。こんな美味しいアワビも今日の一食でしか堪能できないんだ。
流石に可哀そうだから、この一食で満足できるものを作ってやりましょう。
「よし、私は何をすればいい?」
「アワビの煮込みをお願いします。ご飯が炊けたらチャーハンも」
「任せろ」
と言う訳で早速……調理開始開始ー!
*
と言いましてもですね?
俺が担当する魔牡蠣入り麻婆豆腐は、市販の麻婆豆腐の素を使うわけでして。
作り始めると早いんよな。
とりあえず解呪した魔牡蠣をさらに塩揉みしてぬめり取り。
終わったら洗ってしっかりと水気を切り……。
後は麻婆豆腐の素に書いてあるレシピ通りに作っていって、最後に一口大に切った魔牡蠣を入れて完成。
もう出来ちゃった。
「絶対に美味いやつ……」
「当然でしょう?」
ラベンドラさんも美味しそうな煮込みを作ってるけどね。
鍋に水、砂糖、塩、醤油、オイスターソース、紹興酒を入れてひと煮立ちさせ、スライスしたアワビ貝柱を投入。
焦げ付かないように弱火で煮込んで、水溶き片栗粉でとろみをつけて完成。
う~む、中華料理って感じ。
「ご飯は炊けたか?」
「もう少しです」
なんて言ってたら、タイミングよくご飯が炊けまして。
卵、ネギ、魔牡蠣、スライスしたアワビ貝柱をご飯と炒めたら。
醤油と紹興酒、塩コショウにオイスターソースで味付けして完成。
ラベンドラさんが炒飯を作ってる間に、卵と――味覇ッ……!
中華最強の万能調味料っ……!! 半練りタイプッ……!!
で作った中華スープを添えれば、完成。
貝たっぷり贅沢中華定食。
……あまりにスピーディに出来ちゃったから何があったか話聞く暇なかったや。
まぁ、食べながら聞きましょ。




