中華三昧
「ンゴ~?」
「絶対美味しいから少し食べてみてよ」
現在、夜の寒い中、庭のゴー君にオイスターソースの絞りかすを与えようとしたら。
何を食わせる気だとゴー君が反発。
説明しても、今日はもういいって一点張りなんだよね。
……しょうがない。
「じゃあ、明日土に混ぜておくよ?」
「ンゴ!」
だったらいい、か。
んじゃあ、明日与えますか……。
*
と言う事でね。
しっかり寝て、顔洗って歯磨いて。
ゴー君に、腐葉土とオイスターソースの絞りかすを混ぜたものを与えるために庭へ。
しかし寒いな。もう一枚羽織って出よう。
「おはよう」
「ンゴッ!」
と言う訳でゴー君の中に土を入れ、希釈した液体肥料も添えましてっと。
「ンゴ~~~!!」
「美味しいでしょ~」
とても喜んでおられる。
目をキラキラと輝かせておりますわ。
「ンゴ、ンゴ!」
「もうお代わり無いよ?」
「ンゴっ!?」
「今夜ラベンドラさん達に譲って貰うからそれまで待って」
「ンゴ~」
ふぅ。
納得してくれたようだ。
……さて、姉貴の方にも餌――おっと、ご飯を与えなくては。
「ご飯あげて来たよ~」
「ん~」
なお、姉貴は起きはしたけどまだ覚醒してないらしく、炬燵で温まりながら突っ伏してる。
「みそ汁? お吸い物?」
「……みそ汁」
と言う訳で本日の朝ご飯は、自家製オイスターソースの卵ご飯とインスタント味噌汁。
ご機嫌な朝食だ。
「あ、そう言えば明日出発するから」
……はい?
「どこに?」
「一旦中国」
「あ、仕事か」
「以外に何が?」
いきなり過ぎて頭の中で理解が追い付かなかったわ。
そういや姉貴も働いてるんだった。
「リリウムさん達から送られてくる宝石も溜まってるし、そろそろ動かないと……」
「姉貴が意欲的に働いている……だと?」
「蹴るよ?」
「白米を食パンに変えるぞ?」
「すいませんでした」
分かればよろしい。
全く。
「神様用に定期的にワイン送ってくれない?」
「輸送費結構するんだけど……。絶対国内で買った方が安上がりだって」
「むぅ……」
しかしだね姉貴。
いかに国内の方が安いと言われても、流石にオーパス・イチなんて手が出らんのよ。
分かりやすく言うと、俺の財布から支払いたくない。
「まぁ、珍しいというか、日本じゃ見ないなってのなら送ってもいいけど」
「よろしく」
(頼むぞい)
ほら、神様もこう言ってるし、ね?
「よし、お湯沸いたし、はい、卵ご飯セット」
「殻割ってカラザ取っていい感じにソースかけてかき混ぜて」
「全部しろって事ね」
「よろ~」
……まぁ、卵の殻さえ割るの下手くそだからなこの姉貴。
そこまでは甘えさせてやりますか。
「いただきま~す」
「いただきます」
と言う訳で俺の分も卵ご飯を用意しましたら、揃って合掌。
そして掻っ込む!!
「っ!!?」
「うっまい!」
これよこれ。
卵のほんのりとした甘みがオイスターソースの旨味と塩味を引き立たせて。
香る牡蠣の風味が食欲を促進させる。
そこに卵のコクとまろやかさが広がって……最高かよ。
「翔」
「何?」
「卵の黄身だけ追加したい」
「……天才か?」
と言う事で姉貴の悪魔的発想で卵の黄身だけを追加。
白身は置いておいて何かに使いましょ。
これでまろやかさとコクがさらにドン!
倍プッシュだ。
「みそ汁も美味ーい」
「この卵ご飯と合わせたらなんでも美味い説」
「だろうねぇ」
本当に、味噌汁とも合うんだなぁ、この卵ご飯。
と言うか、牡蠣と卵の相性が悪いはず無いし、約束された勝利の美味さってわけなのよ。
オイスターソース、作ってみてよかった……。
「チャーハンとかに使っても絶対に美味しいよね?」
「間違いないね。ただ、今夜はもっと相性のいい食材を持って来てくれるはずだから」
「……アワビっぽい貝柱よね?」
「そう。アワビと言えばオイスターソース煮込みですよ」
「……じゅるり」
姉貴の場合は中国に行くわけだし、そこで食べられると思うんだけどね。
ちなみに俺はもちろん食べた事無い。
そもそも、アワビのオイスターソース煮込みがメニューにある中華料理屋に入った事が無いかな。
俺には大衆町中華が限界ですわよ。
「ただ、確実にチャーハンも美味いだろうから……」
「だろうから?」
「チャーハン、魔牡蠣入り麻婆豆腐、アワビのオイスターソース煮込みでどう?」
「私は本当に翔のような弟を持って幸せだよ」
俺は『夢幻泡影』と出会えた数奇な運命に感謝だよ全く。
……にしても声に出すとヤバいな。
朝ごはん食べ終えたばかりなのにお腹すいてくる。
これじゃあどこぞの食いしん坊達と変わらないじゃないか。
「じゃあ、俺は会社行ってくるけど」
「お昼は?」
「牡蠣と卵の牡蠣玉汁を作ってるのと、ゴー君に炊き込みご飯を頼んでる。のどぐろの干物もあるから、食べるならゴー君に頼めば焼いてくれる」
「ゴー君様様だねぇ」
「いやマジで。かなり便利だから作って貰ってよかったよ」
作られた当初は頭抱えたけどね。
慣れって怖いね、人間。
「んじゃ、行ってきます」
「気を付けて~」
「欲しい物があったら帰りまでなら受け付ける」
「りょ~」
と言う訳で朝ご飯を食べてしっかり元気をチャージして。
労働と言う名の国民の義務を果たすためにいざ出発。
……流石にアワビっぽい貝柱が、アワビ以外の味をしている可能性を頭の隅から振り払いつつ。
俺は意気揚々と会社へと向かうのだった。
全ては晩御飯の為に。




