そんなつもりはなくて……
「胃を休めるという意味が分かった気がする」
「程よい塩気が実にいい」
「思えば、体の内部までを労わるという考えはありませんでしたわね」
「あっても呪いを受けた時だな。こうしてピンピンしてる時は粥など食べなかった」
以上が七草粥について食べた時の感想です。
まぁ、美味い!! ってもんじゃないしね。
美味しいは美味しいけど。
「普段から揚げ物だ、肉だ言っている我々は、たまにこういう物を食べるべきかもしれん」
「たまにお粥を食べるのは健康的でいいとは聞きますね」
んでも、食べるなら朝かなぁ。
仕事から帰って来てお粥ってのは味気ない気がする。
「それこそ、カケルから貰った干物と合うのではないか?」
「!? そうだ! 確かに!!」
「カケルがくれた干物、とても美味しかったですわ」
「あれに酒があると最高じゃな」
「いい出来でしたよねぇ」
のどぐろの干物。
姉貴と食べたけど、マジで美味しかったわ。
また買って来ようっと。
「肉の燻製もお願い出来るのだろう?」
「もちろん」
「ここで食べたジャーキーはすこぶる美味かった。肉は渡すからまた頼むぞい」
「時間跳躍魔法が必要かもですけどね」
あれ? 時間跳躍して貰ったのはコンビーフの時だっけ?
いや、確か乾燥させるためにジャーキーにも使ったよな?
「そこは任せて貰おう」
「ですわ。私達が食べる物なのですもの。協力は惜しみませんわ」
「燻製肉も、粥に散らせば美味いだろうな」
「……でも、異世界の米が粥に向くかは……」
「? 麦粥などもあるぞ?」
「なるほど?」
麦粥ね、なるほど。
オートミールだっけか?
そんなのもあったな。
「麦粥に燻製肉となると、チーズも欲しくなるな」
「そこまで行けばもはやリゾットを作った方が早い」
「体を労わるのに肉もチーズも不要でしょう?」
「なんじゃったか、薬と食事を合わせたような話を聞いた覚えが……」
「薬膳?」
ガブロさんのうろ覚えな知識に、姉貴が助け舟。
本とかでは読んだことあるけど、薬膳っていまいち分かってないんだよな。
漢方とかを料理に使うって感じ?
「そんなのじゃった気がする」
「姉貴は知ってるの?」
「ちょっぴり? んーと、私も聞いた話だけど、身体の健康に合った食べ物を食べると病気をしないって感じだったはず」
「具体的には?」
「知らない」
うーん、この。
まぁ、姉貴だしなぁ。
期待してもしゃあないか。
「薬の材料を料理に混ぜ込むという事か?」
「だが、薬は毒にもなる。何でもかんでも混ぜればいいというわけでは無い」
「なるほど……」
ちなみにお粥はとっくに完食してる。
今はたくあんをお茶請けに煎茶を楽しんでる所。
「いや……待て。あらゆる薬がふんだんに使われた食べ物なら知っているぞ?」
「そうなのか?」
「しかもここで食べたことがある」
……ん?
あらゆる薬がふんだんに使われた料理?
そんなの出したっけ?
「カレーだ」
カレーかよ。
……いやまぁ、薬って言うかスパイスだけど。
でも、スパイスって大体昔は薬として~とか説明されてたりするよな。
と言う事はもしかしなくてもカレーって薬?
飲み薬ってこと?
「確かに色々なスパイスが入っていたな」
「後は麻婆豆腐。あちらで再現する時は実に多くの毒を使った」
そういや、初見の時は毒認定してたな。
食べたらハマったみたいだけど。
「……つまりカケルは、私達に薬食を勧めていた……?」
「チガイマス」
そんなつもり一切無かったんだよなぁ。
大体、貰った材料で作れる俺が食べたい料理を作っただけだし。
「いつの間にかカケルから気を使われとったっちゅーことか」
「一切無いですよ?」
マジで。
ぶっちゃけあんたら、なんでも食ってくれるからさ。
どこまで食べられるのか試すつもりで楽しみながら作ってた節すらある。
結果マジャリスさんがパクチーダメってなったくらいだったけど。
……待てよ?
「実はパクチーもかなり効果がある薬草なんですけどねぇ。一人食べてくれない方がいて……」
「絶対に食わんぞ」
ですよねー。
まぁ、無理に食べさせようとは思わないよ。
美味しいものを美味しく食べるのが、何なら一番健康にいい。
俺の知り合いにはほとんどカレーとラーメンと焼肉しか食べない奴いるけど、健康診断で引っ掛かってないしな。
ほぼ健康体と言うのだから人間の体って不思議だよね。
「さて、ラベンドラ」
「時間だぞ」
ピクリ、とラベンドラさんの耳が動く。
何故俺が漬物をお茶請けにまったりしていたか。
それはもちろん、今日のデザートが俺担当では無いからだ。
「少し待て。切り分けてくる」
と言って立ち上がり、冷蔵庫へ。
お粥作る前まで何やらしていたデザートのアレンジ。
終わった後に、冷蔵庫に入れさせてくれと頼まれたんだよね。
別にスペースは開いてたはずだし了承したんだけど、はてさて何がお出しされるやら。
「そのままでは出せる代物ではなかったからな、かなりアレンジを加えた」
そう言って出されたのは……。
「タルト、か」
タルト生地に異世界フルーチェが乗せられた、フルーチェタルト的な。
これが美味しくないはず無くない?
「昨日のフルーチェ程ではない。採点は甘めに頼む」
と言って渡されたフォークを受け取り、いざ!
異世界で再現され、アレンジを加えられたフルーチェ……いただきます!!




