神はサイコロを振る
今年も一年ありがとうございました。
思い返せば自分にはコミカライズ賞受賞という大きな事があった一年でございました。
また来年もよろしくお願いいたします。
さて、俺はビュッシュドノエルは神様にあげちゃったけど、俺以外はそんな事はなく。
全員美味しく完食してました。
「さて、カケル。持ち帰りの食事だが……」
「折角こんなに大きな牡蠣があるんですし、牡蠣カツサンドなんてどうですか?」
本当は別の料理の予定だったんだけど……。
こんな立派な牡蠣があるなら食べたいと思うのが人間ってもんよ。
……相手はエルフとドワーフだけど。
「異論はない」
「何々? なんか美味しそうな名前聞こえて来たけど!?」
「姉貴は座っててくれ……」
牡蠣カツ――ぶっちゃけカキフライなんだけど、大きさがもうカキフライと呼びたくない大きさなのよな。
「カツならば何度も作った。任せてくれ」
「じゃあ、俺はソースの方を作りますね」
と言うわけで揚げ物の方はラベンドラさんにパス。
俺の担当はソースと言う事で。
牡蠣に合うソース……となったらミニョネットソースでしょ。
――『生』牡蠣に合うソースだけど。
でも、牡蠣に合うなら加熱前も加熱後も誤差じゃね? ほなら大丈夫か。
まずは玉ねぎとニンニクをみじん切り。
……本来はエシャロットで作るんだけど、生憎と買ってないのよ。
牡蠣が来るって分かってれば買ってたのに。
で、みじん切りにしたらそこにバルサミコ酢、塩コショウを入れて混ぜ合わせて完成。
赤ワインビネガーで作るのが本来だけど以下省略。
そう違った味わいにならないだろうしへーきへーき。
「カケル、もうすぐ揚がるぞ」
「かしこま」
食パンをトーストし、その間にキャベツを千切り。
揚がった牡蠣カツにとんかつソースとミニョネットソースをたっぷりかけて、キャベツと一緒にトーストした食パンで挟んで完成。
ちなみに食パンの耳は落としてあるよん。
「美味しそう!!」
「間違いなく美味いだろうよ」
出来立てを見て姉貴が食い付いたけど、流石に食べるとか言い出さんよな?
「カケル達の分はどうしておく?」
「弁当箱に詰めて貰えます?」
と言って取り出した弁当箱はそう!
例のどか弁である。
ただのどか弁じゃない、超ど級のどか弁――ドどか弁だ!!
出来立ての牡蠣カツサンドを入れれば、いつまでも出来立てのまま保存しておいてくれる優れものよ。
「ちなみに切り落としたパンの耳なんですけど、油で揚げてチョコや砂糖をまぶすと美味しいおやつになりますよ」
「作ってみよう」
揚げパンの一種になるのかな?
子供の頃はラスクって呼んで食べてたっけ。
「よし、全員分出来たな」
「明日のお昼が今から待ち遠しいですわ」
「ではカケル、世話になった」
「貝柱の件、なるべく集めてくる」
「よろしくお願いします」
魔法陣に消える直前、異世界海産ミミックの貝柱ことアワビに付いてラベンドラさんから言及があったから、きっと本気で探してくれるだろう。
……さて、と。
牡蠣を大量に毒抜き! からの平皿に氷敷き詰め!!
かーらーのー? 魔牡蠣を大量に並べてオイスタープレートを作成。
……本来は殻ごとだけど、魔牡蠣の殻は回収済みだからね、しょうがないね。
んで、先程牡蠣カツサンドにも使ったミニョネットソースを小皿に沿えて……
(神様、こちらが牡蠣がいくらでも入るソースになります)
(うん?)
(お供えするので、ミミックの貝柱……何とか都合をつけていただけると……)
(そこまでして食いたい食材なんか……?)
神様には分かるまい。
アワビ……その響きの持つ魅力を。
ぶっちゃけ高い食べ物ってイメージが強すぎて味がどうとかじゃないの。
高いから食べたい。以上。
(う、ううむ……)
「姉貴、白ワインは買って来てないの?」
「あるよ? 赤と一緒にカリフォルニアで買って来た奴」
(神様、牡蠣と相性抜群の白ワインもお供えしますのでどうか……)
(そ、そこまで言うなら……)
よし、交渉成立。
一応オイスタープレートにくし切りにしたレモンとタバスコを瓶ごと添えましてっと。
では神様、どうかよしなに。
*
「いきなりミミックが密集したエリアに出くわすとは……」
「この数なら、私たちの防具分以上に貝柱は集まりますけれど……」
「ミミック本体の方が過剰収穫じゃぞ!!」
「とりあえず本体は国王にでも送り付けよう。王城の料理人がレシピを必死に考案するだろう」
海底ダンジョンの1フロア。
そこに所狭しと並んだ宝箱たち。
ルンルンで近付いたのもつかの間、それらは全て宝箱に擬態したミミックであり。
翔のお願いを聞いた神様の計らいなのだが、四人がその事について知る由もない。
……だが、
「あれほどカケルが望んでいたんだ。神が取り計らったのだろうな」
「じゃろうのぅ」
ほぼバレてたりするが。
「国王に渡す時には絶対に海産物だと明言するんだぞ? でないと見た目からデザートに調理しかねん」
「それはそれで面白そうですけれど、それをやると国王を激昂させる恐れがありますものね」
「あんな目に合うのはわし一人で十分じゃわい」
「……見てみたいな」
などと、異世界牡蠣の認識間違いによる恐怖の事故を四人が想像している頃。
地上では……、
「おい! あいつら見つかったか!?」
「どこにも居ないわよ!!」
「魔力の反応も薄くて分からん……」
「全く、大会の開催時期が決まったというのにどこをほっつき歩いている!?」
ギルドマスターたちが、血眼になって『夢幻泡影』を探している事は、欠片も考えていないのだった。




