待ちわびたぞ……
四人が魔法陣を潜って登場。
……その顔――さては食材を持って来たな!?
「邪魔するぞ」
「ラベンドラさん」
「?」
「出して」
食材出して、役目でしょ。
「なんじゃ、バレとったんか?」
「神様の仕業だろう」
(わしなーんもしとらんが?)
俺が神様からの情報で食材を持って来たことを看破した……なンて、浅ぇこと考えてンだろうなぁ。
もう表情がね、物語ってるの。
この食材がどんな美味しいものになるのか、という期待と食欲に満ちた顔に。
「ふふ、カケルが望んでいたものが手に入ったはずですわ」
「……という事は?」
いやに勿体ぶるけど、その反応という事は……。
「海底ダンジョンに潜る、という話はしておったな?」
「してましたね」
ダンジョンに潜る、と元々使うのか、海底にあるダンジョンだから潜るという表現なのか。
まぁ、どっちでもいいわけだが。
「その海底ダンジョンの宝箱が、貝で出来ておりましてね?」
「なるほど?」
水中ステージの宝箱が貝殻、か。
某配管工のゲームだと、貝殻の中にコインがあるとかあったな。
「宝箱が貝という事はミミックもそれに似た形状という事だ」
そういや、向こうの世界の宝箱はミミック産なんだっけか。
擬態の為に作ってるとかなんとか……。
「で、そのミミックがこれじゃわい」
で、ドン!!
出て来たのは……うん。
「でっかい牡蠣!!」
牡蠣でした。むき身の。
ただね、デカい。
凄く。
具体的に俺と大きさそんなに変わんない。
……ってなるとなぁ。
牡蠣ってさ、あの大きさだからこそいい、みたいなところない?
大きすぎても何と言うか……大味というか。
あの一口で全部頬張れるのが牡蠣の美味しさに一役買ってるというか……。
「水棲のミミックは初めて見たが、かなり面白い特性を持っていてな」
で、そんな大きさの異世界牡蠣に驚いてたら、ラベンドラさんが牡蠣の先端部分をスルリと撫でると。
「わっ!? わっ!? わっ!?」
ぽろぽろと、手のひらサイズの何かが牡蠣から零れ落ち始め。
それを地面に落とさないよう、ラベンドラさんが魔法で浮かせてキャッチ。
……これって――。
「この大きさで1個体なのではなく、いくつもの個体が同じ貝の中に群生しているミミックのようだ」
「普段は魔力質の粘着帯で繋がっているが、こうして魔力を切ってやれば食べやすい大きさになる」
小さくなった(当社比)牡蠣。
しかもサイズは……まぁ、まだ大きいな。
でも、現実でも有り得る程度の大きさにはなった。
岩牡蠣のでっかい奴くらいのサイズ。
「ちなみに大事な事なんですけど」
「なんだ?」
「味はちゃんと牡蠣でした?」
「安心しろ。ちゃんと牡蠣だった」
良かった。
異世界で牡蠣の見た目はもうバナナって学んでたからな。
こう、露骨に牡蠣の見た目してたから疑ってたよ。
お前も甘いんじゃないかって。
「ガブロが恐る恐る食べてたな」
「もう最近はこっちの見た目と味に慣れて来たわい」
……待てよ? となると異世界には牡蠣のサイズと見た目でバナナ味の果実と、岩牡蠣サイズの味と見た目のミミックが混在しているという事に?
……良かった、俺、異世界に産まれてなくて。
牡蠣とバナナのロシアンルーレットとかする羽目になる所だった。
――まぁ、こっちの世界だと、毒の無いキノコと非常によく似た毒キノコとかあるけど。
文字通りロシアンルーレットとかシャレにならない見た目被りだけど。
「ちなみに今日の料理は?」
「最強の鍋です」
「楽しみだ」
というわけで早速調理開始開始ー。
……ところで、姉貴はずっと静かだけど何して――。
ああ、ゴーレム君観察日記、急いで書いてるのか。
ちゃんと自分で書いててえらい。
*
「まずは異世界の牡蠣の味を見ようと思います」
「うむ」
というわけで大事な工程。
味見に入ります。
炒り塩水にばらけた異世界牡蠣を沈めて数分。
紫色の呪いが出てくるまで待ちまして……。
待って? なんか呪いの色違うくない?
これまでは緑だったぞ?
「その個体が持っている呪いの属性によって色が異なる」
「なるほど? ……ちなみに緑色は何属性です?」
「毒じゃな」
「ちなみに紫色は闇属性ですわ」
……じゃあ、ゴーレム君、毒属性の呪いが溶け込んだ水を美味しそうに飲んでたのか。
いやまぁ、異世界ではそれが普通なのかもだけど。
「じゃあ、一度ザルにあげて、しっかりと洗いまして」
解呪が済んだら一度真水で洗う。
塩水に漬けてたわけだし、塩を洗う意味でも、呪いを落とす意味でも。
「それぞれ好きな物をかけて食べましょう」
レモン汁にポン酢、醤油にバルサミコ酢。
好きなのどうぞ。
「醤油」
「塩を振りたい」
「バルサミコ酢を試してみますわ」
「ポン酢じゃな」
「レモン汁と醤油ー」
というわけで姉貴含めた五人に行き渡りましたので、ミミックの試食に参りたいと思います。
「「いただきます!」」
ちなみに俺はレモン汁オンリーです。
「んふっ!!」
「美味い!!」
手のひらサイズだから一口じゃあ厳しい。
だからみんな、途中で噛み切るんだけど……。
もう生クリームかってくらい歯に抵抗が無い。
スッと切れてくれる。
んで濃厚。程よい磯の香りと牡蠣の濃い味。
あとクリーミーな感じが口一杯でもう最高に幸せ。
「これヤバいですね」
「この間のこの世界の牡蠣も美味かったが、これもタメを張るな!!」
「大きいと微妙かもと思ったけど、すっごく味も繊細」
「香り、甘み、旨味。全部が整っている」
「ミミックがこれほど美味しいとは……」
いや本当に。
ちょっとミミック見直した。
この美味しさなら是非とも鍋にぶち込みたいですわね。
「とりあえずもう数十匹解呪して、鍋に入れましょう」
「火を通すなら解呪は不要では?」
「半生が一番美味いんですよ」
「なるほど」
というわけで、痛風鍋アディショナルタイム突入!!




