ポールポジション
えぇっと……いつまで食べるの?
もうヒツジナゾニクもケルピー肉もほぼほぼ食いつくす勢いなんだけど……。
「ワインがあれば肉が捗る。肉があればワインが捗る」
「無限ループと言う奴だな」
止められるけどな、そのループ。
俺の知ってる無限ループは、ループを発生させた側がループを止めないと失格なんだぜ?
某TCGだけども。
「ふぅ……満足した」
「肉もワインも最高じゃった」
「何気に前菜がいい働きをした。あれが無ければここまで食ったか分からん」
「これから食べるぞ! という気分になりましたものね」
「だ~いまんぞ~く」
姉貴とか、リリウムさん達に合わせてワイン飲んでたからすっかり出来上がっちゃって。
顔真っ赤にして炬燵に突っ伏しちゃったよ。
……大丈夫か? 炬燵に入ってるせいで酔いの周りが早くなってない?
引き出すか?
「さて、カケル」
「なん……アレですね」
「アレだ」
マジャリスさんに声をかけられ、何かなと思ったけど。
俺の事を呼ぶのは理由一個しかないな?
つまりデザート、と言う事。
さて、と。
「ラベンドラさん、手伝って貰えます?」
「?」
ラベンドラさんに協力を仰ぎ、冷蔵庫からプリンを取り出す。
「プリン!!」
「今日はさらにここからアレンジします」
アレンジと言うか、進化というか……。
「パフェというデザートになります。……というわけで、まずは容器を用意します」
もちろん各ご家庭にあるパフェ用の容器ね。
……何であるんだろうね?
「んで、最下層にまずはプリンを一つ」
「ほう」
ここからは正直、好みというか、センスの問題なんだよな。
まぁ、俺が作るのは俺が食べる奴だから好きに作るか。
「そしたらその上にコーンフレーク、チョコソースをかけてまたプリンそしたらここで缶詰のフルーツ達を挟みまたプリン」
「プリンが一杯だぞ! 美味しいぞ! 絶対!!」
「分かったからはしゃぐな!」
作ってる途中なのにマジャリスさんが興奮し過ぎちゃってる。
……さっきまでたらふくユッケやタルタルステーキとワインを食べて飲んでしてたんだよな?
「最上段にフルーツを盛り付け、生クリームとアイスを乗せれば完成です」
「きゅう」
「マジャリス?」
嬉し過ぎたのか興奮し過ぎたのかマジャリスさん、まさかのキャパオーバー。
マジで子供か。
「仕方ありませんわ。倒れたマジャリスの分も私が――」
「絶対に許さん」
マジャリスさん復活。
なんかもう、ツッコむの面倒くさい。
「これは俺が食べる分なんで、各自食べたいように作ってください」
「全部プリンは!?」
「プリンは一人三つまでです。……姉貴のどうしようかな」
一人もう既に夢の中なんだよな。
やっぱり飲み過ぎなんだって。
「ふっ。俺が食べよう」
「いえ、普通に作り置きして明日の朝にでも食べて貰いますけど」
「なん……だと……」
当たり前だろうに。
何ちょっとカッコつけて俺が食べよう……とか言い出してんだ。
マジャリスさんが食べたいだけでしょうが。
「断層なども好きに決めていい、と?」
「です」
「なるほど。……スポンジケーキはないか?」
「無いですね……」
あー……考えてなかったな。
カステラとか、合いそうなのが今になって思いついちゃうぜ。
「卵を作る時に出た卵白は?」
「ありますけど……」
明日スフレオムレツでも朝に作ろうと思ってとっておいたんだよね。
……なるほどな?
「スフレ……」
「そうだ。だが今からオーブンで焼くスフレケーキだとこいつらが我慢出来ないだろう。ここはスフレオムレツで――」
そこまで言って、何かを考えるラベンドラさん。
そして、
「いや、いけるか」
と呟き、
「カケル、卵白をくれ」
言われたままにボウルに入った卵白を渡せば。
魔法による超高速泡立てによって、メレンゲがみるみる生成。
そして、そのメレンゲを持って庭に向かうラベンドラさん。
庭に向かう道中で卵黄やら小麦粉やら砂糖やら、必要な材料を混ぜ合わせていって。
……まさか、
「ゴーレム。こいつを短時間で焼いて欲しい」
やはりゴーレム君を頼るのか。
と言うか、スフレケーキって下手すりゃ一時間とか焼くはずだけど?
ゴーレム君、火力だけ上げて炭を生成とかやらかさない?
「ンゴ?」
「今から私の言う条件で焼いてくれ」
「ンゴ」
「その後馬鹿どもと合わせて時間跳躍をかける」
あ、そっかぁ。
そんな魔法もありましたね。
散々お世話になってたのに忘れてたよ。
……便利というか、ズルだよなぁその魔法。
「というわけで私は二人を呼んでくる。ゴーレム、条件を頼むぞ」
「ンゴ!」
お、しかもゴーレム君乗り気だし。
と思ったらゴーレム君……つまりは窯の奥に何やら光るものを発見。
ラベンドラさん、ゴーレム君に宝石与えたんだな。
だから協力的なのか。
かなり細かいけど、なんの宝石だろう……。
青……紫? なんかそんな感じの色だな。
姉貴が起きてたら聞けたのに。未だに寝てるからな。
「ケーキを焼くだと!?」
「だから手伝え」
「いくらでも手伝いますわ!!」
で、話を聞いたエルフがエルフに引き連れられてやってきました。
リリウムさんの姿を見た時、ゴーレム君ちょっと怯えてたけど大丈夫そ?
「では、焼成を頼む」
と言ってゴーレム君の中にスフレケーキの生地を入れるラベンドラさん。
うん、当たり前に空中に浮いて入っていく生地はおよそ現実味がないな?
しかも、
「ンゴ!」
とゴーレム君が言った瞬間にエルフ三人が詠唱を開始。
全く聞き取れず、耳に残らない詠唱の後、三人がゴーレム君へと手を向けて。
「よし、焼けたな」
某三分クッキングの、出来たものがこちらになります状態で取り出されるスフレケーキ。
……いい匂いだぁ。
「よし、これをパフェとやらのトッピングに使うぞ」
「「おー!!」」
天へと拳を突き上げ、スフレケーキを浮かせてリビングに戻るエルフ三人。
俺はしばし庭に残って宝石を食べたであろうゴーレム君の様子見。
……うん、変化なし、大丈夫そうだな。
「あ、やべ、アイス溶けちゃう」
で、俺の分のプリンパフェは既に盛り付けを終えていたことを思い出し、俺もダッシュでリビングへ。
ゴーレム君の変化に気が付いたのは、翌日朝の事である。




