それは秘密で……
神様へは二本目のワインをお供えし、気を取り直して……。
「まずは肉だけを食べ、その後バゲットと合わせよう」
「賛成じゃわい」
「楽しみですわね」
というわけで、最初はタルタルステーキから。
俺はヒツジナゾニクで作った方から食べようかな。
ちょっと箸でつまんで……。
うん、美味い。
塩によってねっとりとしたうま味が出て来てて、そこにバターのコクが来る。
オリーブオイルの香りがまたたまらんね。
オリーブオイルはいい奴を買っといて良かった。
「美味い……」
「ワインが止まらんぞい!」
「なるほど、これにさっきの酸っぱいのを混ぜるのか」
「先ほどの前菜のように、チーズが欲しくなりますわね」
なんて四人は言ってますがね。
これにチーズはどうだろ。
不味くはならないだろうけど、くどくなるような気がする。
んで、これに玉ねぎとケッパーをみじん切りしたやつを好みの量混ぜて調整っと。
そうそう、忘れずに卵の黄身も突かなくちゃ。
「ケルピーの肉の方は甘さが強いな」
「『――』の肉の方が旨味がある。だが、歯ごたえが少々固いな」
「どちらもワインにバッチしですけれど、う~ん……。私はケルピー肉の方が合うと思いますわ」
「自分で言うとったどっちも美味い、でええんじゃないか?」
(両方ワインに最高じゃぞ~い)
……無視しよ。
あんまりバカバカ飲まないでくださいよ?
俺じゃなく姉貴だから買って来られるようなワインなんですから。
「バゲットに合うのぅ」
「タルタルステーキがあるだけ無限にバゲットが食えるな」
「量を調整すれば軽食にも良い。貴族が飛びつくような料理だ」
「階級の低い貴族は大変になりますわよ? 自分より上の貴族の好みを把握して盛り付けないといけませんもの」
黄身が混ざった事でクリーミィになり旨味が増し。
玉ねぎが混ざった事で辛みと清涼感が増す。
更にケッパーの酸味でより深みが出て……美味いなぁ。
そしてワインに合うなぁ。
ケルピー肉も同じように混ぜ合わせてっと……。
あ~……うめぇ。
ただ、四人が言ってた通りケルピー肉の方が甘い分、味付けをちょっと変えたくなる。
ケッパー気持ち多め、追加でブラックペッパーだな。
「カケル、こちらにもブラックペッパーを」
「はいどうぞ」
「そういえばさ、私の知識だとそういう香辛料は貴重だと思うんだけど、そこんとこどうなの?」
一人で楽しんでた姉貴がラベンドラさんに話題を振る。
香辛料事情か。
カレーとかの時は悶えてたけど、今はそんなに……って感じがするね。
特に胡椒とかは地球の歴史でも価値があった代表例みたいなもんだけど。
「国として、というならば貴重だろう」
「じゃが、わしらにとっては……のぅ」
「そういう事ですわ」
「安定した供給先を確保してある。と言っても、特定の魔物の住処を把握しているだけだが」
まぁ、やっぱり魔物の素材か。
そして、『夢幻泡影』はSランクになった冒険者パーティ。
つまりは余裕で手に入るってことなんだろう。
「まぁ、この世界のように粒が奇麗で揃っているものは滅多に手に入らないがな」
「持って行けばいいのに」
「姉貴……」
「こちらの世界で手軽に手に入る代物であるとは理解している。だが、あまり簡単に持ち込むものでも無い」
「あ、そうなんだ」
また俺に負担をかけるのかと思ったけど、どうやら違うな?
何やらラベンドラさんに考えがあるっぽい?
「本来我々の世界で希少なものを考えも無しに持って行ったとしよう。供給が増えれば値段は下がる」
「そうすると、本来の価値も一緒に下がってしまいますわ」
「わしら四人のみの供給でも、全体で見れば元が希少なんじゃ。かなりの割合が動くことになるじゃろ?」
「我らはいい。だが、それらの取引で生活していた商人たちはどうしようもなくなる」
「あー、なるほど?」
「でも姉貴も異世界産の宝石こっちに流して貰ってるじゃん?」
思わず口を挟んじゃったけど、それこそ全体で見れば砂粒程度の量か。
誤差の範囲で済まされる量しか扱ってないなら、異世界側みたいな動きにはならないんか。
「もちろん、我らがトン単位で宝石を移動させれば同じことが起きるだろうな」
「納得しました」
「……まぁ、こんな事を言っているラベンドラだが、深夜にレシピを見ながら、『これだけはカケルに頼って……いや、それは私のプライドが……』とか悩んでるけどな」
「マジャリス!」
「ラベンドラは様々な事を考慮してそうしているのでしょう?」
「変に持ち込み過ぎると、神様から天罰とか来そうじゃしな」
……その神様、絶賛飲んだくれてますけど大丈夫ですか?
(ん~? どやつに天罰を降らせばええんじゃ~?)
降らせなくて大丈夫ですよ神様。
お水飲んどいてください。
「ふーん、ま、余計な事言っちゃったかも。忘れて?」
「分かりましたわ。でも、忘れるにはお酒の量が心許ないですわね?」
「やりおる。翔、ワイン追加して」
「はいはい」
いいようにリリウムさんに言いくるめられたような気がしなくもない。
でも、正直この人らと飲むために買って来たワインだろうし、まぁいいか。
えぇと、二本目は……あ、これ名前聞いたことあるぞ。
オーパス・イチ。君に決めた!
今更ながらワインの名前をボカシ始めたチキンです()




