エルフは炬燵で丸くなる
「邪魔するぞ」
というわけで四人が登場。
で、当たり前のように炬燵に滑り込んでいく。
「は~……ぬくぬくじゃわい」
「もう出たくない」
「分かる~」
ガブロさんとマジャリスさんが、まるでダメな現代日本人みたいな事言ってる。
具体的に言うなら姉貴みたいな事言ってる。
「カケル、今日のメニューは?」
「タルタルステーキとユッケを作ります」
なお、ほとんどレシピは変わらない模様。
ま、食べ比べって事で。
「ふむ。メインだけか?」
「一応ケルピー肉でカルパッチョも作りますよ」
カルパッチョって言うか、ケルピー肉にカイワレとかソースを混ぜ合わせただけのやつだけど。
「……カルパッチョ?」
……あ、そうか。
この人達肉も魚も生で食べないんだっけ?
……てことはタルタルステーキもユッケもじゃない?
翻訳魔法さんなんて訳したの?
「とりあえず、肉は両方とも解呪を済ませてるので……」
説明も面倒だからさっさと料理に入っちゃおう。
まずご用意する食材はこちら。
ヒツジナゾニクとケルピー倭種肉。どちらも解呪は済ませておいてください。
……うん、おおよそ普通の生活してたら絶対に口にすることが無い単語だな、解呪。
「まずはケルピー肉の方を薄切りにします」
「任せろ」
ラベンドラさんに薄切りをして貰ってる間に、俺はソースの準備。
オリーブオイル、バルサミコ酢、チューブにんにくとブラックペッパーを混ぜ合わせ。
隠し味に醤油を垂らし、更に混ぜる。
「切れたが?」
「じゃあ、それをお皿に敷いて貰って」
「ふむ」
薄切りされたケルピー肉が、ラベンドラさんの魔法によってひとりでに並んでいく。
そしたらそこにカイワレを散らしまして。
粉チーズをたっぷり振って、さっきのソースをかけて完成。
ケルピー倭種肉のカルパッチョ。
「これで一品です」
「手軽だな」
「前菜ですからね」
というわけでお次はタルタル。
……の前に、俺の分のカルパッチョから神様用を取り分けてっと。
(忘れておらんかったか)
(もう少し信用してもろて)
「次はそれぞれ肉を叩いて貰います」
「うむ」
正直タルタルステーキもやることはシンプル。
肉を叩いて、混ぜ合わせて、終わり。
今日は作るの楽ですわね。洗い物もフライパンとか出ないし。
「叩けたが?」
「そしたらそこに塩とバターを加えて更に叩きます」
「うむ」
「あと、玉ねぎもみじん切りお願いします」
「任せろ」
普通なら同時になんて無理なんだけどさ。
ラベンドラさん、包丁を宙に浮かせて色んな作業を並列出来るのマジで便利。
レストランとかでこんなパフォーマンスやってたら、俺は通うね。
シェフじゃなくてマジシャンやれって話になるけど。
「んで、こいつもみじん切りでお願いします」
「分かっ……ん? これは?」
そしてそして、タルタルステーキには欠かせない薬味が登場。
その名もケイパー。
またはケッパー。
……初めて買いました。
まんまケイパーって植物の蕾を酢漬けにしたやつらしい。
キュッと締まった酸味で、料理の味を引き締めて奥深さを出すらしい。
タルタルステーキには定番の付け合わせなんだって。
「植物の蕾の酢漬けです」
「そんなものまであるのか」
と言いつつラベンドラさん、味見の為に一つを口に。
あっ……それ、少量ずつ食べるやつで――。
「――ッ」
顔面しわくちゃになっちゃった。
好奇心が勝っちゃうのは分かるけど、せめて食べるかは聞いて欲しかったな。
あと、みじん切りって頼んだんだからその辺から汲み取って欲しかった。
「強烈だった……」
「少量ずつ混ぜて好みの味にしていくんですよ……」
「なるほどな」
で、みじん切りした玉ねぎ、みじん切りしたケイパー、タルタルステーキをお皿に盛り付け。
絶対必須のバゲット登場。
そのままとトーストでも食べ比べしたいから、最初はそのままにしておきますか。
「最後にユッケです」
こっちもタルタルステーキと同じく混ぜるだけ。
各肉にコチュジャン、ごま油、チューブにんにくに醤油を混ぜて、いりごま散らして完成っと。
「こちらも楽だった」
「火も使ってませんし、洗い物も最小限ですね」
品質が良く、美味しい生肉が手に入ればこんな晩御飯も可能。
……なお、そうそうそんな機会はない模様。
馬肉とか、いい奴が手に入ったらまず馬刺しで食うし。
「後は、それぞれに卵黄を落として完成です」
「……やはりビジュアルがいい」
なんて感想を貰いつつ、テーブルという名の炬燵へ料理を運んでたら……。
「じゃあ、この宝石たちはあげちゃっていいのね!?」
「構わん。精霊も皆無で輝きも弱い。貴族から捨てられるように売られた宝石たちだ」
「うちらの世界じゃ、これはこれで売れるんだけどねぇ」
「あら、そうなのですか?」
「うん、メインの宝石の周りに散りばめたりとかで、映えさせるのに使ったりね」
と、宝石トークを展開中。
「ほら、ご飯出来たよ。ワイン持って来て」
「ワイン!!」
「こうしちゃいられませんわ、早く食べましょう!!」
「翔~、私の部屋の入口にある紙袋持って来て~」
「自分で取りに行って、どうぞ」
「炬燵から出たくない~」
……全く。
というわけでワインを回収して戻ってきまして。
タルタルステーキには分からないけど、ユッケには米だろうって事でご飯もよそい。
生肉尽くし晩御飯、バゲットと赤ワインを添えて――開幕!!




