そういやそっか
……ふぅ。
牡蠣鍋、最高過ぎたな。
キムチの辛さで身体はポカポカしてるし、そこに流し込む麦茶が美味い。
「それで? シメは?」
「まずご飯を入れて、溶き卵を回しかける雑炊」
「ごくり」
「ラーメンを入れてのキムチラーメン」
「じゅるり」
「ちゃんぽん麵を入れての、キムチちゃんぽんです」
「早速作ろう!」
ラベンドラさん、テンション高いなぁ……。
いやまぁ、マジャリスさん達と同じように唾飲み込んでる姉貴もだけども。
というか、姉貴はまだ入るのか。
明らかに俺より食べてたはずだが?
「海外飛び回ってるんだから食べないとやってられないでしょ?」
何も言ってませんが?
まぁ、体力はいるか。移動だけで疲れそうだもんね、海外。
あと、時差とか大変そう。
体内時計大丈夫?
「ちょっと待った」
シメを作ってたら、姉貴から急遽ストップが入る。
一体どうしたので?
「その緑色の卵は何?」
「あっ」
そう言えば説明してなかったか。
すっかり使ってて馴染んでたから忘れてたや。
「コレ、イセカイカラノタマゴ」
「オイシイ?」
「イエスイエス」
「じゃあいいか」
いいんだ。
いや、姉貴がいいならいいんだけどさ。
「よし、シメは誰の分とか無いんで、各々好きに取っていってください」
で、完成したシメは好きにしてくれ、と。
俺はおじやとラーメンを一啜りで充分さ。
「むほほ! ちゃんぽんとやらの太い麺にスープが絡んで最高じゃわい!」
「スープをたっぷり吸った米と卵が美味い」
「ラーメンも最高ですわ!」
「全部好き!!」
やはり鍋はシメを味わってこそだよね。
存分に食え。
「は~、最高。やっぱ牡蠣は美味しいわねぇ」
「姉貴は前に異世界の牡蠣みたいな食材の時は居なかったもんね」
カイルイフシギキノコの時ね。
あれも美味かったな……。
ホタテとセットだったのも最高に良かった。
また持ってきて欲しいものだ。
「あの時本当に歯嚙みしてたからね? ねぇねぇリリウムさん、異世界にこの味の貝って無いの?」
「貝、ですか? あまり探したことはありませんわね」
姉貴、異世界の牡蠣を食べた過ぎてリリウムさんにリクエスト出しちゃったし。
あのさぁ、四人にも予定があるかもしれないだろ?
それを捻じ曲げかねないお願いはするもんじゃないよ。
「基本は漁師が獲ってくるからな……。だが確かに、海底ダンジョンなどの話は聞く」
「じゃあ、そこなら居るかも!?」
「じゃな。……じゃが、確定では無いぞい?」
「でもでも、可能性があるなら希望は持てるよね!?」
「よし、では次は海底ダンジョンへと繰り出そう。情報収集からになってはしまうが」
「手伝えることがあったら私も翔も協力するから、遠慮なく言ってね」
……はぁ。
まぁ、いいか。
キノコじゃなく貝としての異世界牡蠣、食べてみたいし。
その場合どうなるんだろ? 真牡蠣じゃなくて異牡蠣とかになるのか?
あるいは魔牡蠣?
「ふぅ……美味かった」
「スープに出ていた旨味が本当に最高でしたわ」
「肉が無くとも満足出来るもんじゃな」
「鍋……奥が深い」
という事でシメまで綺麗に完食。
さて、
(神様、もしよければこのキムチ鍋をご用意しますが?)
(キムチ鍋より牡蠣だけを寄越して欲しいのぅ。わし神様じゃし、加熱用でも生で食えちゃうし)
え、何それ羨ましい。
いや、そりゃあ牡蠣にあたる神様とか見たくないが。
コメディとかであったら面白そうだな。
顔面蒼白でトイレに籠る神様。
……つまり、トイレの神様ってこと?
(失礼な事考えとらんか?)
(滅相も無い)
危ない危ない。妄想が暴走するところだった。
「で、カケル?」
「デザートですね、少々お待ちください」
いつも通りマジャリスさんが切り出したから、買って来た蜜柑――『紅まどんな』を登場させる。
「果実……か?」
「です。この世界で炬燵と言えば? で真っ先に出てくる果物ですね」
ちなみに果物部門は蜜柑が一位だけど、食べ物部門だとおでん。
なお、俺の脳内調べである。
「説明を」
「今まで散々『蜜柑味』って出して来ましたけど、そもそも蜜柑を食べて貰って無いなぁと」
「なるほど。つまりはこの世界の蜜柑というわけか」
「その説明ですとやっぱり異世界にもあるんですね?」
「もちろんだ。比較的安価な果物で、貴族よりはもっぱら一般に流通している」
「討伐難易度も高くなく瑞々しくて甘いので、嗜好品としての価値がありますの」
まぁ、やっぱり異世界にも蜜柑はあったか。
てことはそこまで目新しいものでも無いか。
「じゃが、ここまで大きいのは知らんのぅ」
「? 異世界の蜜柑はもう少し小さいんですか?」
「握り拳くらいだ」
「ああ」
普通の蜜柑……って言ったらアレだけど、オレンジのネットに入れて売られてるサイズ位か?
この『紅まどんな』はそれより一回り二回り大きいから、そりゃあ大きいってなるか。
「皮ごと食えるんか?」
「食べれなくは無いと思いますけど、基本食べませんね」
「とすると剥くのか」
「皮が薄いらしく、剥きにくいとの事なので、包丁で切ります」
紹介動画でも、こうスイカとかメロンとかでよくある切り方をして食べてた。
アレだ、レストランとかの朝食バイキングで並んでるオレンジみたいな感じ。
――で、リリウムさん?
包丁で切るって言ったでしょ?
何してるの?
「中身だけ転移させましたわ」
「俺にも頼む」
「私にも」
右手に皮、左手に中身を持ったリリウムさん。
無法かよ。皮だけ残して中身を引っこ抜くな。
魔法なんだけども。
「俺にもお願い出来ます?」
包丁要らないじゃん、じゃあ。
というわけで俺ももちろん頼みましたよ?
出来るんならそれに越したことは無いからね。




