最初の仕事()
「バナナ美味い」
「キウイ! キウイ!」
「パインだろ」
「結局オレンジですわ」
……平和だなぁ。
何味が一番かで争ってるけど、結論は出てるんだよね。
全部美味い、っと。
「グミというのは見た目でも、味わっても美味いな」
「色とりどりで華やかですものね」
「ボウルに盛られて貴族のお茶会に出てきそうじゃわい」
「今度は国王へではなく貴族に売り込んでみるか?」
……大丈夫? 国王に怒られない?
「あるいは、このレシピも次の大会の景品にしてしまうか、だな」
「そっちの方が丸いだろうな」
「じゃな」
「貴族に渡すと周りにマウント取り始めるだろうしな」
怒られる前に貴族間での煽り合いに使われるのか。
確かに、普段は国王に納めているものが自分の所に来たら、貴族は自慢したがりそうだ。
それを機に、爵位を上げるために画策やら奔走やらしそう。
……しわ寄せが領地に住む人たちに向かわなければいいけど。
「さて、デザートもいただいた事だ」
「お持ち帰りですね?」
グミを平らげ、紅茶は三杯。
食後にしては飲み過ぎでは? とも思ったけども。
まぁ、この人達なら平常運転か。
「持ち帰りは何だろう?」
「しゃぶしゃぶに使った出汁がありますよね?」
「残ってるな」
「あれに白米をぶち込んで雑炊にするのと、うどんを入れるのどちらがいいです?」
魚介の出汁の効いた、更に野菜の旨味や肉の脂がたっぷりと溶けだした鍋のスープ。
そこに、ご飯を入れようが、うどんを入れようが美味しいのなんてもはや自明。
であるならば、どちらが食べたいか聞かねば不作法というもの。
「究極の二択ですわね」
「雑炊だろう。あの出汁をたっぷり吸った米を考えてみろ」
「でも、うどんに絡む出汁も捨てがたいぞい?」
「ラベンドラ!」
「どちらに致しますの!?」
なお、胃痛ポジはラベンドラさんです。
と言っても、ご飯の事に関してならラベンドラさんの判断に文句は付けられないだろうけど。
……で、どちらにします?
「米を貰おう」
その一言にガッツポーズをするマジャリスさん。
一方で、静かにしょうがないか、とため息をつくガブロさん。
ちなみにリリウムさんは後方腕組みして頷いてました。
「ご飯を入れたら、溶き卵とネギを追加で完成です」
「味はこのままで大丈夫か?」
「完成直前に醤油をサッと一回しです。香りがグッと立ちます」
「分かった」
という事で材料をラベンドラさんに渡しまして。
見送りをしようとしましたら……。
「そうだ、カケル」
「なんでしょう?」
「早速だが解呪を頼む」
「……へ?」
ラベンドラさんから、何やら手渡されまして。
「では」
何の説明もないまま、異世界に戻る四人。
手渡されたのは……、
「白身魚?」
座布団みたいな大きさとサイズの白身魚っぽい見た目。
でも、見た目だけだしなぁ。
ワンチャン蛇の可能性もある。
……あと、
「どうやって解呪しろと?」
座布団サイズの魚? なんて、丸っと入る容器無いぞ?
……どうしよう。
*
ふぅ、おはよう。
とりあえず、昨日解呪に使用した塩水を、ゴーレム君に与えましょ。
歯磨きしてー、庭に行ってー、土と一緒に与えましてー。
「ン~~ゴッ」
お~。
本当に飲んだっぽい。
……てことは、本当にこっちの世界で解呪を頼まれる日々が始まるのか……。
ちょっと楽しそうだからいいけど。
――んで、昨日渡された座布団白身なんだけど、入る容器は無い。
ただ、鍋ならある。
みんなも家に寸胴鍋くらいはあるよね?
それに折りたためば何とか……。
「ゴーレム君って塩分過多とか気にしなくていいのかな?」
「ンゴ?」
心配無さそうだな。
ぶっちゃけ土だし。……塩害とかあるんじゃなかったっけ?
まぁ、ゴーレムを畑に見立てて農業するやつなんて居ないから平気か。
……少なくともこの世界には。
ダンジョンで自給自足するドワーフとか居ない居ない。
「……塩ってどんなもんなんだろ」
とりあえず海水と同じ濃度にしてみるか。
寸胴鍋に座布団白身を入れ、水を入れまして。
濃度計算からの炒り塩作成からの鍋にぶち込んで撹拌。
ふぅ……これでよし。
「朝ごはん何にしようかな」
とりあえず体動かしたし、割とガッツリ食べたいような……。
そんな中視界に入ってくるのは、たった今分裂したばかりのリボーンフィンチの卵さん。
ああ、神様、これを食べろとおっしゃるのですね。
(呼んだか?)
あ、呼んでないです。
(そうか)
さて、朝に食べる卵料理ときたらもちろん……いっぱいあり過ぎるな。
まぁ、オーソドックスにタマゴサンドにしよう。
……いや、待て。
昨日の出汁が少し残ってるんだ、出汁巻き卵作って、卵焼きサンドにしよう。
見た目緑だからちょっぴり俺の知る卵焼きサンドじゃなくなるけど、まぁ誤差だよ誤差。
というわけで、調理……開始開始ぃ!
*
「応募者が多すぎる?」
「であります。前回大会の盛況と、優勝者の成功。さらに言えば、本選出場の段階で様々な利益に繋がる事が周知された結果だと推測するっす」
翔宅から異世界に戻り、就寝。
翌朝、宿屋で雑炊を啜っている所に、第二回大会開催の広報を担当していたギルド新聞冒険者ギルド課取材課長アエロスが訪問。
第一回を大幅に上回る調理士や料理人の応募は、予選を増やす必要がある事を如実に表しており。
「……寒天の製造は間に合うのか?」
「ソクサルムが東奔西走しているみたいですわ」
「自作する料理人もすぐに出るだろう。材料は心配ない」
「問題は予選の審査員の確保じゃなかろうかのぅ」
「各ギルドで予選審査を受け持つことになったみたいっすが……」
様々な不安要素が第二回大会に立ち込める中。
「まぁ、なる様になるでしょう」
「後は野となれ山となれ」
と、当の四人は、大会決勝の舞台を、大いに楽しみにしているのであった。




