ゴーレム焼き芋
「そこんとこどう思う?」
「ンゴ?」
最近肌寒くなってきたけど、だからこそ楽しみになるものもあるというかなんというか。
今は食後のデザートにとあるものをゴーレム君に作って貰ってる。
まぁ、普通に焼き芋なんですけど。
スーパーで買って来た焼き芋をアルミホイルに包んで、ゴーレム君の中にポイ。
後はいい感じに自動で焼いてくれるって感じ。
いやぁ、進化しただのなんだの言われた時は困惑したけど、滅茶苦茶便利だね。
一家に一台? 一体? あってもいいかもしれない。
……ご飯代というか、土代とか割とかかるけど。
(それはワインに合うかの?)
ワインよりは緑茶だと思いますけどねぇ。
現に玉露と一緒に楽しんでますし。
糖度が高い紅はるかを食べた後に、玉露を流し込む。
これ、最高ね。
「マジャリスさんが居たら、ここにバニラアイスとか買って来てるんだろうなぁ」
ちなみに今回お出ししようとしてたデザートは別にある。
ただ、俺一人ですし? ふと振舞うとか関係なく食べたくなっちゃったから現在焼き芋にしてるわけで。
でも、いくら秋とは言え芋だの栗だの一杯食べたしなぁ……。
そろそろ時期的にも苺の季節……ですわね?
行きたいなぁ、苺狩り。
あの四人連れて行ったら絶対に喜ぶしなぁ……。
――でも食いつくしそうだしなぁ……。
あと、絶対家の外に連れ出すとはしゃぐし騒ぐ。
連れ出せはしないな、うん。
「でもまぁ、イチゴがふんだんに使われたタルトとか、色々出てくるだろうし」
それで我慢してもらおう。
そもそも、フルーツ狩りなんて概念、説明しなきゃわからないだろうからね。
知らぬが仏ですわ。
(呼んだかの?)
あなたは仏じゃなく神様でしょうに。
*
『放生月毛』は水底にて、ただ動かず分身を出し続ける。
それは、そもそも分身を出すという行為が体力、魔力共に消費する行動であり。
この部屋へと入って来た三組のパーティを、こうして消耗戦を仕掛けなければ勝てないと判断した故の結果であり。
自身以外の魔力に向けて攻撃行動をとる、という単純な命令を与えた分身は、今のところ対象達を水の中へは侵入させていない。
だから判断する。
この戦い方で正しいのだと。
そうして、ふとした瞬間にあるものに気付く。
それは、ゆっくりと水底へと沈んでくる黒い塊。
それは、今まで見たことの無い、何か。
分身たちが反応していないという事は、魔力を帯びていない何か。
そう判断し、意識の外へと外そうとした……瞬間。
『放生月毛』は気が付いてしまう。
その黒い塊に、目や口、手足が生えている事に。
それは、自分が見たことが無いだけで、マンドラゴラであるという事に。
実は、水中と空気中では音の伝達速度には違いがある。
具体的には、水中であれば、空気中のおよそ四倍。
そんな細かい情報などなくとも、本能で、水中でマンドラゴラに叫ばれてはマズい、と判断した『放生月毛』は。
新たに作り出した分身に、マンドラゴラへの攻撃を指示。
なんとか叫ばれる前に対象を処理することに成功した『放生月毛』は……気が付けなかった。
たった今処理したマンドラゴラよりも大きな何かが、自分へ向かって来ている事に。
魔力を探知できないが故に、分身たちを素通りし、自分の元へ一直線に向かって来ている事に。
その何かは、この部屋に入って来た三組の中の一人だという事に。
(捕まえたぜ)
ゴボリ、と空気の泡が吐き出される。
気が付けば、『放生月毛』は、そのたてがみを『無頼』に捕まれており。
そのまま海面へ向けて引っ張り上げられる。
腐っても水棲の魔物。
陸上で過ごす種族に水中の機動では負けようはずがない。
だが、『無頼』の引き上げる力が強すぎて、碌な抵抗すら出来ない。
そうして、ついぞ海面へ引っ張り上げられた『放生月毛』は、そのまま空中へと放り出され。
「釣れましたわ~!」
『無頼』以外の二組が待ってましたと言わんばかりに集中砲火。
逃げ場を求め、天井に作り出した水面へと飛び込もうとするが、
「無駄だ」
進行を遮るように矢が飛んできて。
その先端には、あの見たことも無い黒いマンドラゴラが括りつけてある。
咄嗟に方向を転換し……。
「熱への耐性はありますかしら?」
「表面の防御力ではなく、内部の防御力もな」
「魔法耐性もあった方がいいぞい」
「変に耐えるより、すぐにやられた方が苦しまなくて済む」
転換した先に待ち構えていた『夢幻泡影』によって、彼らの持つ最大火力が叩き込まれる。
――すなわち、
『レンジでチン!!』
翔が教えてしまった、防御不可、身体の内部から沸騰させる極悪非道の禁術。
おおよそ魔物以外には使用を禁止されるであろうその魔法によって、
「ブルルルルヒヒーン!!」
『放生月毛』は、大きくいななく。
――だが、
「まだやれてねぇぞ!?」
流石はダンジョンボス、とでも言うべきか。
絶命はせず、それどころか足を振るわせながらもすぐに立ち上がり、『夢幻泡影』を睨みつける。
――ただ、
「おら!!」
『夢幻泡影』から魔力ステルス魔法を筆頭に、あらゆる身体強化系の魔法をかけられた『無頼』のげんこつが『放生月毛』の脳天に決まり。
しばしの硬直の後、どっかりと地面へと倒れこむ。
……最後の一撃は切ない。




