おっかしいなぁ
……来ない。
そんなことある? 四人が待てど暮らせど来ないんだけど?
あれか? もしかして今までの事が夢だったとか?
――冷蔵庫にリボーンフィンチの卵はしっかりあるな。
ほな現実か。
「ちょっと心配になるけど……どうしたもんか」
ジャーマンポテトに、侯爵芋のポタージュ。
トリュフを使った和風パスタを作ろうと準備してたのに、振る舞う相手が一向に現れない。
あの『夢幻泡影』が来ないとなると、よっぽど向こうで忙しいのかな?
「神様」
(ん~?)
「異世界での『夢幻泡影』の状況とか聞いたり出来ます?」
(んー)
神様に問いかけてもこの通り。
生返事を辞書で引いたらこれですって説明されそうなくらいな返事ですわね。
しょうがない、かくなる上は……。
「実はこの世界には綺麗な紫色のワインがありましてね?」
(…………)
「『夢幻泡影』の四人がこっちに来られない理由を教えて貰えれば、お供えを――」
(ダンジョン内でボスと戦闘中じゃ。そうじゃのぅ……かなり強めに作った個体じゃから、ひょっとしたら明日まで長引くかもしれんのぅ)
……あの四人って相当に強いはずだよな?
しかも四人だけじゃないんでしょ? 確か、別のパーティと一緒に探索してるって話のはずで……。
それだけかけて、なお明日までかかるかもしれない?
マジもんの強敵じゃん。なにと戦ってるんだろ?
〇ジラとか?
(何と戦っとるか伝えた方がよいか?)
「あ、大丈夫です。どうせ勝ってこっちに来るでしょうし、その時に素材にして持って来るでしょうし……」
どんな魔物と戦ってて、結果どんな食材を持って来るのか。
割と楽しみなんだよね。
だから、今は聞かない。
さて……。
晩御飯どうしようかなぁ……。
一人なら別に作らなくていいなぁと思っちゃうし……。
こういう時は、超久々に冷凍食品だけで晩御飯済ませちゃお。
今の冷凍食品は美味しいし、何より種類も豊富だし。
そうと決まれば早速スーパーに買いに行こう。
今の腹的に……ご飯ものがいいな。なにがあるのかしら。
*
ただいま! という事でね。
炒飯、滅茶苦茶美味しそうだった……。
あと、ご飯物食べたいとか言ったけど、冷凍のジェノベーゼ見つけて心が揺らいだ。
なお、そんな中俺に選ばれた冷凍食品は~ドリア! 君に決めた!
(紫色のワインが無いようじゃが?)
あれは通販で頼みました。
すぐには来ませんね。少しだけ待ってください。
(むぅ……)
まぁまぁ、今日のドリアをちゃんと神様と翻訳魔法さんの分まで買って来ましたから、それで何とか。
(む、許す)
何様だよ、神様か。
てなわけで、一袋に二つ入っているミートドリア。
これを三つほど買って来ましたので。
まずは俺の分を解凍開始。
その間に色々と手間を加えますわぞ~。
と言ってもやることはシンプル。
リボーンフィンチの卵を目玉焼きにし、トリュフマンドラゴラを塩茹でに。
目玉焼きは蒸し焼きにして、白身は固めて、黄身は半熟。
それを温め終えたドリアに乗せて、トリュフは水気をしっかり切って、薄くスライスしてドリアにかける。
これで、冷凍ドリア異世界アレンジの完成です。
(美味そうじゃな~)
「多分ワインに合いますよ」
(紫のワイン……)
「たまにはそちらの世界のワインと合わせてみては?」
(むぅ……)
なんてやり取りをして、お次は神様の分。
同じく目玉焼きを作り、トリュフはさっき俺が使った残りを削ってほい。
なお、完成した瞬間に持ち去られた模様。
(むほほほ、美味いのぅ)
神様も言うんだ、むほほって。
後は翻訳魔法さんの分か。
同じく作って、神様、届けてあげてください。
(ほいほい)
よし、じゃあようやく食べられるし、堪能させていただきますか。
見せて貰おうか、最近の冷食の実力とやらを。
*
「ちくしょう! 本体どこだよ!!」
「恐らくは地底湖の底だろう……」
「明らかに動かない魔力反応が一つありますものね」
「引っ張り上げられないのか!?」
「魔力を帯びた水に触れるだけで、そこに分身が飛んでくる。この水自体が防壁であり、探知機であり、そして迎撃用の武器なのだ」
「つってもこのままじゃじり貧だぞ!? なんかねぇのか!?」
ダンジョンボス、ケルピー倭種『放生月毛』と戦い始めておよそ一日。
ダンジョン内の為、戦っている本人たちは夢中であり、正確な時間の流れは分かっていないが。
それでも、これまでとは大きく異なる、苦戦する相手だという認識は共通しており。
現在の、地底湖の水底に座し、ただ分身による迎撃で獲物の疲弊を待つ戦法を前に、『夢幻泡影』、『ヴァルキリー』、『無頼』はただいいようにやられていた。
「水を蒸発させられないか!?」
「どれほどの熱源を用意させるつもりですの!!」
特に対抗策も無く、壁、天井、そして地底湖から襲ってくる『放生月毛』の分身たちに削られていく三組だったが。
ここで、ある打開策に繋がる出来事が起きた。
それは、『放生月毛』の分身による体当たり。
これを受け、大きく体勢を崩した『ヴァルキリー』のヘスティア。
そのヘスティアの懐から、トリュフマンドラゴラが地底湖へと落ちた。
そして……ゆっくりとマンドラゴラは沈んでいく。
「なぁ」
「ああ」
「なンであいつは襲われない?」
「武器ですら水に触れた瞬間に分身が集まって来るのに……」
「――探知方法は……魔力?」
「てことは、魔力が一切無い状態でなら水の中に潜れる……?」
僅かに見えた解決の糸口。
そして、この事実に『夢幻泡影』は目を合わせて頷くと。
「『無頼』、今からお前に、徹底的に魔法をかける」
「……あン?」
四人だけが理解出来る提案を、『無頼』に押し付けるのだった。




