聞かなきゃよかった……
「デザートと言ったらチョコですわ!」
「ただチョコを生地にぶち込んだだけじゃあない。ちゃんと生地とクリーム、チョコが調和する分量を見極めている……」
「甘いだけのチョコじゃなく、ほろ苦さがあるのもポイントじゃな」
「チョコ is GOD」
分かり切ってたっちゃ分かり切ってたけどね?
結局一番はチョコレートなんですよ。
宇宙の心は彼だったんですね。
「食べれば食べる程、向こうでの再現を強く望みたくなる」
「……ダンジョン踏破祝いという事でなら、一度作ってやらん事も無い」
あ、折れた。
というか多分だけど、ラベンドラさんも食べたいんでしょ。
あと、作りたい。
ここで食べたものを、自分の知識でどれだけ再現出来るか。
ラベンドラさんは、それを楽しみにしてると思うんだよな。
「そういえばなんですけど」
「?」
「どうした?」
ふと気になったんだ。
ハイエルフ、ダークエルフ、エルフ、ドワーフ。
この中で料理してるのがダークエルフのラベンドラさんなのって、なんでなんだろ?
エルフは賢者ってイメージだから、エルフが料理出来るのはまぁ解釈一致なわけだけど。
それだと、リリウムさんやマジャリスさんも料理出来ないと変じゃない?
ガブロさんもドワーフなら生産全般に偏見とか無いだろうし、料理出来ても不思議じゃない。
でも、焼く工程以外はやらないじゃん?
なんで?
「なんでラベンドラさんって、料理が出来るんですか?」
「どういう意味だ?」
「あ、いえ。変な意味じゃなく。リリウムさんやマジャリスさんが料理出来ないのに、ラベンドラさんが料理上手いのは何か理由があるのかなーと」
俺としては、他愛無い会話というか。
ボーっと思い浮かんだ些細な疑問なわけだけど。
とりあえず、うん。
リリウムさんもマジャリスさんも、確かに、みたいな顔でラベンドラさんを見ないの。
「少し前の話になるが……」
あ、話してくれるんだ。
ラベンドラさんが料理人になったルーツ。
「森の外れに住んでいてな。そこで魔法の研究をしていたんだ」
凄くエルフっぽい導入ですね。
あ、エルフでしたか。
「そこに一組の冒険者が尋ねて来た。と言っても目的は無く、ただ森でさまよって食料が尽きた時に私のいる小屋を見つけたそうだった」
「とても運がいい冒険者ですわね」
「だな。俺たちなら迷わず攻撃している」
怖いよエルフ……。
せめて警告くらいはしよう? 相手が人間ならさ。
「で、魔法研究で使っていた素材を適当に煮込んだスープを出したんだが」
あ、これ知ってる。
その適当なスープを美味しそうに飲む冒険者たちの反応を見て、嬉しくなって料理に目覚める奴だ。
俺は詳しいんだ。
「形容しがたい不味さだったらしく、顔を青くしながら飲んでいた」
……あれ?
違うじゃん。
「で、飲み干した後、その冒険者の一人に「全然美味しくねぇよ! 俺に作らせろ!」と言われてな」
「私なら焼きますわね。骨も残さず」
「こっそりと毒でも仕込む」
「正面から唐竹割じゃわい」
物騒だよぅ……この人達。
いやまぁ、その冒険者も無礼だけどさぁ……。
「で、作られたスープは確かに私の適当にぶち込んだスープよりは味がまともだった」
「それで料理の奥深さを知った……とか?」
「いや? 一口飲んだ後の冒険者のどや顔がとんでもなく頭に来てな」
……どうしよう、聞けば聞くほど全然いい話じゃない。
「それで、見返すために魔法の研究を全て辞めて、料理の研究をしだした」
動機が……。
でもまぁ、その執念でここまで料理を続けているのならばまぁ……。
「しばらくすると件の冒険者たちを見つけてな。もう引退し、当時のパーティで飲食店を営んでいた」
あ、この流れは流石にそこで食事をして、で、自分を思い出させて腕を認めさせる流れだ。
俺は詳しいんだ。
「だから、その店の正面に私も店を構えて客を奪い、店を畳ませた」
……もうヤダ、このエルフ……。
現代日本人の常識が通用しない……。
「それからしばらくすると、その事を貴族にチクられてな。話を聞いてやってきた貴族に料理を出したら気に入られ、召し抱えられた」
なるほど? そこで料理の腕を磨いた、と。
「新しい料理の為、として貴族の財産を高価な材料にじゃぶじゃぶつぎ込んでな。貴族も貴族で、それで出来る珍しい料理を他貴族との交流に当て、地位を上げていったんだ」
全然綺麗にまとまらないよう……。
なんてこった、一番まともだと思っていたラベンドラさんが実は結構なヒャッハー系だったなんて。
このカケルの眼を持ってしても見抜けなかった……。
「でまぁ、ある程度順調だったわけだが、ある日に大きな催し物に出す料理の材料が手に入らなくてな。
その材料を取りに三年ほど探索をしていたら、いつの間にか貴族から追われる立場に変わっていた」
「……念の為聞きます。その催し物の開催されるのはどれくらい先の事だったんです?」
「三か月だな」
「あー……」
ノーコメント。
エルフに人間の時間感覚で生きろって方が無理だったのかもね、うん。
そういう事にしとこう。
「その立場でも問題なかったが、流石に面倒になって来たので冒険者として登録し、ギルドを後ろ盾に貴族を黙らせた。そしてリリウムに拾われ今に至る」
「……つまりラベンドラさんの料理のルーツって……」
「私にどや顔かました人間に復讐するため、だな。もう達成したが」
もしかしてエルフって、怖い存在なのかもしれない。




