第二回開催決定
「和の珈琲というのも合うんじゃな」
「安心と信頼のイチゴ味ですわ! ターバンのガキですわ!!」
多分、そっちのイチゴ味ではないと思うんですけど。
あと、もし仮にそっちのイチゴ味だったら足を守っても無駄だからな。
どんな状態であれ短剣を足に突き刺してくるぞ、そのガキ。
「蜜柑……こちらも香りに果実感や酸味が施されていて、口の中は甘いのに香りとのマリアージュで味を膨らませているな」
まぁ、そんなリリウムさんの妄言に近い感想をスルーして、ラベンドラさんは味わっていますけれども。
というか、マジで翻訳魔法さんが日本語を何で勉強してるのか滅茶苦茶気になる。
なんと言うか、一般知識よりも明らかに偏ってるんだよな。
ブロント語とか、ネットスラング的なのに詳しいというか……。
「芋ようかんを食べ、あんこ玉を食べ、また芋ようかんに戻ってきたから分かるが、この二つのスイーツ、どの順番で食べても互いを邪魔しないぞ!?」
で、二本目の芋ようかんを食べ終えたマジャリスさんが合流。
結構ゆっくり食べてましたね?
「こうして詰め合わせで売っているんだ、それくらいの計算はされているだろう」
「どちらのスイーツも甘すぎませんし、かといって満足出来ない甘さというわけでもありませんもの」
「その絶妙なバランスで作られとる。この世界のスイーツに限らず、料理も同様の物が多くあるのぅ」
「食に関する捉え方が我々と違い過ぎるのだ。調理にかける時間と美味しさは比例する。我々では当たり前の事でも、この世界ではお湯を注ぐだけで美味しい味噌汁が飲めるように、時間と美味しさがいい意味で釣り合っていない」
「牛乳と混ぜるだけで食べられるスイーツも美味しかったからな」
フルー〇ェの事だな。
まぁ、確かに言わんとしてることは分かる。
インスタントとか、あと冷凍食品ね。
最近のそれらってマジで美味しさが天元突破してるからな。
「芋ようかんとあんこ玉で一口の食感が違うのがまたいいんだ。感覚がリセットされる」
「このコーティングしとる透明な膜はなんじゃい?」
「寒天と言って、海藻から作られる奴ですね。ちょいちょいデザートに使いましたよ?」
……確かね。
ゼラチンと、寒天と、アガーと、固める材料がいくつもあるから、どれで使ったかは正直すぐには思い出せないけど。
確か使った……はず。
「ただ、こうして何かを包むようにはしていなかったな」
「あ、それはそうですね」
「これで包めば乾燥することが無い。新たな保存方法とはならないか?」
「流石に強度が無さ過ぎて無理がある」
「そうか……」
「――だが、一時的な時間稼ぎには持って来いではないか?」
そう言ったラベンドラさんに、他三人の視線が集まって。
「例えば『――』の肉。空気に触れる事で放電する性質があるが、これで包んでしまえば空気に触れない」
「……なるほど!」
なるほど! じゃないのよ。
何その肉。取り出したらスパークし始めるの?
怖いって、食えんって。
「そうして解体までの一時繋ぎとしてならば、大いに有効だろう」
「あのー……」
そこまで聞いて、ふと思う。
素人質問で恐縮なのですが……。
「? どうした? カケル」
「それって状態保存の魔法でいいのでは?」
……だよね?
状態保存が出来るならそれでよくない?
「確かにそれはそうだ」
ほら。
「だが、状態保存の魔法はその名の通り魔法。つまりは魔力を消費する」
「もちろん、それだけで枯渇するような貧相な魔力はしておりませんが、それでも温存出来る場所では温存しておくべきでしょう?」
「あー……確かに」
ダンジョンの中間でその放電する肉を手に入れたとして、じゃあ町まで戻るかってなったとする。
その時に状態保存魔法で持ち運んでいたら、道中の戦闘でもしかしたら魔力が尽きるかもしれない。
そうなると戦闘中に持ち物の肉から放電が始まって……。
うん、普通に死亡要因になり得ますね。
便利だからこそ、それだけに頼るのは避けなくちゃならないのか。
「それに、我々は枯渇しないが、他の冒険者ならばそもそも状態保存の魔法が使えない方が多い」
「とすると、この寒天とやらで包んで持ち帰る手法が広まれば、より素材が市場に出回ることになるじゃろう?」
「まぁ、今まで出来なかった人が出来るようになるんですからね……」
理論上はね?
なお、その放電する肉の魔物を狩れるとは言ってないもよう。
「つまり、一つ別の保管手段が増える事で市場に大きな影響が出る可能性がある」
「市場は潤い商人は活気付く、すると金が巡り、貴族を含む多くの住人が恩恵を受ける事になるんじゃ」
風吹けば桶屋が儲かる的な?
最終的な桶屋が誰になるかはあるけど、まぁ、金は巡るに越したことは無いだろうし。
「こうしてスイーツに使われれば、また我々の想像の外のスイーツも出てくるだろうしな」
「…………思ったのですけれど」
「?」
「前回のたこ焼き大会から、次はこれを! と大会の提案が出されていると言っていたでしょう?」
「あったな。新聞のやつらがしばらくうるさかった」
「次はスイーツというのはどうでしょう?」
「賛成!!」
……耳キーンってなったんだけど?
マジャリスさん? うるさいよ?
「スイーツか。下手に限定しない方が色々な種類を見れて面白いかもしれんな」
「寒天の作り方を聞いて、寒天を用いる事を条件にしたらどうじゃい?」
「新たな食材に触れる機会を設ける、か。面白くなりそうだ」
「王へは……ソクサルムへ伝えれば問題ないでしょう」
なんてトントン拍子に四人だけで進むスイーツ大会の計画を聞きながら。
俺は残ったあんこ玉を堪能するのだった。
……一番のお気に入りは蜜柑かな。
あのサッパリフレッシュな香りと酸味が俺にとっては最高でしたわ。




