あんの違い
……芋ようかんがうめぇ。
マジでさ、こんなに滑らかなのに生クリームもバターも使用してないのヤバ過ぎるよ。
塩と砂糖とサツマイモだけで出来てるの未だに意味分からん。
そして玉露と合いますわ。
芋の甘さがお茶のコクと混ざって、甘さが特徴とは言ってたけど苦みも少しあってさ。
その苦みと芋ようかんの甘さが流れて行った後に、玉露の甘さが舌を撫でる。
これはお茶単体でも美味しいけれど、こうしてお茶請けがあると化けるタイプのお茶だな。
――あと、全然お茶のポテンシャルを引き出せてない。
淹れる方適当だったからだろうけど。
後で淹れ方を調べとこ。
「これ美味しいですわ!」
「周りのゼリー状の部分がいい。中身の水分を逃さず乾燥させない。だからこそ、口に入れた時のしっとりとした食感に繋がっている」
「あんもキメが細かいな。これまでで一番のキメの細かさかもしれん」
「甘さが控えめでいくらでも入るぞい!!」
で、芋ようかんを楽しむ俺の一歩先を行っている『夢幻泡影』の四人は、さっさとあんこ玉に取り掛かっていた。
ゼリー状の部分ってのは表面を覆ってる寒天の事だろうね。
商品説明によると、この寒天部分、結構固めらしく、食べる時にぷちっと弾けるみたいよ?
何それ美味しそうじゃん。
俺も食べよ。
「うめぇ……」
いや、もうそれしか言えんよ。
商品説明にある様なぷちっと感は正直あまり感じなかったけど、それでもこの寒天の口当たりの良さは絶対にいるね。
あと、中のあんこの固さも丁度いい。
歯を当てたからって崩れずに、しっかり噛み締めさせてくれる感じ。
噛んだ後の断面からあんこが崩れていかない位の固さ、絶妙です。
「お茶と合うな……」
「凄く落ち着きますわねぇ」
と、一つ目のあんこ玉……オーソドックスな小豆味を堪能したリリウムさん達は一旦インターバル。
最近はデザートだからとがっつかなくなって、一息つきながら食べる事を覚えたんだよな。
特に、複数味がある様なデザートを買ってくると、その味全部を余すことなく堪能するためにか、必ず間にお茶や紅茶、コーヒーを挟むし。
あのマジャリスさんでさえ例外でないのだから、成長を実感するわね。
「次はこの白いのを試すか」
「黒と対になる色ですものね」
で、二個目のあんこ玉は白いんげんを試すみたい。
白いんげんって珍しいなぁ……なんて、ならないよね?
少なくとも日本ではありふれた白あんの材料の一つだし。
白いんげんって言ってるけど、まぁ、普通に白あんな訳ですよ。
不味いですか? 美味いですよ。
「色のせいか黒より爽やかに感じるな」
「間違いなく香りが違うわい」
「これはこれで好きですわ」
「やはり、あんの完成度が段違いだ……」
ほらね?
まぁ、白あんパンとかって不人気枠的な所に入れられてたりもするけど、俺は好きだよ?
パン屋でうぐいすパンとかと並んで残ってるの、よく見るけど。
「おー、美味い」
というわけで白あんへ。
言ってた通り、小豆あんとは香りが違うね。
あと、くちどけというか、キメの細かさにも若干の違いがあるように感じる。
白あんの方がサラサラしてるかな?
小豆の方は口の中でトロリと溶ける感じ。
まぁなんにせよ美味いんですけどね。
「次はこの……抹茶であろう緑だな」
「抹茶味も美味しいですものね」
こう、和菓子の基本味を順に踏んでいくの、凄いな。
なんかこう食べてくださいってガイドでもある感じじゃん。
「む、香りがいい」
「甘さも丁度いいですわね」
「茶と合う……合い過ぎる……」
「いつまでも食えそうじゃわい」
まぁ、抹茶もお茶だしねぇ。
お茶とお茶が合わないわけ無いっていう。
……お茶の種類によっては喧嘩しそうだけど。
香りが強いお茶同士とかね。
「ほろ苦さも感じるのが素晴らしい。やはり抹茶味はそれ一つで完璧に完成されたスイーツの味と言える」
「過言ではありませんこと? これまでにもほろ苦さを含んだスイーツはあったわけですし」
「いや、ここまで自然に苦みと甘みを調和させたスイーツは類を見ない。やはり抹茶、抹茶は全てのスイーツの頂点」
……過言だろ。
それは。
あと、ラベンドラさん、いつからそんな抹茶信者に?
確かにスイーツの苦みについては前からも言及してたけどさ。
ここまで拗らせた要因いず何?
「ラベンドラは言い過ぎじゃが、わしとしても抹茶は好ましいわい」
「苦みが舌に来るのではなく、香りとして鼻に残るのが凄いんだ。舌で甘みを、鼻で苦みを同時に感じる。それこそが抹茶味の頂点たる所以」
言われてみると確かに?
お抹茶って、甘さよりその香りやコク、風味や苦みを楽しむイメージがあるし。
それをスイーツに落とし込んだ時に、苦みを風味に混ぜ込んだって事か。
こうしてラベンドラさんに言われなかったら、その事を認識してなかったのかも。
抹茶のあんこ玉を齧り、咀嚼して。
お茶を飲む前に、口の中の空気を鼻に抜いてみる。
……確かに苦み、感じるね。
そこに玉露のコクと甘さを口に含むと、一気に満足感で満たされる。
お茶って深いんだなぁ……。
「よし、次だ」
「私はこのピンクですわね! えぇと……苺味ですわ」
「珈琲味が気になるわい」
「蜜柑味を試す」
なお、ここでみんな食べる味が分かれる模様。
マジャリスさんだけはあんこ玉から芋ようかんに戻って来たみたいだけど。
……皆さんお茶が空ですね? お代わり、注いどきますね。




