そう言うのもっと頂戴
(あー、ちょい待ち)
「どうかしました?」
とりあえずどっさりとザルに盛られたウニを塩水で洗おうとしたら呼び止められ。
振り返ったはいいものの、
「?」
四人全員から、どうかしたか? というキョトン顔が返されて。
気のせいか? と思う反面、……もしかして神様? という可能性がよぎる。
「一応聞きますけど、呼び止めてはいませんね?」
「何も言葉を発していない」
うん、じゃあ俺の聞き間違いか、神様が脳内に直接パターンのどっちかだな。
となれば、
「あー、あー、テステス。神様聞こえてますか? どうぞ?」
交信を試みるのみ。
(ハローハロー、感度良好、鮮明に聞こえとるぞい、どうぞ)
……この神様滅茶苦茶フランクだな? ノリいいし。
「何をしとるんじゃ?」
俺の事を奇怪な目で見てるガブロさんは一旦無視。
「引き留めた理由をお聞かせください、どうぞ」
(塩水を作る前に、使う塩を炒めるんじゃ)
「……焼き塩を作るってことです?」
(じゃな。そうすることで、こちらの世界で言ううにであるあの鱗を生食できるようになる)
引き留めた理由はそれか。
生食可能になる方法を教えるためだったんだな。
「ありがとうございます。またお供え物をさせていただきますね」
(楽しみに待っとるぞ~い)
……ふぅ。
よし。じゃあ早速焼き塩を作っていきますか。
「――どうしました?」
「ん? ああ、いや……」
「精神錯乱に効果の有る魔法について議論をな」
「そもそも異世界人に魔法をかけていいのかという倫理観につきましても……」
誰が精神錯乱じゃい! 神様と会話してただけだっちゅーの!!
……ヤバいな。客観視すると相当ヤバいやつになる。
――ほ、ほら、かの有名なジャンヌダルクも神様の声が聞こえたって言うし、誤差だよ、誤差。
「多分そちらの世界の神様だと思われる存在と会話してただけですよ」
「……わしらには聞こえなかったのにか?」
神様、俺にだけ声が聞こえてるようにしてたのか。
まぁ、じゃないとこんな反応にはならんよな。
「みたいですね」
「それで? 神は何と?」
「えぇっと、とりあえずその鱗を塩水で洗おうと思ったんですけど、神様曰く一度塩を焼けとの事らしいです」
「……ふむ?」
「そうすることで生食出来るようになる、と」
「なんだと!?」
「なんですって!!?」
神様から言われたことを伝えたら、ラベンドラさんとリリウムさんから詰め寄られました。
近いから……離れて……。
「鱗とは言え立派に呪われておりますのよ!?」
「しかもゾンビ系の呪いだ! 口に入れるだけで影響が出るほど強いのだぞ!?」
「でも神様が言ったんですよ?」
「うむむ……」
凄くぶっちゃけた話するね? やっぱりゾンビ系とか、アンデッド系って呪い強いんだなぁって。
まぁ、その見た目から普通は絶対に食べないだろうけどさ。
……俺もこの鱗の見た目がうにに見えなかったら食べたいとすら思って無いし。
んでまぁ、このままだといつまでもかかりそうなので、フライパンに塩をザーッと入れまして。
中火でサッと浅炒りしていきますわよ。
「火を通すことで呪いに効きやすくはなるのは分かるのですけれど、何故塩?」
「分からん」
「この世界の塩が特別という説は無いか? 我々の世界で塩を使っただけでは呪いは薄れすらしないんだろう?」
塩炒ってる間に何やらエルフ同士の議論が繰り広げられてますけど?
塩はお払いの効果あるでしょ。清めの塩とか言ったりするし。
……まさかこの世界というか、日本特有の考えだったりするの?
(そっちの世界の神……いや、お主の住んどる国におる神様の力の一端じゃな)
あ、神様解説ありがとうございます。
つまりはこの世界の塩じゃないと呪いに効果無いのか。
と言うわけで炒り終わり、こいつを水に溶かしまして。
なんちゃらの鱗を一掴み取って、塩水にジャブリ。
そのまま身を潰さないよう洗っていくと……。
「うわっ!? なにこれ!?」
俺のイメージね? こう、ぬめりとかって、濁った白って言うの? そんな色しか頭にないわけ。
でね? このウニ鱗、洗ったら濃い緑の何かが出て来たんだけど……。
怖いって、マジで絵具とかしたみたいな緑色してる……。
「呪いが……こんなに……」
あ、これ呪いなんか。と言うか、呪いって緑なのか。
「凄いですわ!! 物凄い発見ですわよ!!」
「塩にこんな効果があったとはのぅ」
「塩を炒る。火による解呪の効果と合わせて強い作用を引き出すわけか」
「これで俺たちの世界でも生で食える物が増えるのか!?」
大騒ぎだなぁ。
そんな事より助けて? ボウルに入れて洗った都合上、この呪いたっぷりの塩水にはまだ俺の手が浸かってるんです。
……あと、呪いが出たこの塩水は普通に捨てていいの? ここから訳分からん病気とか広まらない?
なんて思っていたら。
緑色に変化したボウルの中の塩水は、徐々にその濃度を落としていって。
しばらくすると、元の変わらない透明な色の水に戻る。
……怖い!! 戻ったら逆に怖い!!
「完全に呪いを浄化したようじゃな」
「カケル!! 大発見だぞ!! もし我々の世界ならこの功績だけでしばらくは遊んで暮らせる!!」
「冒険者ギルドはもちろん調理士ギルド、さらには飲食店を営む者から漁師にまで感謝されるじゃろうな」
「でも、このやり方教えてくれたの神様ですよ? 俺が思いついたわけじゃありませんし」
「むぅ、確かにそうじゃが……」
「そもそも、神と交信できる存在が希少だ。それも含めて崇められるだろう」
……ヤダなぁ。自分の功績でもないもので崇められるの。
知ってる? そうなったら次はもっと凄い事をって求められるんだぜ?
俺には耐えられないね。羨望と期待に押しつぶされちゃうよ。
「そんな事より、浄化は終わったんですからこれ食べてみましょうよ」
「そうだな。見た目がウニでも味が違うという可能性も無くはない」
「いつぞやの『――』の実のようにの」
そっかぁ。それがあったなぁ。
あと、ガブロさんはジト目でこっちを見るな。
あのリアクション面白かったんだから。
と言うわけでウニ鱗の試食なんですけど、まずはウニと決めつけず、何も付けずにいただきますわ。
これで醤油漬けて食べてみて、味は蜜柑でしたとかシャレにならんし。




