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閑話 第一回大会決勝

「いやぁ……しっかし集まったっすねぇ……」


 ギルド新聞冒険者ギルド課取材課長、アエロス。

 そのアエロスは、城下に並び立つ無数の屋台を眺めながら、そう呟いた。

 王の発案と、各冒険者ギルドの協力で開催される事となった、たこ焼き屋台選手権。

 予選を勝ち抜き、こうして王城城下に屋台を並べる事が出来たのは選りすぐりのたこ焼きを創り出したアレンジ猛者たちのみ。

 その美味いたこ焼きをどれか一つ食べようと城下にはあらゆる場所から人が押し寄せ。

 Bランク以上の冒険者が警備に当たる必要がある程には盛況。

 さらに、予選時点で王へと届いた報告には、それまでとは比べ物にならない程の経済効果をもたらした、とすらも記載され。

 この決勝の舞台で、どれほどの経済効果があるのか、と王ですら期待に胸を躍らせている。

 ……ちなみに、商魂たくましい商人たちは、予選を突破出来なかった者たちと協力し、飲み物の販売を行っており。

 こちらも多大な利益を叩き出していたりする。


「にしても……自分でいいっすかねぇ?」


 先ほど王から直々に渡された腕章。

 特別審査員と表記されたその腕章をギュッと握り、そんな事を口走ると。


「別に審査員はお前ひとりというわけではない。好きに楽しめ」

「そうですわよ? 折角のお祭りなんですもの。楽しまないと損ですわ」

「濃厚なソースを独自開発した料理人から、あっさり系でここまで来た料理人もおる。どこを見ても美味いたこ焼きで一杯じゃぞ?」

「審査員になったのだから仕事は食べる事だ」


 その言葉を聞いていた、この祭りの火付け人、『夢幻泡影』が姿を現した。

 当然四人も特別審査員の腕章を身に着けており。


「祭りの告知に宣伝。さらには優勝賞品の情報拡散。お前たちが動かなければここまで大規模にもなっていないだろう」


 という言葉通り、もちろんアエロスも動き回ったりしたのだが。


「でも、審査員は無料で食べられちゃうんすよ? 少し申し訳ないというか……」

「そう思うなら公平な審査を心掛けろ。一つの店のたこ焼きを食べ終わったら、水で口でもゆすぐんだな」

「うぅ……そうするっす」


 突然、五人の耳に爆発的な歓声が届く。

 どうやら、国王が祭りの開始を宣言したらしい。


「よし、手分けして食うぞ」

「一時間後に一旦集合。美味かった店を共有し各々が確認をする」

「酒はご法度じゃぞ? 舌が鈍る」

「ガブロから言われるとは思いませんでしたわ。それでは、私は北に」

「西へ向かう」

「東に行くぞい」


 その歓声を合図に、今日の作戦を確認した『夢幻泡影』は。

 それぞれ、割り当てられた方角へと向かう。

 そして、最後に残ったラベンドラは……。


「む、そうだ。この祭りが終わったら私たちを探せ。画期的なワインの作り方を教えてやる」

「へ?」


 物凄く気になる言葉を残し、アエロスを置いて南へと向かった。

 無論、デザートワインの作り方の事なのだが、


「なんだか物凄く嫌な予感がするっす……」


 当然、そんな情報を公開してしまうと、酒造ギルドや農業ギルドに質問攻めにあう事が確定してしまい。

 昇進と引き換えに、ただでさえ行われている他方からの追求が。

 より一層強くなることを、この時のアエロスはまだ知る由もない。



「まぁ! 生地がとても軽いですわ!!」

「生地を混ぜる時に空気をたっぷり含ませてるからな! ふわっふわの食感と中のコロッサルの身の弾力が最高だろ?」

「ですわ! 生地を殺さないよう薄めあっさり目の味付けの漬けダレが絶妙にマッチしていますわ!!」

「お、お姉さん分かってるじゃん! そのソースもこだわりのソースよ! もちろん、作り方は秘密だがな!」

「ご馳走様。美味しかったですわ」

「おう! 評価点、頼むぜ!!」


 屋台に顔を出し、文字通り片っ端から食べ続けるリリウムは。


「生地に使う水も炭酸水でしたわね。ふっくらフワフワの生地は美味しかったのですけれど、どうしてもカケルの出すお出汁で食べた方が美味しいと言わざるを得ないですわね」


 審査員とするにはあまりにも舌が肥えすぎている。

 それも、こちらの世界で持て囃されている、現代の料理で。


「まぁ、そんな私を唸らせられたら、優勝間違いなしなのですけれど」


 それでも、この場に集うは予選を勝ち抜いた猛者たちであり。

 自分の期待を越えるたこ焼きに出会う為、リリウムは次なる屋台へと顔を出す。



「なるほど、コロッサルの身自体に濃い味付けをし、ソースをつかっとらんのか!」

「そうさ! そうすることで噛んだ瞬間にジュワッと強い旨味が溢れてくるって寸法よ!」

「生地自体も、それを受け止められるだけの物に仕上げとるの!」

「小麦から水まで拘ったぜ? こうして、見た目はシンプルだがどこのたこ焼きにも負けない美味さに持ち上げたのさ!」

「美味いのう! エールが欲しくなるわい!」

「おっちゃん審査員だろ? 飲んでいいのか?」

「ダメに決まっとる。……お主、どこの出身じゃ?」

「ナセットって港町さ」

「覚えとくわい」


 そう言って屋台を後にしたガブロは。


「ソース無し。見た目で惹かれたがあれでなかなか。……だが、だとしたら中のタコは揚げておいて欲しかったのぅ」


 口を水でゆすぎつつ、そうボヤく。


「生地はどこまで行っても生地の域を出ん。じゃから、それ以外の工夫を見たいんじゃがのぅ」


 と、口にするも、その呟きは祭りの喧騒にかき消され。


「よし、次じゃ」


 気を取り直し、次なる屋台へと向かうのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アエロスくん、てっぺんを目指せ………新聞業界のトップに…
[良い点] 食通二人。 舌肥えてるし改良点ぱっと出てくるのは流石ですね。
[一言] 異世界よりも食の文化が進んでいるであろう地球で、一般的な翔の料理で舌が肥えたリリウム達からしたらもの凄く改良の余地があるんだろうなぁ。 そういえばくさやとかシュールストレミングといったある…
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