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雑に美味い

「シナモン! シナモン!!」

「先行し過ぎだラベンドラ! いくら一度踏破したとはいえこのダンジョンは倭種の蔓延る危険指定ダンジョンなんだぞ!!」

「それにこのダンジョンにあの香辛料があると限りませんのよ!!」

「少しは落ち着けっちゅーに」


 翔宅から異世界に戻り、一夜明け。

 萌え断のサンドイッチをアエロスに見せびらかしながら食べた後、『夢幻泡影』の四人が向かったのは、先日踏破したばかりの倭種が出る滝の裏のダンジョン。

 その目的はもちろん、まだ出会っていない魔物たち(しょくざい)と出会う事なのだが。

 シナモンの情報を聞いてからというもの、ラベンドラはどうにかして手に入れようとお熱になっており。

 普段は気配察知やマジャリスの描いた地図を用いて安全に移動するところ、ほぼ無警戒で突き進んでいたりする。

 もちろん、不測の事態に備えてはいるし、そこらの魔物が襲ってきたところで、たとえラベンドラ一人であっても手こずったりはしない。

 ……そう、余程の事態でなければ、であるが。


「む?」

「次元干渉? ……いえ、空間が歪曲していく感覚ですわね」

「戻って来いラベンドラ! なんか変じゃわい!!」


 そして、そんな事態は、特に前触れもなく起こるもの。

 四人全員がソレに気が付き、特にリリウムが詳細を感じたその現象は。

 ビキッ――ビキッ。

 と、音を立て、空間にひびが入り、まるでガラス片のように砕けて床へと落ちていき。


「――来る!?」

「デカいぞ!!」


 その、空間自体にひびを入れ、別の場所から四人の居るダンジョンへと無理やりに入り込んできたその存在は。


「伝承でしか見聞きしなかったが、ようやく巡り合えたか」

「おい、なんだこいつは!?」

「こいつはジェノサイドキングサーモンの倭種」

「そんなのが居ますの!?」

「しかも希少個体と呼ばれる、同じ種の中でも特に秀でた唯一無二の特性を持つ、いわば突然変異のような存在だ」


 宙を泳ぐ、非常に大きな鮭であり。


「このように空間自体に干渉し、穴をあけ。そこから入り込んで様々な時間を漂う事からその名が付いた」


 エルフであっても、一生に出会えるか分からないその幸運に、ラベンドラは感謝し。

 そして、興奮しながらその個体の呼び名を叫ぶ。


「奴は……『トキシラズ』だ!!」



 さて、と。

 朝になって冷蔵庫を改めて確認したら、ちょっとマンドラゴラの色が偏ってたわね。

 というのも、昨日たっぷり使った中に、入らなかったマンドラゴラがあってさ。

 それがまぁ、目立っちゃうよねという話。

 まぁ、どれだけでも料理に使えるから、今日はそいつを使って何品か作るか。

 まずは朝ご飯にピッタリな料理を……既に作ってるんだよなぁ。

 正確に言うと、昨日寝る前に作った。

 冷やすっていう大事な工程があったからね。


「朝はサッパリに限りますよ」


 肉とかうなぎとか食ってた俺が言うのもあれだけどさ。

 というわけで今回の朝ご飯は『だし』。

 出汁じゃないよ? 『だし』だよ。

 山形の郷土料理とかだったはず。

 作り方は凄くシンプル。

 茄子とキュウリ、好みの薬味をみじん切りにして、そこに醤油やみりん、お酢などの調味料を入れて、混ぜて冷やして完成。

 今回は顔のある部分だけ取り除いたマンドラゴラを各種使いました。

 薬味には生姜と大葉。で、その他にオリジナルチャートとして鰹節もぶち込んである。

 大体の物を入れても美味しいから、二日酔いの時とか、夏バテの時とか重宝するよ。

 あととろろ昆布は絶対に入れた方がいい。

 あの粘りが凄くいい仕事をする。


「というわけでいただきます」


 姉貴はまだまだぐーすかぴーなので、俺だけ先に朝ご飯。

 インスタント味噌汁も付けて、ご機嫌な朝飯だ。


「ああ、うめぇ」


 こう、身体に沁みこんでいく美味しさなんだよね、だしって。

 特にあく抜きとかしなかったけど、全然気にならんな。

 キュウリの歯ごたえや茄子の香りが、醤油やお酢、鰹節の旨味や酸味と一体となって口の中に広がっていくんだ。

 計算されたような味わいだけど、大体何入れてもこの味になるのがだしのいい所。

 

「粘りがあるのもポイントだよね」


 こう、飲み込む時に引っ掛かったりも無いから、食欲無くてもスルスルと入っていくんだよな。

 はぁ……やっぱ茄子美味いわ。

 今夜は茄子尽くしって決まってるけど、何作ろうか。

 ……焼きナスはまぁマストで、揚げびたしも欲しい。

 どうせなら和洋中で作るか。

 中華で茄子といえば麻婆茄子だな。

 あまり辛くなく、茄子に絡むうま味をメインに仕上げるか。

 洋は……茄子……何かあるか……?

 そういや、前に美味しそうなレシピを見たような……。

 アレなんだったっけ。


「茄子のグラタンみたいな料理だったはずだけど……」


 確かちゃんと名前があったんだよな。

 なんだっけな―……。

 スマホにそれらしい単語を入力して検索……。

 茄子、グラタン、海外っと――。


「これこれ! ムサカだムサカ!!」


 三分間待ってやる、で覚えてたんだった。

 あっちはムスカだけど。


「よし、レシピもばっちりだし、今夜はこれと麻婆茄子と焼きナスと揚げびたしだな」


 和洋中折衷というか、見境ない人みたいなメニューになっちゃったけど、しゃーなし。

 冷蔵庫に一杯茄子があるんだもん。

 これで少しは消化しちゃわないとね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] トキシラズ、なんかイメージ的には時間系魔法とか使いそう…ヘイスト、スロウ、ストップとか あと、美味しそう
[一言] きっと土属性を使って相手を檻に閉じ込める「ケイジ」って奴もおるんやでw
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