ドイツワインテイスト
エルフ三名の両手には、それぞれ赤と白のワインが入ったワイングラス。
姉貴の手には白ワインの入ったワイングラス。
ガブロさんの手にはドイツビール入りのジョッキがあって、俺の手にはノンアルコールのシャルドネ入りのコップがある。
まぁ、ノンアルコールのシャルドネって言えば聞こえはいいけど、ただの白ぶどうジュースなんですけどね。
「ドイツだと白が主流で、まぁ赤ももちろんあるけど、みたいな感じだったよ?」
「ドイツと聞くとビールしか思い浮かばないんだけど……」
「ワインも有名。何なら、デザートワインとかかなり有名なんじゃない?」
と言いつつグラスに鼻を近付けて香りを楽しみ。
軽く回した上で、ポテトサラダと共に一口。
「ん~! 美味い!」
「サラダに合う?」
「合う! ちょい辛口の白がマヨと相性最高。……んでも赤とも合いそう」
という姉貴を尻目に。
「このスープ素晴らしいですわ!! 赤とも白とも合い過ぎですの!!」
「赤と混ざり合った時の味の広がりと深みが感嘆の一言だ……」
「白とも合う。口の奥にスープの旨味を残し、手前をワインがフレッシュにさらっていくんだ!!」
「どの料理にもビールが合うぞい!!」
盛り上がってらっしゃる四人。
凄いね。何かを摘まんで赤と白とをテイストし、どっちが合うか議論を繰り広げてるよ。
「唐揚げにはやはり赤」
「野菜には白に決まっていますわ!」
「正味どちらでも合う。……と言うか凄いな、ここまで赤白両方に合う料理になるのか」
「口の中の油を炭酸で流すのが最高じゃぞい!!」
あぁ、ぶどうジュース美味しい。
「!? 翔! このスープマジで美味しいわね!?」
「玉ねぎの甘みがスープに溶け出てるし、その美味いスープをバゲットが吸ってるしで最高よね」
「それだけじゃなく、パセリの香りやそれらを閉じ込めるチーズ! そして仕上げのブラックペッパーが味を引き締めちょる。こりゃあちょっとやそっとの店で食える味じゃあ無いわい」
あ、どうもガブロさん。
ちょっと鼻の頭が赤くなってますよ?
「白菜のクリーム煮には白だ」
「これは流石に異論有りませんわ」
「ロゼがあれば合っていただろうな」
ワイン談義、楽しそうだなぁ。
というか、やっぱワインになるとこの人らの顔が真剣になるんだよな。
いや別に、普段がだらしない表情しているかと言われたらそうじゃないんだけど。
「む? カケル、この具材は?」
「ゴボウですか?」
ラベンドラさんが箸で持ってるのはゴボウの唐揚げ。
タルタルソースと共にどうぞ。
「なるほど、ゴボウか……」
「倭種ですか?」
「ですわね。見たことありませんでしたもの」
「木の根っこだと思ったぞ?」
「よく言われてるみたいですね」
あるよね、ゴボウに関する話。
外国人から見たら、木の根っこと思われちゃう、的なやつね。
いいから食べてみなってなる。迷わず食えよ。食えば分かるさ。
「む、やや固い食感だがしっかりと味が染みているな」
「噛むと繊維からジュワッと溢れてきますわね」
「繊維感が強いが、それが歯ごたえや食感に繋がる……」
「独特の旨味じゃな。他と比べられるようなもんじゃないわい」
というわけで初めてのゴボウの感想がこちらです。
美味しいよね、ゴボウ。
ごぼう天とかは割と有名だけど、ゴボウの唐揚げはどうなんだろ。
どこぞのファミレスには置いてあるっぽいけども。
「スッキリした白が合う」
「文句なく、酸味と合わさってのマリアージュが見事ですの」
「タルタルとの相性も抜群……これは流石に元の世界だとどれだけ探しても味わえなかった料理だろう」
「姉上殿! ビールのお代わりを!!」
みんなペース速いなぁ。
ガブロさん何本目だよ。
「あ、ごめん。ビール終わり」
「なん……じゃと……」
ビールの霊圧が……消えた……っ!?
大丈夫かガブロさん、絶望しきった顔してるけど……。
「仕方ないわい……ワインでも飲むぞい……」
おいおい、さっきまでのテンションどうしたんだよ。
落ち込み過ぎでしょ……。
「この白ワイン美味いぞーい!!」
おいおい! さっきまでのテンションどうしたぁっ!!
ちょっとでも可哀そうだなとか思った俺の気持ちを返せぇっ!!
「かなり上等なワインだよな」
「スッキリとした果汁感。さっぱりとした酸味。調和のとれたバランスのいい味で、ほとんどの料理にも合いますの」
「ガブロ、スープと一緒に飲んでみろ。飛ぶぞ」
飛ぶな。家の中で。
この人らが言うとマジで物理的に飛びかねんからな。
「むほほほ! 美味い! 美味い!!」
飛びはしなかったか。良かった良かった。
「この人参のお料理もとても凄いですわね! バターのコクと人参の甘さ。チーズの塩味の全てがワインに合いますわ!!」
とても凄いですねー。
実際作ってみて、驚く位美味しかったな。
ただ一つ言うなら、ラベンドラさんに潰してもらい過ぎた。
もう少し人参としての塊が残っていたら、もう少し違う味わいになっていたかもしれない。
「どの料理でもワインが進み、ワインを飲めばどの料理も進む!!」
「食事とは、楽しむ事と見つけたり」
「今更ですの? 美食という言葉をもう一度お考えなさいな」
「酒が飲める酒が飲める酒が飲めるぞ~い」
食事は進み、順調にワインと料理が減り続け。
そしてついに。
全員大満足になりながら、全て綺麗に完食したのだった。
……一品だけを残して。




