カッ! あるいはブチッ!
というわけで白焼きに付けて食べるようの調味料、こちらの準備に入りませう。
……と言っても、白焼きは塩とレモンで食って十分美味い。
まず前提としてね? その上で、わざわざ用意するほどの調味料の事なのかって事。
結論、知らん。
だってこれから作るのは、俺がそうして食べてみたいなって思った調味料だもん。
もっと具体的に言うと、漫画で読んだ食べ方なのよ。
「まずはネギをたっぷり切ります」
なんて言ってますけど、俺は一切腕を動かしてない。
ラベンドラさんにお願いしてるんだけど、ラベンドラさんも腕を動かしてない。
じゃあどうしてるかって言うと、当然のように包丁が浮いて一人で動いてネギをみじん切りにしてる。
言うに及ばず魔法である。魔法万歳。
「そしたら、ゴマ油でこのネギを炒めまして」
ここで取り出したるは、秘蔵のお味噌。
まぁ、スーパーで普通に買える赤味噌なんですけどね、初見さん。
「味噌、みりん、酒、砂糖、生姜を入れて混ぜ合わせたものを、炒めたネギに混ぜていきます」
そう! 作っているのはねぎ味噌である。
日本酒のツマミにも、ご飯の友にも、こうして白身魚に乗せる調味料にもなる万能調味料。
普段はメーカーが既に作って売ってるやつを買ってるけど、どうせなら自作したいよねって事で。
こうして作ってみました。
「水分が飛んだら鰹節を入れて混ぜたら完成です」
この鰹節がポイントね。
ネギと味噌の風味、そして焼かれたことによる香ばしさ。
そこに鰹節のうま味が入って来て、和食に合わないはずが無い調味料の完成完成。
――何を勘違いしてるんだ?
まだ俺の調味料作成フェイズは終了してないぜ!!
「新しいフライパンでみりんを煮切っていきます」
煮切るってアレね、アルコール分を飛ばす事ね。
細かく言うと違うかもだけど、おおよそ間違ってないはず。
というわけで煮切ったみりんがこちらになります。
そこに、
「酢、からしと入れまして」
取り出したるは、秘蔵のお味噌。
こちらは白味噌。もちろん、スーパーで買える奴である。
「先ほどの味噌と色が違うな」
「材料は同じなんですけどね。作り方に差があるんで、こうして色にも差があるんですよ」
「味の方の違いは?」
「赤い方が塩味が強いです。白い方は甘みが強いですね」
「そう言えば、これまでもスープがそのような感じの色の時がありましたわ」
なんて味噌談義をしてたら、リリウムさんが参戦。
そうだよ? 今までもみそ汁で違いがあったんだよ?
……合わせ味噌の時も多かったけどね。
というわけで白味噌を混ぜ合わせ、ねぎ味噌に対して酢味噌の完成。
「こちらも焼き上がった」
丁度白焼きも焼けたようなので、ねぎ味噌酢味噌をお皿に移し。
今日のお漬物は茄子のしば漬け。ちょっと食べたくなりまして。
「それじゃあ、みんなでいただきましょう!」
連日の鰻……ウマイウナギマガイ尽くしの晩御飯。
何なら朝もウマイウナギマガイだったし、ちょっと贅沢過ぎんか?
……今更か。というわけで着席。
「卵焼きがありますわね」
「中に『――』のかば焼きが入っている。卵焼きとはまた別の料理だ」
と、リリウムさんにうまきの説明をするラベンドラさん。
別ってわけではないでしょ。派生や亜種って感じ。
「卵の食感とタレの味、さらにはダシの風味と合わさってかなり美味い」
「これだけでも十分に料理の主役になれるポテンシャルがあるじゃろ」
で、食べた感想がこちらにござい。
まぁ、言わんとせんことは分かる。
だが、この白焼きを食べてもそんな事が言えるかな!?
「この『うざく』という料理、物凄くサッパリと食べられるな!!」
あ、ここで激熱のラベンドラさんカットイン。
信頼度は70%越え。
「強い酢の香りでタレと『――』の身の脂っぽさが吹き飛ばされてますわね」
「その酢の強さも咽るほどではない。と言うか、酢の強さをタレと『――』の脂が抑えとる印象すらあるぞい」
「その二つを絶妙に結ぶキュウリの存在を忘れるな。この食感あってこそ、その二つは輝くんだ」
……へー。
なんと言うか、馴染みが無さ過ぎて鰻と酢の物なんて合うの? と思ってたけどさ。
エルフ達がこう言ってるのを聞くと、意外と合うんじゃないかと思えちゃうね。
というわけでいただきます。
……、
「あ、美味い」
なんだろう、いい意味で裏切られた感じがする。
マジで物凄くサッパリ。鰻のかば焼きってイメージはどこかに吹き飛んじゃうねコレ。
キュウリのポリポリした食感と、ウマイウナギマガイのフワッとした食感。
冷たい酢の物と熱いウマイウナギマガイ、その両方が一緒に口に入る事で若干戸惑いはするけども。
口に入れた後は、そんなの気にならないくらい美味しい。
酢の尖った様な酸味が、うまい事タレで中和されてる感じ。
「こんな美味しいとは思わなかった」
思わず口に出ちゃったけど、ちょっと失礼か。
三重周辺の方々、ごめんなさい。
馴染みが無さ過ぎたんです……うざく。
「今日のスープは物凄く澄んだ味をしていますのね」
「見た目も味も、深く、清い」
「だのにタレの味に負けんのじゃから、不思議なもんじゃわい」
「落ち着くな」
俺がうざくを楽しんでる間に、四人はすまし汁すすって漬物齧って。
白焼きに向けてのクラウチングスタートの体勢に入ってやがった。
んじゃあ、本日のメインディッシュ、ウマイウナギマガイの白焼きねぎ味噌酢味噌添え。
――ヨーイ……ドン!!




