実は旬は秋から冬
ふぅ。
仕事終わりっと。
いやぁ、晩御飯に鰻――ウマイウナギマガイが待っていると思うと仕事が捗るンゴねぇ。
「かば焼きの方はもうガブロさんに任せちゃって、俺はデザートを作りますか」
バカデカアーモンドッポイミルクを使わなくちゃだし、たっぷり使ってデザートを作っていきませう。
というわけでお鍋にバカデカアーモンドッポイミルク、片栗粉、砂糖を入れて混ぜ合わせまして。
弱火にかけて、ずっと混ぜ続けてたら段々と粘りが出てくるので、鍋の底から煮立ってきたタイミングで火から降ろし。
冷水を張ったボウルにスプーンで一口大に掬って落とし、冷やし固めて完成。
ミルク餅、あるいは牛乳餅と呼ばれるデザートでござい。
冷えて固まったら冷水から引き上げて水気を切り、四人に提供する時はきな粉と黒蜜をまぶしてお出ししまする。
というわけでちょっと味見。
「すっげ。ぷるっぷる」
口当たりぷるっぷるで、なんて言うんだろう。
わらび餅だな、ほぼほぼ。
で、食感はモチモチしてるの。
バカデカアーモンドッポイミルクの特徴である、牛乳の臭さの無いすっきりした味わい。
それがまた優しい味のミルク餅にマッチしてますわね。
きな粉も黒蜜も無しで味見したけど、それでも全然美味しい。
というか、これあれだ。お土産とかで誰かに送っても、全然喜ばれるレベル。
あと、本当に癖が無いから何でも合いそう。
チョコは絶対に合う。ジャムとかのフルーツ系も合うだろうし……。
何ならピーナッツクリームすら合うぞ。
というかこのミルク餅のレシピ気に入ったわ。
材料少なくて割とすぐ出来て、しかも美味しい。
今後も普通に作るかもしれん。
「さて……ウマイウナギマガイに下ごしらえだけでもしておきますか」
いくら全部を四人に任せるとはいえ、時間が掛かることはやっとかなきゃね、って事で。
安定の塩を振り、身の中の余分な水分は出しまして。
「表面にお酒ーっと」
出てきた水分をキッチンペーパーで拭いたら、表面に日本酒を塗っていく。
本来はしなくてもいい作業なんだけどね。
ほら、関東と関西で違うらしいけど、鰻って焼く前に蒸したりするじゃない?
ただ、蒸すと身の脂がどうしても出ちゃうから、このウマイウナギマガイだとそれが出来なくてさ。
じゃあせめてもって事で、表面に酒を塗ってみた。
効果があるかは知らん。
基本料理なんてフィーリングなんでね。
「うし! んじゃあ四人が来るまで待機っと」
庭にバーベキューセットを用意しまして。
あとは四人が来るの待ち。
ちなみに今回は焼き鳥の時みたいに魔法で調理は絶対にさせない。
何故なら、鰻のかば焼きの美味しさは炭の香りがあってこそだと思っているからだ。
というわけで強い意志を持って、今日は炭火で焼いてもらう。
*
「じゃまするぞ」
「お待ちしてましたー」
……待った。
結構待った。
アレだな、デザートにそこまで時間掛からなかったし、普段よりも料理の材料にする事も無かったし。
暇な時間が長かったんだよな。
炊けたご飯のいい匂いが、すきっ腹を刺激してさ。
セルフ飯テロ状態でしたわ。
許さんからな。
「今日の料理は?」
「かば焼きと言って、前にタレだけ使った事があるんですけど――」
と、この後調理してもらう予定の料理を四人に説明。
なお、説明途中からガブロさんは腕まくりしてやる気満々。
んで、どんなもんかと串打ちの動画と、焼きの動画も視聴させまして、全員で庭へ。
「串はこう打っていたな」
「しっかり打たんと身がボロボロになるぞい」
なんて声をかけつつ、人数分の串打ちが終わり。
炭に火をつけ、焼いてもらいまして。
……? もちろん着火は魔法だよ? あるのに使わないなんてバカみたいじゃないか。
「香ばしい匂いですわね」
「まだ焼いとらんぞい」
「炭の香りだけで、という事だ」
まーた匂いで飯食おうとしてる。
……というか、思ったんだけど、串打ちするのって焼くと皮が縮んで身が丸くなるからだよね?
でも、ウマイウナギマガイの皮は綺麗に剥がれちゃってるから、ひょっとしたら要らない工程だった説ある?
……ま、いいか。雰囲気雰囲気。
「むぉ!? いい匂いじゃあ!!」
で、そのウマイウナギマガイを網に乗せたら、ふわりと香るは塗ったお酒の匂い。
そしてその後に、魚が焼ける匂いが漂ってくる。
やっぱ蛇じゃなくて魚じゃね? 匂い的にも。
「脂が滴って……勿体ない」
「でも、言ってしまえば余分な脂とも言えません事?」
「こうして焼いた後に残った脂が、一番美味しい脂の比率という事か」
とかなんとかエルフ三人ギャラリーが言ってたら、ガブロさんがひっくり返しまして。
表面に浮き出てた脂が火に入って、一瞬高い火柱が形成。
「うわっ!?」
俺は思わず叫んじゃったけど、他はそんな事は無くてさ。
ちょっとだけ恥ずかしい。
まぁ、ダンジョンとかで、火柱とか珍しくないんだろうなぁって。
「カケル、タレを」
「はいはい」
で、ガブロさん判断で焼けたらしく、タレを取ってくれとの事なので手渡しまして。
タレを塗って、裏返して、タレ塗って、裏返して、タレ塗って、とかなーり丹念にタレを塗りましたところ。
分かる? 醤油が焦げるあの匂い。
砂糖も焦げるあの匂い。ていうか、鰻屋の前を通った時に香る、あの空腹を呼び起こすあの匂い。
もう凄かった。
周囲のご近所さん飯テロスマン、って感じだった。
「この香りは心躍るな」
「何度嗅いでも食欲を刺激する匂いだ」
「そ、そろそろ我慢の限界ですわよ?」
「よし! 焼けたぞい!!」
というわけで、そろそろ焼き上がると思って丼にご飯を次いで戻ってきた次第。
焼けたウマイウナギマガイは直接ご飯の上に乗せ、ここに追いタレをかけて完成!!
ウマイウナギマガイ丼!! マツタケの味のお吸い物、キュウリの浅漬けを添えて。
んで、俺も我慢の限界じゃい!!
「「いただきます!」」




