餃子!!米!!酒!!
焼きたての餃子。
当然熱い。
中から溢れてくる肉汁。
これも当然熱い。
それらを覚悟し、餃子を噛んだはずなのに……。
「うわっぷ!?」
まず、溢れる肉汁がたっぷりと出て来て、思わぬ不意打ちを食らいまして。
その肉汁を吸い上げたら、一気に来る辛み!
というか、肉汁という脂に乗った辛みが口内に広がるまでの時間が早い。
あっという間に口の中がビリビリし始めてきてさ。
しかも、肉汁は熱いもんだからそれがさらに口内を刺激してさ。
もう大変。ワイバーン肉のうま味と肉汁のうま味。
そこに、味付けの辛みとかが合わさって口の中は美味しさの大渋滞。
ただ、当然辛いし熱いしで、口の中の皮がベロベロに剥けちゃうんじゃないかと思っちゃう。
「くぉ~~っ!! 辛い!! 辛いが美味い!!」
「軟骨の食感がまた素晴らしい。いいアクセントだ」
「皮を破った瞬間の肉汁がたまりませんわ!」
「米が進む!! 米が進む!!」
四人にも大好評っと。
でもあれだ。流石に辛すぎる……。
飲み物、飲み物。
「む? カケル。何を作っとるんじゃい?」
「ハイボールですよ。飲みます?」
「見たところ酒じゃろ? もちろん飲むぞい!」
で、餃子に合わせるならやっぱり酒だよね? って事で、ハイボールを作ってたら。
当然の如くガブロさんに見つかりまして。
まぁ、良いか、と振舞う事に。
キンッキンに冷やしたグラスと、キンッキンに冷やしたウイスキー。
本日はジャックなダニエルを使います。
たっぷりの氷を入れ、ウイスキーを注ぎ。
くし切りのレモンを先に入れて、炭酸水を静かに注ぐ。
軽く二回ほどかき混ぜて、完成!
……なお、俺のハイボールは限りなく薄く作ってあり。
ウイスキーの香りがほんのり香るくらいの濃度である。
お酒、弱いし。
その分ガブロさんにはしっかり濃いめに作ってあげてる。
「はいどうぞ」
「すまんな、頂くぞい」
というわけでガブロさん初ハイボール。
その感想は……?
「む! スッキリしてかなり飲みやすい!! じゃが、しっかりと酒の香りは感じるぞい!!」
「口にあったようで」
「鼻の奥で膨らむ芳醇な香りと甘みがあるな。……かと言って料理を邪魔するほどじゃあない。あとは……酒じゃからと言っても尖った風味やらも無いな。かなりまろやかじゃわい」
以上、ガブロさんによるジャックなダニエルのハイボールレビューでした。
ウイスキー……一時期ハイボールにハマっててさ。
手ごろな値段の奴には大体手を出したんだけど、俺はジャックなダニエルが一番好みだったかなぁ。
飲みやすいのは圧倒的に角だったけど。
あの風味とか、甘みのある香りが俺の心にストライクだったのよな、ジャックなダニエル。
「そこまでアルコールは強くないのでしょうか?」
「濃さを自分で調節できますからね。俺なんて、ほとんどお酒入ってない割り方ですし」
「ガブロがあそこまで酒を褒めるのも珍しい。……一杯だけ私達にも作ってもらえないだろうか?」
「お安い御用です。俺と同じ濃さでいいです?」
で、まさかのエルフ達もハイボールに参戦。
ガブロさん……現代の酒は軒並み誉めてたと思うんだけど。
まぁ、いいや。
というわけで三人にも俺と同じ配合で作ってあげて、おあがりよっと。
「……美味い」
「スッキリしてて飲みやすいですわね」
「酒の香りは確かにするが、ここまで薄めれば飲めないと言うほどでもない」
割と好評だった。配合比率俺のハイボール。
多分1:20くらいでほとんど酒入ってないんだけどな……。
「餃子の肉汁と辛さで火照った口内に流し込むハイボールが最高じゃわい!!」
「脂っぽさを流しつつ、その風味で口内をスッキリさせる!」
「柑橘の風味もポイントですわ! これがより口内をリフレッシュするのに役立っていますの!」
「何よりこの酒の風味がいい。物凄く豊潤で、芳しい」
ハイボールは果たして食事と一緒に飲む酒なのかって問題はあると思うけどね。
ちなみに俺は甘いチューハイだろうが飯と一緒に飲めちゃう派。
同僚に言ったら物凄い顔をされた。
お前だって食事でコーラとか一緒に飲む癖に。
「餃子と酒のループに箸が止まらんぞい!!」
「普通の餃子もとても美味しかったのですけれど、こうして辛みが加わってもまた美味しいのですわね!!」
「この味のままスープを作っても美味そうだ。もちろん、激辛のな」
「美味いだろうが再現は難しいぞ? そもそも、この香辛料の暴力のような料理は必要な材料が高価すぎる」
とか言ってみんなバクバク食べてて凄いなぁって感じ。
俺? 三個目を食べたあたりから舌が痛くなってきちゃっててさ。
舌を噛んで誤魔化したり、ハイボールをちょっと長めに口に留めて冷やしたりとかしてるんだけど。
餃子を食べるたびに新しい熱と刺激が押し寄せてくるわけで、結構降参気味ではある。
ただ、作った以上は食べるし、辛すぎるってだけで味は美味しいんだよなぁ。
あと、軟骨入れたのはマジで正解。
あのコリッとした食感から続く肉汁の波は、それまでの餃子の常識をひっくり返したね。
……ワイバーンの肉使ってる時点で常識もクソも無いけど。
「スープで一旦落ち着いて、そこから餃子と掻っ込む米が美味いわい」
「飲みやすくって美味しいお酒。こういうのもありますのね」
「これも向こうに取り入れたら人気が出そうだがな」
「……ドワーフの反発に合いそうな気がするがな。酒を薄めるとは言語道断!! とかで」
うわぁ……言いそう。
向こうの世界のドワーフたちを知らんけど、俺の頭の中のドワーフなら絶対に言うわ。
「む、カケル。あまり箸が進んでいないようだが……?」
「あ、気にしないで食べちゃってていいですよ。ゆっくりいただいてるだけなんで」
「でも……そうするとほとんど私達が食べてしまう事になりますわよ?」
……今更では?
「構いませんよ。思う存分食べちゃってください」
「すまない、恩に着る」
「遠慮なくいただくぞーい!」
「待てガブロ! お前ばかり取り過ぎだ!! 少しは俺たちにも――」
とまぁこんな感じで、焼き上がった餃子を巡ってプチ争いが起こったり起こらなかったり。
ハイボールもその内自分たちで好みの配合を見つけて自分で作り始めたりで、最終的に全然手がかからなくなりまして。
餃子が無くなると同時に、すっかり満足そうにハイボールを飲み干した四人は。
「じゃあ、デザート取ってきますね?」
という、俺の言葉にカッと目を見開くのだった。
……もしかして、忘れてた?




