たまに悪い顔する
更新止まることはないんですけど偏頭痛でぶっ倒れたので、皆様体調にはお気をつけ下さい……
歩くだけで頭の中がガンガンなり響くとかいう地獄やったンゴ……
「ほぅ? ケーキか!!」
冷蔵庫から既に切り分けた後のレモンスフレチーズケーキを取り出せば、真っ先にマジャリスさんが何なのかを看破。
早えって。
「この間スフレオムレツって作ったじゃないですか?」
「あのフワフワのやつだな」
「あれも美味しかったですわね! ラベンドラの再現したものも、とても美味しかったですわ!!」
「……なるほど! つまりこのケーキもあのフワフワなオムレツと似たような作り方をしているのだな!?」
おっそろしいくらいにマジャリスさんの勘が冴えてる。
この人ひょっとしたら甘味に対して全ステータスにバフかかる感じか?
「まぁ、大体そうです」
「食べよう!! 今すぐ食べよう!!」
怖いよぅ……。
目をキラッキラさせながら俺がテーブルに置いたレモンスフレチーズケーキをどれがいいかと物色してるの怖いよぅ……。
「どれも変わらんじゃろ」
「否! カケルの腕前は信用しているが、それはそれ。目算で切り分けたのなら確実に他よりも大きいケーキが存在する!!」
「これですわね」
なお、狙っていたと思われる他より大きく切れちゃったケーキはリリウムさんの手に渡った模様。
マジャリスさん、強く生きろ。
「別にここで量を食べなくとも、再現さえしてしまえばいいのだろう?」
ほら、ラベンドラさんも頼もしい事言ってますし。
「それはそれ! 俺は今! 量を食べたいんだ!!」
「他より若干大きいだけじゃろうが」
もう何と言うか、駄々こねてるようにしか見えん。
とりあえず、こちらの世界の紅茶を淹れましたよっと。
本日の茶葉はアッサムでござい。
ミルクティーにするのがいいらしいね。
……早速、このバカデカアーモンドッポイミルクを使ってみよう。
「ラベンドラさん、こいつの中身ってどうやって取り出すんです?」
「先端を折るといい。口も小さく、折った先端を強く押し付ければ再びくっ付く。大体二か月はそのまま保存がきく」
うわぁ、すっごく便利。
折って押し付けてで開閉できるのか。
異世界の植物って不思議だなぁ……。
んじゃあまぁ折ってみますか。
――んぎぎぎぎ……。
?? 折れんが?
「貸してみろ。最初だけ固いんだ」
というわけでラベンドラさんに渡すと、こう、一瞬でペキッって。
目薬の入ってるボトル? くらいの大きさの先端が取れ、中身が覗き込めるように。
全面乳白色だぁ……。
あと、香りはしないな。てっきり牛乳臭いと思ったんだけど。
「煮沸などの消毒も必要ない。そのまま飲める」
との事なので、全員分のアッサムティーの中に投入!
大きさが大きさだけに、入り過ぎないよう細心の注意を払いました。
「準備が出来たようじゃな」
「マジャリスが待ちかねてますわよ?」
「べ、別に……! 俺は――」
「お待たせしました、それじゃあ食べましょう!」
というわけで、萎んでベレー帽になったレモンスフレチーズケーキ、実食の時!!
果たしてそのお味は……?
「むふー-っ!!」
口一杯に頬張ったマジャリスさんの荒い鼻息が感想戦開始の合図。
「フワフワとした食感と、口に淹れた後のシュワっと溶けるような感覚。そこからくる柑橘系の爽やかな酸味がとても心地いい」
「濃厚なチーズのコクが、柑橘系の風味のおかげでさっぱりと食べられるのもポイント高いですわ!」
「そんな食感のケーキを、このザクザク感のビスケットを土台にして作る発想も凄いわい」
まぁ、知ってたけど好評の嵐。
たまんねぇぜ。
「紅茶も美味い……かなり美味い」
「芳醇な香りと深いコクが、『――』の実によって洗練されてますわね」
「飲みやすい上に後を引かない、だからケーキの邪魔を一切せんぞい」
「……この世界でスイーツだけを食っていたい……」
紅茶も好評――ん? 今マジャリスさん変な事口走らなかったか?
まぁ、気にしない方向で紅茶を一口。
……あ、美味い。
紅茶の香りが凄く立ってて、コクが深い。
アッサムってそういう銘柄らしく、だからこそミルクティーにして飲むのが一般らしいんだけど、このバカデカアーモンドッポイミルクにも合う。
こう、牧場で飲むフレッシュな牛乳のような爽やかさと、砂糖を入れてないのにじんわりと口の中に広がる優しい甘さ。
決して口の中でべたつくようなことは無くて、スッと飲める感じ。
これがケーキのレモンの風味やチーズのコクと合う。
あとビスケットがマジで最高。
ざくざくした食感もだけど、ココナッツの風味もかなりいい感じ。
「ではこの世界に置いて行きましょうか? もちろん、働かざるもの食うべからずなので、私たちが手に入れた食材は食べさせませんけど」
「この世界に残るなら装備も要らないだろう? 全て回収させてもらうぞ?」
「地図士が居なくなるのは残念じゃが……まぁ、仕方ないわい」
「待て! 冗談だ! 言葉の綾だ!!」
こんな会話も、仲が良くないと出来ないよなぁ。
というか、他三人がマジャリスさんの扱いに慣れ過ぎてる……。
「カケル、この土台となっている部分だが……」
「ビスケットっていう焼き菓子ですね。そちらのレシピも必要です?」
「頼む。菓子は貴族が集まる時に必須とも言える出し物でな。新しいレシピはかなり高値で取引されるんだ」
「へー、お菓子のレシピなんかが……」
「それは違いますわ。貴族視点で考えた時、他の誰も知らない全く新しいレシピを他の貴族に振舞う。この意味がとてつもなく大きくなりますの」
「自分だけの情報源がある、と暗に他の貴族に権力を示せるというわけだな」
「未知かつ美味しく、手軽に食べられて紅茶に合う。この条件を満たす菓子のレシピは、どの貴族も喉から手が出るほど欲しいだろうな」
こう、貴族の生活ってさ、イメージだと優雅なものだけど……。
こうして聞くと、結構ドロドロしてるよな。
というか見えない手札で相手をぶん殴るカードゲーム的な?
俺なら速攻降参してるよ。
……ん? 待てよ?
紅茶に合って、手軽に食べられて、美味しければいいんでしょ?
「ラベンドラさん、確認なんですけど」
「なんだ?」
「チョコレートってご存じです?」
「…………初めて聞いたな」
これは……もしかして?
異世界人に初めてチョコレートを食べさせるチャンスなのでは?
……見たい。
一切知識がない状態でチョコレートを食べた時の反応が見たい……。
「いくつかあるんで、味見してみてください」
というわけで、冷蔵庫に入れてた真っ赤なパッケージに企業名の書かれた、日本で一番見るであろうミルクチョコレートの板チョコを人数分。
それぞれの目の前に置きまして。
「それがチョコレートです。美味しいですよ?」
きっと俺は、この時不気味な笑みを浮かべてたに違いない。
なぜなら、四人が、絶対にハマるという自信がありながら。
ハマっても、元の世界では存在自体が認知されていないものを食べさせようと促したのだから。




