追加食材
「カケル! 聞いてくれ!!」
俺の家に来るなり、ラベンドラさんがものすごい勢いで近寄ってきて。
何事かと身構えると、その手には包丁。
「ひぃっ!?」
やられる!? そう思って思わず顔を腕で覆い……。
「カケルの教えてくれた製法で包丁を作らせた!! この性能が凄いんだ!!」
そのまま、俺に突き立てられることのなかった包丁は、俺の目の前でフラフラと左右に揺れてる。
マジで刺されると思った……。
「弟に作らせたんじゃが、性能がバグじゃな」
「肉も骨も筋も、一切抵抗なく切れる! 固かろうが柔らかろうがお構いなしだ!!」
「この世界の製法はとんでもないぞい」
どうやら、俺が見せた日本刀の作り方的な動画。
あれで学びを得たガブロさんが、鍛冶をやってる弟さんに日本刀の技術を伝えたらしい。
最初は全然再現出来なかったそうだが、そこはドワーフ。
短時間で作れるようになっちゃったとか。
「試しにと作った刀はわしらが持つことになったが、今国王に献上するための一振りを鋭意製作中じゃ」
「そんなに凄かったんですか?」
「単純に、武器種が一つ増えたからな」
「冒険者にとっては革命ですわよ?」
「解体士ギルドもこの製法の解体用ナイフを欲しがるじゃろうし、調理士ギルドも包丁を狙うじゃろうな」
なんか、興味本位で伝えてみた日本刀がとんでもない方向に行ってる気がする……。
まぁ、いいか。
きっとその内誰かが作ってたよ、うん。
俺はそれを少しだけ早めただけ、いいね?
「それで!? 今日の料理は何だ!? 早くこの包丁を振るいたくてうずうずしてるのだ!!」
「あ、今日のメニューは包丁をほとんど使いませんよ?」
瞬間、膝から崩れ落ちるラベンドラさん。
どんだけ包丁を使いたかったんだよ……。
アレだな、アニメとかでよくある、部屋の電気が消えて周囲は真っ暗。
崩れ落ちたラベンドラさんにだけ当たるよう、謎の光が真上から降り注いでる感じ。
「気を取り直せラベンドラ」
「何も切るだけが料理ではないのでしょう?」
「新しい包丁を試したいのは分かるが、あまりカケルを困らすでない」
「そ、そうだな」
とまぁこんな感じで声をかけられて復活。
こうしてみるとラベンドラさんも面白いな。
「じゃあ、まずはパスタを茹でていきましょう」
「お、今日はパスタか」
「久しぶりですわね」
と、席に付いたガブロさんとリリウムさんがパスタに反応。
前にやったのはエビダトオモワレルモノクリームパスタだったか。
あれ滅茶苦茶美味しかったんだよな。
また食べてぇ……。
「で、茹でてる間にソースを作ります」
カルボナーラって一口に言っても、色んな作り方があるわけで。
本日は俺流のカルボナーラで行かせていただきます。
「まずは、オリーブオイルとニンニクを炒めます」
まずはパスタソースの定番、オリーブオイルにニンニクの香りをたっぷりと移す作業から。
ニンニクはチューブじゃなく、しっかり国産のやつを買って来た。
……高かった。
それをスライスしたやつをじっくり炒めてもらい。
香りが出たら、そこに四角く切ったベーコンを投入。
薄切りにするより、こうして四角柱になるよう切るのが俺流。
……お店とかでこうやって切られてたりするから、少しでもお店っぽい見た目になるように、ね。
「ベーコンも炒め終わったら、ここに生クリームと牛乳を入れ、塩コショウで味を付けます」
ラベンドラさんに指示を出すだけだし、俺はその間にこの後追加するデカクカタイタマゴのお準備。
卵黄だけのデカクカタイタマゴに、買って来たパルメザンチーズをおろし金でガシガシ削り。
それらを混ぜ合わせてはい完成。
ラベンドラさんに任せてるソースの方にも、ちょいと失礼してガシガシ削り入れ。
「そろそろですかね」
指定された時間より早めに麺を引き上げ、しっかりと水を切ってソースの中へ。
本来は火を止めるんだけど、異世界卵黄なので、今回だけは火を止めずにこれもソースの中へ。
あとは麺に絡む様にしっかりと混ぜ合わせて貰えば……完成。
トングで高い所から回転させて皿に盛り付け、残ったソースを均等に全員分にかけてあげれば。
まるでお店で頼んだようなカルボナーラの完成です。
――僕はここに追いブラぺ。
更には追いパルメザンチーズ。
おほほ。ビジュアルが悪魔的ですわぞ~。
「見た目が……ズルい」
「匂いも素晴らしいですわ」
調理に参加してないエルフの二人の言葉が耳に心地いいですわね~。
「ガブロ」
「なんじゃい」
「『――』を出せ」
無視だ無視!!
どうせろくな事話してない。
無視無視。
「カケル」
「はひ」
逃げれませんでした。
クソッ!!
「今日の料理にも入っていた白い液体があるだろう?」
「牛乳ですか?」
「それだ。我々の世界ではそれがこれに置き換わっている」
そう言ってラベンドラさんが見せてきたのは……。
木の実? アーモンドみたいな形状で、見た目は青。デカいけど。
青というか、群青色っぽいな。そんな事よりデカいな?
とても食用には見えない……。デカいし。
「中に果汁が詰まっていてな。その果汁が、先程の白い液体に酷似している」
ははーん?
ココナッツミルク的な感じなのか。
にしても、異世界牛乳か……。
またデザート作りが捗るじゃん。
「あ、ガブロさん」
「なんじゃい」
「卵、使い切ったんで殻の回収をお願いします」
「お、任せとけ」
あっぶね、忘れる所だった。
ゴミは持ち帰って貰わなくちゃ。
「いつまで待たせる!?」
「早く食べましょう?」
食いしん坊の腹ペコエルフ、ご飯を前にお預け中。
これ以上待たせると何されるか分からんし、慌ててフォークとスプーンを用意しまして。
「あ、一応聞いとくんですけど」
「? なんだ?」
これだけは聞きたい、と本能が叫んだ疑問をぶつけて、食事にしましょ。
「中に虫とかいませんよね?」




