焼きワイバーン串
やや小ぶりに成形した、ワイバーンの肉。
それが焼き上がり、肉汁という名の汗を滴らせ。
塩という化粧を施し、俺の前にある。
……滅茶苦茶美味そう。
「では……」
意を決し、それを口の中に放り込み。
串から引き抜いて、一噛み、二噛み。
「すっゲぇうめぇ」
その味は、イントネーションが狂う位には美味しかった。
「美味いな」
「表面はパリッとしているのに、中からジュワッと肉汁が溢れてきますわ!」
「サイズがやや不満ではあるが、それを差し置いてもかなり美味い」
「酒が進む味じゃな!!」
四人の反応もかなりいい感じ。
いやでもマジで美味いよ。
ラベンドラさんの言う通り、表面はパリッとというか、カリっとしててさ。
そこを歯で突き破ると、一気にジュワッと肉汁が押し寄せる。
感覚的に餃子が近いかもね。皮を破ったら肉汁が出てくる感じ。
あと、肉自体のうま味も凄い。
茹でた時より濃くなってる感じがする。
「こっちも焼けたぞい!」
というわけで第二弾はねぎま。
ワイバーン肉とねぎを刺しただけだけど、それでも焼き鳥の人気メニューには絶対に入る代物だし。
……どうせなら、
「こっちはタレでいきますか」
「任せよう」
「賛成ですわ」
タレも試してみようよって事で、焼き上がったねぎまにタレをスプーンで垂らしまして。
「肉汁とタレが光を反射していて美しい……」
「輝いて見えますわね」
なんて言うマジャリスさんとリリウムさんを無視し、ラベンドラさんがパクリ。
「む! これは美味い!! ワイバーンの肉に負けないタレの味と風味が最高だ!!」
「なんじゃと!? ……むほほほ、こりゃあ最高じゃわい!」
ラベンドラさんを追いかけたガブロさんの感想も聞き、ごくりと喉を鳴らすエルフ両名。
俺もいただきます。
「あ、一気に味変わる!」
塩で食べた時と一変。
タレをかけるとそれまで前面に出て来てたうま味が急に後ろに引っ込むじゃん。
最初にタレの風味や甘みがやってきてさ、その後から、そろそろいっすか? みたいな感じで伺いながらワイバーン肉の味が来る感じ。
で、タレに引き出されて肉の甘みも引き立つね。
物凄い美味い鶏肉ってイメージだったのが、タレをかけた時は無くなるわ。
牛肉のうま味に近くなるな。
「間に挟まったネギが素晴らしい働きをしているぞ」
「タレとの相性も最高で、定番というのも頷けますわ!」
「タレも塩も米が進む!!」
「ワイバーン肉は美味いというのは知っとったが、こうして食うとまた違った美味さを見つけられるのぅ」
いやぁ、二串しか食べてないのに、もう満足感が凄い。
恐るべしワイバーン。
「ところでカケル、この部位なのだが……」
「ああ、軟骨ですね。美味しいですよね」
「美味しい……のか?」
「普通は捨てる部位ですわよ?」
それを捨てるなんてとんでもない。
日本国民から責められるぞ。
「俺らの国じゃあ普通に食べます。というか、人気部位ですよ?」
苦手な人ももちろんいる。
でも、好きな人はとことん好き。そんな部位だよね、軟骨って。
「そ、そうなのか……」
「カケル、この部位は?」
「皮ですか?」
「皮……? ああ、内皮が残っていたのか」
「そう言えば外皮のみを解体した気がするのぅ」
?? 何の話だ?
皮は皮でしょ。
「外皮と内皮って何か違うんです?」
「装備などに用いられるのが外皮。これは、魔物の特性を持っている皮で、耐性などが強い」
「内皮というのは、その外皮と肉の間にある膜の事を指しているのですわ」
「腕が悪い解体士だと、この内皮ごと外皮を解体してしまう。で、加工の邪魔だからと基本は捨てられる部位だ」
それを捨てるなんて(略)。
ていう事は何か?
ガブロさんレベルが解体しないと手に入らない部位なの?
だから食べたことがない……?
「食べないんです?」
「思いもしなかったな」
「ワイバーン自体が流通の多い素材ではありませんし」
「そもそも解体士ギルドも食べられると判断していないんじゃないか?」
「聞いた事ないわい」
嘘だろ。
悲報:異世界人、皮の美味さを知らない。
可哀そうが過ぎる。
「じゃあ次は皮を焼いてみましょうよ」
「いいですわね! 味はタレですの? それとも塩?」
「どれでも美味しいと思いますけど、俺はタレですかね」
「私は塩だ」
「悩むが……タレだな」
「わしは塩にするぞい」
「では私も塩で」
というわけで異世界人に初めて皮串を食べさせようのコーナー!
焼けるまでしばし待機……の間に。
「合間にはこれでもかじりましょうか」
「ほぉ!」
「まぁ!!」
持って来たのはキンッキンに冷やしたトマトとキュウリ。
もちろん丸のままでござい。
「ガブロさんにはこちらもありますよ」
「おお!! 命の水じゃわい!!」
で、ガブロさんには缶ビール。
6缶1セットになってるやつ。
もちろんキンッキンに冷えてやがるやつ。
今日はガブロさんが焼いてくれるみたいだからね、これ位はしてあげよう。
「冷やしたトマトが美味い」
「キュウリも美味しいですわよ?」
「やはり向こうの世界よりも野菜が美味いな」
「ビールが美味いぞ~い」
なんて言ってたら、焼き上がりましたワイバーンの内皮。
これより、実食を開始する!!




