寿司屋定番商品
というわけでラベンドラさん達が家に来る少し前。
「やっぱり寿司と言えば茶碗蒸しだよね」
俺は茶碗蒸しを作ってまして。
デカクカタイタマゴを人数分掬い、そこに3倍希釈のめんつゆを、ちゃんと3倍に薄めた奴を入れて、レッツら混ぜ混ぜ。
ついでに日本酒も入れまして、この混ぜた卵液を漉します、と。
……え? 今回は黄金だしを取らないのかって?
――面倒じゃん? いや、確かに美味しいよ?
でも、鰹節削るのも楽じゃないし、昆布も出し殻どうするか問題とかあるし。
そのまま捨てるのも勿体ないし、かといって今日の手巻き寿司に使わないし。
みそ汁もインスタントだし、いいかなって。
ちなみにみそ汁はあさりの味噌汁の予定。
とことん魚介で攻めますわ。
「甘エビ、かまぼこっと」
で、茶碗蒸しの具として欠かせない銀杏なんだけど……。
こう、量が……ね。
どうしても店で買うと、ある程度の量が入ってるじゃん?
でも、茶碗蒸しに使う量なんてたかが知れてるじゃん?
泣く泣く見送ったよね。
ちゃうねん、茶碗蒸しに銀杏は欲しいけど他に銀杏を活用できる食べ方を知らんかってん。
というわけで甘えび、かまぼこ、シイタケ以外の具は無し。
使わなかったシイタケはバター焼きで美味しくいただきます。
「後は蒸せば完成っと」
とまぁ、こんな感じで用意してたのに、すっかり忘れてたわけだ。
というわけで、四人が手巻き寿司の感想を言ってるのを聞きながら蒸し器から取り出して、ついでにみそ汁も用意したわけですよ。
「プリッとした歯ごたえと、ねっとりとしたうま味が口の中に広がる!!」
マジャリスさんの甘えび手巻きの感想か。
美味いよねぇ。俺は甘えびと米が置かれてたら、無限に甘えび丼を作って食ってる。
大量の甘えびをこれでもかと盛ってな、わさび醤油を回しかけて掻っ込むんだ……。
これ、夢。俺の。
「!! 中から濃厚なうま味と海の香りが口一杯に溢れる!!」
ラベンドラさんはいくらだったな。
いくらも美味い。これも米と一緒に丼……。
いや、何だったらいくらだけでも十分だな。
ネットで有名な、巨大タッパに入ったイクラをデカいスプーンで食いながらウォッカ飲んでるロシア人の画像、アレクッソ羨ましい。
ウォッカは要らんけどあの量のイクラはマジで欲しい。
あれも夢、俺の。
「不思議な食感だがこれも美味いぞい。味が濃く、それでいてとろけるようじゃわい!!」
ガブロさんはウニだったな。
その見た目から外国の人からは敬遠されがちだけど、俺は勿体ないと思うね。
こんな美味い物、知らないのは可哀そうだよ。
……まぁ、当たり外れが激し過ぎて、そのハズレを引いちゃった場合、もういいやってなっちゃうから、日本人でも割と好き嫌いは別れると思うけど。
悪い事は言わない、ウニだけはしっかりしたものを買いなさい。
のちの人生に大きく関わるから。
「生魚がこんなに美味しいものだとは知りませんでしたわ!!」
で、最後が中トロを食べたリリウムさん、と。
ちなみに俺はマグロの部位では中トロが一番好きかな。
赤身のうま味と、トロの脂を両方味わえる部位だから。
大トロまでいくとね、もうキツイ年齢に入っちゃったんですよ……。
赤身は赤身で大好きだけどね。
子供のころに某テレビでやってた、マグロ一匹を食べ終えるって企画、滅茶苦茶やりたかったもん。
マジで羨ましかった。
「生臭さなんて一切無く、どころか脂のさっぱりした甘みが口の中で広がって!!」
あ、リリウムさんまだ終わってなかった。
だが分かるぜ、その気持ち。
「そして身のうま味がどっしりと舌の上に乗っかってきますの!! とても美味しいですわ!!」
またマグロの身が凄いんだ。
マジでいくらしたんだろう、この海鮮ボックス。
「というわけでごめんなさい。出すの遅れました」
で、ここで俺がようやく茶碗蒸しとみそ汁を全員に提供。
そしたらみんな、茶碗蒸しを見てキョトンとしてさ。
「カケル、プリンはまだ早いんじゃないか?」
だってさ。
違うから、プリンじゃないから。
「これ、プリンじゃなくて、茶碗蒸しっていう料理になります」
「デザートじゃ……ない?」
「試しに一口どうぞ」
論より証拠、まずは一口、と勧めてみる。
すると、
「お、舌触りがかなり滑らかだ」
「ダシの風味が広がりますわ~!!」
「なるほど。生の魚はどうしても冷たくなる。それを解消するための温かい料理か」
「滅茶苦茶に美味いぞい!」
だそうです。
で、ラベンドラさんの言葉に思わずなるほど、って思っちゃった。
もしかして寿司屋に茶碗蒸しがあるのってそういう理由?
寿司で冷えた体を温めるためなの?
「みそ汁も、いつもと違ってダシが利いてるな」
「いつもよりも深みというか、鼻に抜ける風味が強いですわね」
「何かいつもの味噌汁に追加されているような感じだ」
「酒が進みそうな味じゃあ」
「今回は貝の出汁が入ったみそ汁にしてみました」
で、当然あさりの味噌汁も好印象。
俺が思うあさりの味噌汁のインスタントのいい所は、あさりの身が入ってるけどジャリッっていわないところだと思ってる。
食べてる途中にあの音が口の中でなると、途端に食べる気失せるんだよね。
それがインスタントだと起こらないから、好き。
全世界のあさりは砂を殻の中に入れるな。
マジで。人間からのお願いだ。
「さて、次はどれを巻こうかの」
「私はこの赤身にする」
「この野菜たちも挟んでみるべきだ」
「私はこの白い身の魚にしますわ!」
と、四人が楽しそうに次何巻くか考えてる様子を楽しみながら。
「俺は中トロとキュウリを巻きます」
俺もその輪の中に加わるのだった。




