異世界卵事情
「お!? 卵の味が濃い」
まずは卵自体の味を確かめるためにオムレツだけを一口。
すると、濃厚な卵の味が口いっぱいに広がって。
味は濃いけど匂いはそこまできつくないな。
意外に思うかもだけど、卵って独特の匂いがあってさ。
卵が苦手って人の中には、その匂いが無理って人も存在する。
でもこの卵、その卵の匂いがほとんどしない。
注意深く口の中の空気を鼻に抜けさせると僅かに感じるけど、つまりはその程度。
これなら、卵が苦手って人でも食べられるんじゃないかな。
「濃厚なソースが麺に絡んで美味しいですわ~」
「そのソースに負けないオムレツの味も見事だぞ」
「卵自体も美味いのに、そこに美味い麺も追加されるのはたまらんわい」
「たこ焼きにかかっていたソースと似た味だ。……だが、完全に同じというわけではないな」
お、ラベンドラさん鋭いねぇ。
確かにこの焼きそばに使われているソースは、たこ焼きの時に使ったソースと同じメーカーのもの。
でも、同じでいいのにと思いはするけど、メーカーはたこ焼き用と焼きそば用とで違うソースを使ってる。
そこがメーカーのこだわりってわけ。
「麺だけじゃなく、肉や野菜にもかなり合う」
「卵にすら合うのだから、このソースはもはや万能じゃわい」
「少しですけど、こう味が濃いとご飯が欲しくなりますわね」
「流石にそれは……」
焼きそばをおかずに……というのは流石に。
日本人でも少数派のやる事では?
大体炭水化物に炭水化物合わせちゃって……と思ったけど、焼きそばパンはもろ炭水化物の合体物だしなぁ。
しかも大阪ではお好み焼きをおかずにするとか聞くし、意外に焼きそばをおかずにするのも有り……なのか?
冷凍食品のお弁当のおかずにも焼きそばあるし……。
「麺だけで充分ボリュームがあるから大丈夫だろう」
「そうだ。だからご飯を用意する必要はないぞ、カケル」
だったらと、冷凍ご飯を解凍しようと立ち上がった俺をラベンドラさんとマジャリスさんが止める。
あの、リリウムさん、頬膨らませて拗ねてますけど大丈夫そ?
「にしても、やっぱり異世界の卵は美味しいですね」
「まぁ、今回のルフ鳥の卵は高級品だからな」
「カケルが普段使っている卵の値段は分からないが、流石にそれよりは高いだろうし……」
「まぁ、十個入りで売られてますしね」
なんて話をしたら、ラベンドラさん達の手が止まった。
「十個入り?」
「ですよ。ある程度の大きさが揃ってるやつが一パックに十個入ってるやつを買ってます」
そういや、買ってきたらすぐにパックから取り出して冷蔵庫に入れてるから、どんな形態で売られてるのか知らなかったのか。
まぁでも、別にそこまで不思議なものでは……。
「そもそも、卵が安定して売られている……?」
「まぁ、余程じゃない限り俺が普段買ってる場所から卵が消えることは無いと思いますね」
過去にあったっけな……、スーパーから卵が消えたなんて事象。
大体いつ行ってもあった記憶なんだけど……。
「安定供給されているのか……」
「そんな驚く事です?」
「いや……だって卵だぞ?」
卵ですよ?
滅茶苦茶高級というか、ブランド卵じゃあるまいし、別にそんな驚く事では……。
「カケル、私たちの世界では卵自体が高級品だ」
「そうなんです?」
「栄養価が高く、味もいい。それでいて、卵を産む魔物というのが種類が少ない」
言われてみりゃあ確かに。
鳥型の魔物しか産んでくれないだろうし……。
「それに、栄養価が高いという事は、冒険者も飲食店もこぞって買いたがる」
「需要と供給のバランスが歪なんじゃわい」
「一応、浅いダンジョンを改修して鳥型の魔物を飼育したりしてはいるみたいですけど……」
「野生の魔物と比べて、卵を産む頻度が少なくてな。少なくとも、流通が追い付いてないんだ」
ほへー。
異世界ってのも大変そうですね。
こっちの世界の養鶏場ごとニワトリとかを転移させたら、ワンチャン最初はぼろ儲け出来るんじゃない?
供給が追い付いたら値段落ち着きそうだけど。
「えーっと、つまりは……」
「卵が日々安定して買えるというのは、国としてかなり整えられている、という事だ」
「しかもそう言えばじゃが、お主の国の卵は生食できるんじゃろ?」
「普通に生でいけますね」
「かなり凄い事だぞ……」
こう、普段意識してなかったけど、こうして異世界からの人達に指摘されると改めて気付かされるな。
何にって?
人どころか国自体が食に関して変態だっていう事が、さ。
「ふう、美味かったわい」
「肉も野菜もまとめて麺と一緒に炒めるという発想は新しかった」
「可能ならあのソースも再現を急いで欲しい。それこそ、再現出来たらレシピの購入依頼が殺到するだろうが」
「案外、国王辺りが買い上げそうですけどね。ソクサルムにでも声をかければ、多分言い値ですわよ?」
と、みんなきれいにオムそばを完食。
あそこまで卵の味が濃いと、これから作る料理にも期待が持てるってもんよ。
そして……ふふふ、いよいよ明日。
カスタードプリンの作成を決行する。
今まで甘味を作ってなかったからな。
一体どんな反応してくれるんだろうね、この四人は。
……あ、お持ち帰りはオムそばサンドを作りました。
今度はオムレツの中に焼きそばを入れてさ。
それをパンで挟ませました。
なんでも器用にやっちゃうね、流石ラベンドラさんって感じだったわ。




