命あっての物種
恥の多い生涯を送ってきました。
……生きてる?
生きてる!!
良かった~……。
マジで死んだかと思った……。
調理するために卵開けようとしてさ。
やっぱり包丁の柄じゃあ歯が立たなかったから、物置からノミと金槌を持って来たのよ。
で、卵のてっぺんのとんがってる所をぐるりとこう、切り取り線みたいに傷をつけてさ。
パカッと開いたらですよ。
なんか見たことない白いミミズ? みたいなのが飛び出して来てさ。
ミミズって言っても、俺の腕の太さくらいはあるやつで、某黒光りするGみたいに顔面に向けて迫ってきてて。
しかも口開けてさ。明らかにいただきまーすみたいな感じだったわけ。
口の中には細かくて鋭い歯がビッシリ。
あ、これ死んだ、って思ったんだけども。
うん、生きてる。
で、その白い太ミミズなんだけど、俺に触れるか触れないかくらいのところで急に純白の炎に包まれてさ。
ものの数秒で、何も残らずに燃え尽きちゃいました、と。
さぁて? あの四人には何がどうなんだか詳しく聞く必要がありそうですわね?
*
「その……すまんかったと思っとる」
「だが、無事だったのだからそれで……」
「かなり恐怖を感じたんですけど?」
「本当に申し訳ありませんでしたわ……」
えー、四人とも正座です。
で、話を聞くと、ルフ鳥の卵の中には寄生虫が住み着くらしい。
本来はそれも処理する手段があるらしいんだけど、ガブロさんがうっかり忘れちゃったんだって。
しばらく現代の酒は飲めないと思え?
「まぁ、無事ですし、そこはもう問題ないとして」
で、あの白い太ミミズの話が終わったら次は……。
「俺に近づいた瞬間、真っ白な炎に包まれたんですけど、あれは?」
「私が施した加護ですわね。万が一を考えておいて良かったですわ」
「加護……」
あの白い炎の話に移ったんだけど、こちらもすぐに状況を把握。
なんでも、俺に明確な悪意や害意を持って攻撃をしようと肉薄してきた対象を燃やす魔法障壁みたいなのを展開してたらしい。
通り魔とかに襲われなくて良かったよ。
この世界のものじゃない炎に包んで焼き殺してる所だった。
……証拠というか、遺体も残らないみたいだしね。
「とりあえず、そちらの世界の生き物が今後生きた状態でこちらに来ないようにお願いします」
「そうだな。こちらの世界の生態系を崩すことになってしまうだろう。ガブロにはきつく言っておく」
「お願いします。……それで、その一件でかなり怖いんですけど、この卵は食べて大丈夫なんですよね?」
殻を開けたら襲い掛かってくる寄生虫が居たタマゴ。
正直怖くて食べるのを躊躇うんですけど……。
「それについては問題ない。というか、その寄生虫が居ることが高品質の証だ」
「寄生虫が卵の中の他の生き物を駆逐するゆえ、その寄生虫さえ処理出来れば心配いらん」
「不安でしたら、一度浄化魔法を目の前でかけますわよ?」
どうやら大丈夫らしいです。
で、一応リリウムさんの提案を飲んで、目の前で卵を浄化魔法で包んで貰った。
……正直、魔法が使われている場面を見たかったのは内緒だ。
「んじゃあ、これを調理していきますか……」
「ああ。今日は何を作るんだ?」
「今日はオムそばを作っていきます」
というわけでいつものドラゴンエプロン装備のラベンドラさんを携えて調理へ。
そうそう、卵の中身なんだけど、覗き込んだら大量の白身の中に黄身がたくさん入っててさ。
てっきり、クソデカ卵みたく黄身が一つだと思ってたから驚いちゃった。
ラベンドラさんが言うには、ここから成長の早い黄身が他のを取り込んで大きくなっていくんだと。
そうして一番優秀な個体が成長していくんだってさ。
異世界の生き物は不思議だねぇ。
「とりあえずお肉を炒めましょう」
で、話はオムそばに戻りまして。
まずは豚肉から炒めていく。
こちら、業務スーパーで買って来た豚バラスライス1㎏になります。
一食で消えます。驚いちゃうね。
で、お肉に火が通ったら、カット済みの焼きそば野菜セットを人数分フライパンに。
キャベツ、玉ねぎ、人参、もやしが入っている奴ね。
「こうしてあらかじめ用途に合わせて切ってある野菜は便利そうだな」
「実際便利ですよ。何も考えずにこれ使えばいいわけですし」
なんて話をしながら野菜も炒め終え。
そこに焼きそば麺を投入。
メーカーが出してる、三人前の麺とソースが一緒になってるやつを3セット。
俺も合わせて都合九人前になります。
流石にここまで来るとフライパンがパンパンだぜ。
で、水を少量入れて麺をほぐし、水分を飛ばしたらソースを投入。
個人的に粉末ソースよりも液体ソース派。今回ももちろん液体ソース。
で、焼きそばが出来ましたら次はオムレツ作り。
ルフ鳥の卵からコップで黄身と白身を掬ってボウルに入れ、塩、胡椒、マヨネーズを入れてかき混ぜて。
熱したフライパンにバターを入れ、溶けきる寸前に卵を流し込み。
固まる前にかき混ぜてフワフワオムレツを作るわぞ~。
固まったら形を整えてひっくり返し、盛り付けた焼きそばの上に乗っけて完成っと。
ね? 簡単じゃないでしょ?
「こうか」
ま、ラベンドラさんは当たり前にオムレツをひっくり返して作っちゃうんですけど。
面白くない。
俺かなり練習したんだけどな。オムレツの。
……にしても、
「ルフ鳥の卵の黄身って白いんですね」
雪みたい……は言い過ぎだけど、白と表現するのには差し支えない色のオムレツが出来上がった。
あんな? 白って二百色以上あんねん。
「というより、こちらの世界の黄身が黄色が強いと思う」
「ですわね。あんな鮮やかな黄色、珍しいですわよ」
俺の感想にはラベンドラさんとリリウムさんが物申す。
そう言えば確かに、日本の卵の黄身は色が濃いって何かで見た気がする。
「とりあえず完成です、食べましょう」
で、反応しなかったマジャリスさんとガブロさんを見たら、じーっとこっちを見つめててさ。
「まだか?」
と目だけで訴えかけてきてるのよ。
慌てていただきますを促したよね。
さてさて、俺に命の危機を味わわせてくれた卵の味やいかに。
翔君、現実離れした体験をしちゃったせいであまり現実として受け入れられてない模様。
そんな事より卵の味よ、とは翔談。




