ガブロのやらかし
「そう言えばだが、カケルは料理に卵をよく使うな」
「そうですか?」
持ち帰り用のニンテイタコカイナの唐揚げを調理中、ラベンドラさんにそう言われ。
思い返してみると、カツの衣に使ったり、煮卵にしたり。
おでんには当然使ったし、卵焼きは卵メインだし……。
そう言われると確かに卵は結構使ってるな。
というか、日本食が卵を使う料理が多いだけとも言えそうだけど。
栄養価高くて彩も良く出来る。だから……なのかなぁ。
「言われてみると確かに」
「ガブロ、あの卵はまだまだあるはずだな?」
と、答えたらガブロさんに声が掛かり。
「ん? おお! 残っとるぞい!!」
ゴソゴソと取り出されたのは……卵。
……卵――だよな?
「これ……卵ですよね?」
「どう見てもそうだろ」
なんて、マジャリスさんに言われるけどさ。
見て分かるけど分かりたくない、っていう感情を汲み取って欲しい。
大きさは……某狩りゲーで採取クエスト対象になる飛竜の卵くらい。
簡単に言うと、俺が両手で抱えて持ち上げる位の大きさ。
下手すりゃ俺の腰から上と同じくらいの大きさあるぞ……。
で、ぶっちゃけ大きさはそこまで問題じゃないんよ。
前に見た卵もこっちの世界の卵とは比較にならん大きさしてたし。
問題は色。
これまたカラフルに七色の筋が入ってるんだよな。
しかも、虹みたいな感じじゃなくて、暗い色は黒から明るい色はショッキングピンクまで。
色の振り幅が凄い。
「『ルフ鳥』という巨大で素早い鳥の魔物の卵でな。栄養価も高く、味もいい。王都のレストランでも滅多に取り扱わない食材だ」
「どうやって手に入れ……あ、やっぱりいいです」
そんな貴重な食材をどうやって、と聞こうとしたけど、分かりきってるじゃん。
ルフ鳥って魔物を見つけて巣まで追いかけ、巣から離れたら転移で巣に移動して。
卵持って転移で終わり。ね? 簡単でしょう?
親のルフ鳥はぶちぎれてそうだけど。
「よし、唐揚げ、揚がったぞ」
「じゃあ余分な油をきって、タルタルとチーズと挟んじゃいましょう」
にしても卵……卵か。
料理に使うというのはそうなんだけど、卵をメインに据えた料理ってパッと思いつかんな。
どっちかというと卵メインはデザートとか。
……待てよ? デザートか。
向こうの世界にもあるだろうが、今までの傾向から察するにこっちの世界程食文化は発展していない。
……それはつまり、甘味が無双するのでは?
卵メインならプリンとか、カスタードクリームだってそう。
パンケーキとかも卵使うし、これは……。
リリウムさんとか好きそうだな。狂喜乱舞したりして。
「ん? 何か悪い顔をしていないか?」
「ソンナコトナイデスヨ?」
「そうか。ならいいが」
プリンで思ったけど、茶碗蒸しも卵メインの料理だな。
デザートはまぁ、食後に出すとして、真っ当な料理も考えないと……。
オムライスは前作ったんだよな……。
じゃあオムそば作るか。
焼きそばなんて異世界に無いだろうし、たこ焼きであんなに喜んでたんだ。
焼きそばも喜ばない道理がない。
「よし、それでは、また明日」
「あ、はい。卵料理を色々考えてお待ちしてます」
「楽しみですわ~」
「期待しとるぞい」
という事で四人はお土産もって、魔法陣の中へ帰っていく。
ん~、卵って素材は柔軟性に富み過ぎてるからメニュー迷うなぁ!
この、人によっては面倒だと感じるメニューや献立を考える時間。
俺結構嫌いじゃない。
むしろ好きまである。
こう、トレーディングカードゲームで自分で考えながらデッキ組んでる時間的な?
ぼくのかんがえたさいきょうのでっきを考えてる時間って、無限にワクワクするよね。
そんな感じ。
「まぁ、作るのは明日だし、今日は片付けして寝るか」
夜更かしはしない主義。
何故なら、そんな体力はもう無いから。
悪い事は言わん。若いうちに遊んどきなさい。
年齢重ねると、遊ぶ体力すらなくなっちゃうから……。
*
「うげっ……そうだったわ」
翌日、起床して台所に向かうと、冷蔵庫の前に立てかける様にしておいてある巨大卵に遭遇。
置き場所無くてこうしてたんだった。
そうそう、あの後ルフ鳥について調べてみたのよ。
翻訳されてなお魔物の名前が分かったから、こっちの世界でも有名なのかなーって。
そしたら、ルフ鳥の別名? 的なのはかなり有名だった。
その名も『ロック鳥』。某ゲームで有名だし、名前だけなら聞いたことあるよねって人も多いと思う。
牛三頭をまとめて捕まえて運ぶとか言うスケール感バグった話が出て来てたけど、異世界ならばさもありなんという事でそれはそれ。
で、そりゃあ卵もこのデカさにもなりますわって納得したよね。
さてさて、とりあえずは……このデカさの卵を割る作業が必要ですねぇ。
包丁の柄とかで何とかなるかな?
ダメなら、庭の物置からノミと金槌持って来ることになりそうだ。
何故かあるんだよね、それらが。何故かね。
*
「む、しまったわい」
「どうかしたか?」
「カケルに渡した卵、中に居る虫の事を忘れておったわ」
「調理中に十分に加熱するから大丈夫じゃないのか?」
「ああいや、そっちじゃなくてな……」
「まさか……」
「そのまさかじゃ」
「すぐにカケルの所へ戻るぞ!! このままだとカケルが襲われる!!」
「? カケルには私が『加護』を施しておりますわ。そんな低レベルの虫程度、カケルには触れる事すらままなりませんわよ?」
「そ、それなら安心……か」
「ちょっとだけ、驚かせてしまうかもしれませんわね」




