四人の反応はいかに……
すぐに飲むかと思ったら違ったわ。
四人ともグラスを高く揚げて光に透かしてワインの色を見てる。
これ知ってる、高いワインでやるやつだ。
少なくともスーパーで買えるお手頃ワインでやる事じゃねぇよ……。
「色はややくすみ有りのガーネット色」
「濃く、深い色で香りは――とても華やかですわね」
「匂いからやや辛口、あるいはもう少しマイルドなイメージを受けるな」
「あっちの世界なら出す店はそこそこに格式の高い場所じゃろうな」
四人の表情がマジなんですけど。
ていうか、飲む前から感想が激しいなおい。
ソムリエか? あんたら。
「さっそく一口……」
「ほう」
「まぁ」
「なるほどのぅ」
どうしよう、料理を食べて貰った時よりドキドキする。
……これって、恋?
――不整脈かな、多分。
「口に広がる風味が強く、酸味と甘みのバランスがいい」
「アルコールがそこまで強くない分、口当たりもまろやかだな」
「フルーティな感じもいいですわね。でも、しっかりと芯のある味わいですわよ?」
「おおよその料理に合いそうな味じゃ。これが店で出てきたなら十分に満足して帰れるわい」
で、ワインは概ね好評と。
ただ、あくまでワイン単体の評価ね。
結局ワインって、料理と合わせてどうか、って話ですよ。
というわけで甘露煮を食べた後にワインを含む四人。
「……随分と表情が変わるな」
「甘辛いタレに負けない程の主張がある。かと言って味の喧嘩はない」
「後味も口の中に残る生臭さとかは皆無ですわ。むしろ、ワインのいい香りが口の中に残ってますの」
「魚料理に合う赤は割とあるとは思うが、これはかなり好印象なワインじゃわい」
そんなもんなんですねぇ。
ワインは申し訳ないけど門外漢なんですよ。
……ワインに限らず酒全般は門外漢なんですけど。
「美味しいって事で大丈夫です?」
「うむ、間違いなく美味い」
「貴族などでも好んで飲む人が出るくらいには上等なワインだと思いますわよ?」
「味や香りのバランスがいい。その上癖が少なく大体の料理に合う味だ」
「肉と合わせるとまた違う表情が見れそうじゃな。とはいえこの甘露煮とも相性はいいぞい」
と、全員ご機嫌に甘露煮つつきながらワインを楽しんでらっしゃいました。
にしても千円以下のワインがここまで高評価か。
……もう少し、値段のするワインだとどうなんだろう。
「白も試したいが……この料理にはな」
「負けそうですわよね。赤だからマッチしたと私も思いますわ」
「どうせなら次来た時の楽しみにしておきたい。カケルの事だ、きっと白ワインに合う料理を作ってくれるだろう」
「そういう事なら今日は赤だけで我慢するかのぅ!!」
なんか勝手な事言ってるし。
ていうかちょっと待て、なんで俺だけでご飯作る流れになってるんだ。
ラベンドラさん? あなたも作るんですよ?
俺より料理の腕は上なんだから逃げられると思うなよ?
「それじゃあ、持ち帰り用のご飯作っちゃいますね」
「手伝おう。今日のメニューは?」
お代わりのワインを注ぎ始めた三人を余所に、いつも通りのエプロンを付けて隣に来るラベンドラさん。
ふっふっふ、今日のご飯は禁断の食べ方をしちゃいますよ~。
「さっきの甘露煮を、煮汁ごとご飯に混ぜてねこまんまにします」
「……ねこまんま?」
言って不味いと思っちゃったよ。
これ、キャットフードとかに翻訳されてないよな?
俺は信じてるぞ!? 翻訳魔法さん!?
「み、みそ汁とかをご飯と混ぜたものをそう呼ぶんです」
ちなみにねこまんまは、俺的にはご飯に鰹節を乗せて醤油を回しかけたものから、みそ汁や煮魚を汁ごと混ぜた範囲の事を指す。
おかかまぶしご飯は結構好きなんだよな。
ただ、意地でもマヨネーズはかけない。何故なら猫はマヨネーズを食わないからだ。
ちなみにシーチキン混ぜご飯もねこまんまではないね。
何故ならシーチキンは猫にとって塩分が高いからだ。
それ言ったらみそ汁とかもアウトな気がするけど、あっちは由緒正しきねこまんまだから……。
「というわけで甘露煮混ぜご飯を作っていきまして、まずはこれを屯食にします」
ちなみにこの屯食って呼び方、江戸時代くらいまでのおにぎりの呼び方らしいですわよ?
まぁ、俺は翻訳魔法を信じてますし? 俺がどんなおにぎりの呼び方をしてもきっと翻訳魔法は正しく訳してくれてるはず!
だから問題ない。
「で、そのままだと緩くてきっとボロボロになっちゃうので、全部を海苔で包みます」
別に形状は三角である必要はないし、全部を海苔で包むなら丸おにぎりでも可。
む、そうだ、閃いた。
このおにぎりの中に、梅干しとか高菜とかを入れちゃってみよう。
不味くはならんし、味や食感のアクセントになって美味しいはず。
そう言えば梅干しってみんなに試して無かったな。
どんな反応するんだろう。
「おにぎりの具に漬物を入れましょうか」
「ほう。今日出てきたワサビ漬けとやらか?」
「いえ、あれはちょっと刺激が強すぎるので……梅干しと高菜、後は……たくあんですかね」
梅干しも刺激が強いけどな、ワサビ漬けとは別ベクトルで。
まぁ、美味しく食べてくれるでしょうよ。
梅干しはタネを抜き、高菜はそのまま、たくあんは千切りにして詰めますわぞ~。
で、出来上がったものがこちらになります。
――ラベンドラさん、取り出した梅干しのタネをチラチラ見てるな。
味が気になるのだろうか?
というわけで、
「ラベンドラさん」
「ん?」
「あーん」
箸でタネに少しついてた梅干しを少し摘まんでラベンドラさんの口の中へ。
さてさて……反応は?
「ひゅっ!?」
わぁ、顔面がしわくちゃになっちゃった……。




