謁見の行方……
「本当に大丈夫なんだろうな……?」
「何度目だ? 私たちが不味い料理を献上するとでも?」
王都に向かう馬車の中。
オズワルドからの、もはや何度問いかけられたか分からない質問に、うんざりした様子でラベンドラが答える。
「先ほども私たちから受け取ったバーガーを美味しそうに食べていたではありませんの」
「アレを食って、王には不味いもんを献上するっちゅー考えを持つんならわしらをバカにし過ぎじゃろ」
「というか、そんな事を言うなら食った分を返せ」
もちろん、ラベンドラ以外の三人もうんざりとした様子だが。
とはいえ、オズワルドの気持ちを四人が分からないか? と言えばそういうわけではなく。
自分の推薦した冒険者が王への無礼などを働いた場合、推薦者にもその責任が向かう事は至極当然。
だからこそ、ここまでしつこく問いかけているのだ。
お前たちの持って来た料理で大丈夫か? と。
「そんなに不安なら王より先に味見をすればいいものを」
「出来るか!! 不敬にも程があるわ!!」
なお、その心配をいつまでたっても除去できない理由がこれである。
王へ献上する料理は気になるが、それを確かめるのは不敬に当たる。
だからこそ、オズワルドは尋ねるしかないのだ。
大丈夫か? と。
「それにしても、王都への移動なんて転移魔法ですぐですのに」
「色んな礼儀や儀礼があるんだよ。その為の馬車移動だ」
結局、どこまで心配しても、何度問うても。
その不安は、絶対に晴れることは無いとしたうえで、オズワルドが抱えるしかなく。
それらをまとめて大きなため息に変えながら、リリウムの言葉に反論したオズワルドは。
「王都が近くなったら起こしてくれ」
そう言って、馬車の中で目を瞑った。
それもこれも、王への謁見の日取りが急に決まり、様々な手続きを徹夜で終わらせるしかなかったからで。
そんな事を知らない四人は、
「魔道具の開発を奏上した記録はありませんでしたわね」
「可能だと思うか?」
「突き詰めれば自分の食事にも関わってくることだ。初めは難色を示すかもしれないが、説明すれば納得してくれるだろう」
「国の一大プロジェクトとかになりそうじゃのう」
と、眠りに入るオズワルドの横で、気になり過ぎる相談を続けるのだった。
*
大丈夫かなぁ……あの四人。
昨日帰る時に言ってたけど、今日王様と謁見してるはずなんだよね。
『OP』枠外れるのは確定みたいな事言ってたけど……。
ううむ……。
まぁいいか。
とりあえずは――貰った食材の試食と行きましょう。
キノコって事で、貰ったんだよな、これ。
笠と茎の部分が切り離されてて、笠の大きさはマジで傘みたいなサイズ。
そこに、シイタケみたいな感じで肉厚になってるようなの。
んで茎ね。俺の腕二本と同じくらいの太さ。
デカすぎんだろ……。
にしてもキノコ……キノコなぁ。
嫌いじゃないし、全然好きな部類なんだけども。
どちらかと言うと、あまりメインになるような食材じゃないじゃん?
舞茸の天ぷらとか、キノコ鍋とか、全然好きよ?
でも、それくらいしか思いつかないのよ。
ましてやこのサイズでしょ? どう使おうか、と考えながらも笠と柄とを少しづつ切って塩を振ったお湯の中へ。
なんでも、
「傘と柄とでは食感や味が違う」
ってラベンドラさんが言ってたから、どう違うんだろう、と。
まぁでも言うてキノコでしょ? って食べてみたらですよ奥さん!!
「え!? うま」
食べてびっくり玉手箱。
まず笠の方ね。これ、まんま牡蠣の味。
クリーミーさといい、コクといい、マジで牡蠣。
惜しむらくは汁っ気が無いことくらい。
でも、味は濃厚で喉越しもいい上質な牡蠣の味とクリソツでしたわ。
これキノコってマジ?
俺が異世界に居たらこいつは駆逐してるぞ?
姉貴と一緒に。
「んじゃあ柄の方は?」
笠が牡蠣なんですよ奥さん。
じゃあ柄は? って期待に胸が膨らむのは当然ですわよね?
「おっ! なるほどぉ……」
で、食べた感想なんだけども……。
このキノコ凄いよぉ! 流石異世界産の謎キノコぉ!!
柄はホタテの貝柱そっくりでした。
しかもこっちも味が濃厚。
ホタテの風味はしないけど、味と食感はほぼホタテの貝柱。
あ、でもちょっと磯の香りはする。
海辺にいるキノコなのかな……?
海辺にキノコとか生えるのか? ……まぁ、異世界だしな。生えるんだろうな。
「ホタテも中々家で食べる機会無いから、これは嬉しいかも」
ホタテといったらね、やっぱり貝柱ですよ。
ヒモも美味しいんだけどね。どうしても目玉は貝柱よね。
それが腕二本の太さであるんですよ。何作ろうかなぁ。
「バター醤油で焼きたいし、それこそこれでクラムチャウダーとかしたい。……あとは――」
異世界食材を貰った時のお楽しみタイム。
この食材で何を作るかの脳内会議。
異世界バナナ(見た目牡蠣)の時から言ってた記憶がある牡蠣入りのクラムチャウダー。
そろそろ俺の胃袋がそれを求めてるんだわ。
なんて考えていたら、見覚えのある魔法陣が出現。
その中から、いつもの四人が顔を出し――。
「カケル!! あなたのおかげですわ!!」
部屋に入ってくるなり、急にリリウムさんが抱き着いてきて。
「うわっ!? ちょっ!?」
突然の出来事に、体勢が崩れ、そのまま倒れ――ずに宙に浮いている俺とリリウムさん。
「全く……何をしている」
そんな俺とリリウムさんを見ながら、あきれた様子でため息をつき。
俺たちへ伸ばした手から謎の光を放っているマジャリスさんが助けてくれたことに気が付くのに、そう時間はかからなかった。




