18。お前だけを見てる
ジィッと、リカコさんとカイリの視線が絡む。
「却下。他には何かある?
無いなら解散にしましょう」
あたし達を見回して、リカコさんが冷たく言い放つ。
うええええっ?
カイリまだ何も言ってないけど……。
なんだか不穏な空気に、あたし達年下組は黙って見ているしかなくてぇぇぇぇっ。
ジュニアがめちゃ楽しそうな顔してるぅ。
「リカコっ! 初回から全ての現場に出てるだろう? 今回は休め」
リカコさんの言葉を無視してカイリが続ける。
「私は中の仕事しかしないから大丈夫よ。それにオペレーターがいないと困るでしょう!」
席から立ち上がって、リカコさんがカイリを見下ろす位置に立つ。
こんなにリカコさんが食い下がるなんて。
「そっちはジュニアがいるから大丈夫だ。行けるな?」
振り返るカイリにジュニアが肩をすくめる。
「問題ないよ」
「ダメよ。ジュニアだって3連続になるじゃない」
「リカコ。オペレーションだけが中の仕事じゃないだろ。マップで周辺地理の確認、内偵プラン、逃走経路、報告書。他にもあるんだろうが、俺にはサッパリ分からんから手伝ってやれない。正直リカコに任せっきりだ。
みんなのことを考えてくれるように、自分のことも労ってくれ」
2人の口論の隙間から、イチとジュニアと顔を見合わせる。
確かに、リカコさんに頼りっきりなところがあるよね。
「私は大丈夫だって言ってるでしょっ!」
イライラしているリカコさんに、カイリはいつもの調子で話し掛ける。
「最近、〈おじいさま〉が詰め込んでくるせいでカツカツじゃないか。リカコがみんなの体調を心配するから、俺はリカコだけの体調を心配してやる。
お前だけを見てる」
真っ直ぐにリカコさんを見つめて。
「っっ!」
リカコさんが息を飲むのが伝わってくる。
って、ほぼ告ってるじゃん。
もちろんカイリにそんなつもりはないんだろうけど、純粋っていうか単純っていうか、悪意がない分バカっていうか。
「だから脳みそまで筋肉って言われるのよっ!」
ですね。
リカコさんも相当頑固だけど、カイリも結構頑固者。
この2人が揉めると、折れるのは必ずリカコさん。
何だかんだ言ってもカイリが本気で心配してるの分かるしね。
大体
勝手にしなさい。
の一言で片がつく。
「勝手にしなさいっ!」
ほらね。
生徒会室の窓の戸締りをするリカコさんを廊下で待つ間、イチとジュニアに視線を向けた。
「ちょっと、先に戻ってて。
カイリ。ちょっと時間もらってもいいかな?」
あたしの視線に頷くカイリを伴って、いつも使っている階段とは廊下を挟んで反対側の階段を降りていく。
「なんだろうね。内緒話。
怪しさが微塵も感じられない2人だなぁ」




