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警視庁の特別な事情〜JKカエ優雅な日常を取り戻せ〜  作者: 綾乃 蕾夢
優雅な日常を取り戻せ

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11。空気読めないっていうか、読まないっていうか……

 あの後、深雪の話をしっかりと聞いて家まで送って行った。

 せりかさんとも確認したけど、やっぱり渋谷の交差点の一件が原因でのPTSDじゃ無いかって事で、深雪と深雪のお母さんには話をして、1度病院で診察する事を約束してくれた。


 で、いつもより1時間遅れて定例会に参加。みんなにはLINEで遅れる事は連絡済み。

 まぁ、カイリから話はいってると思うけど。


「負傷の件。リカコから聞いた」

 寮のリビングに入るなり、カイリの怖い顔がお出迎え。

「何で土曜日に撤退して来た時点で報告しないんだ」

 座る様に促されて、何となく決まっているいつもの席に着く。

「ごめんなさい。でも、あたしが黙っててってお願いしたの。ジュニアもリカコさんも悪くないからね」

 リカコさんがなんとも申し訳なさそうに見つめてくれる中、カイリとイチにはしっかりと目を合わせて伝える。


「終わった?」

 まっったく軽い感じてジュニアが会話に入ってきた。

 空気読めないってうか、読まないっていうのはこういうんだろうなぁ。と思いつつ、ちょっと(うらや)ましい。

 ちょっとね。

「まだだ」

 カイリがあたしに視線を送ってくる。

「友達。大丈夫だったか?」

 っ!

 カイリって、何だかんだ気配りが優しい。

「……うん。ちゃんと、受診するって」


「じゃ、改めて。

 一昨日の報告はだいたい済みね。ちょっと気になったのは、2年前に会っていたっていう銀龍会の男と、〈餓狼(ガロウ)〉って言うサングラスの男」

 ジュニアは、座るパソコンデスクのキーワードを叩く。


「2年前、暴力団絡み、イチ×カエで出ていた現場は2件だけだった。

 拳銃の密売絡みの白鳳(はくおう)会。

 麻薬の密売絡みの金剛(こんごう)会。

 どっちもこれと言う問題なく報告書が上がってるんだけれど、記憶ある?」

 イチと顔を見合わせるけど、その顔を見るに記憶にないのは明白で。

「あのスーツ、俺のことはうろ覚えだったけどニュースで見たカエの顔には見覚えがあったんだろう?」

「そか。じゃああたしメインだね。覚えてないけど」


「ま。僕だって2年も前の現場なんて記憶にないけどね」

 最初から期待はしていなかったんだろうね。ジュニアはあっさりと言い放つとリカコさんに向き直る。

「組対5課は、いつ頃動く予定?」

「明朝には家宅捜索よ。証拠はあるし、とりあえず形だけ」

 証拠の集め方に問題あるけどね。


「餓狼って男……。ジュニアの抑えた映像見たけど、イヤな感じだったな」

 イチが思い出す様に言葉を紡ぐ。

「うん。あたしも、なんか引っかかる」

 一昨日の現場。見つかった時の視線を思い出すだけで、寒くなる。

「色々調べたけど、裏ではそこそこの有名人みたいだよ。元々は暴力団の構成員だったみたい。

 武力派が高じちゃっていろんなところで用心棒の挙句、今に至る。みたいな」

「随分な略歴だな」

 カイリの顔も冴えない。


「最後に、鑑識からの報告よ。不動産屋は暴力団絡みの取り引きって事は知らなかったみたい。直接的な関わりも確認できなかった。

 現場は弾も薬莢(やっきょう)も全て回収されていたわ。壁を(こす)った銃痕(じゅうこん)もヤスリがかけられてて判別不可能。徹底的ね。

 明朝の家宅捜索でほぼ片がつくだろうから、それまでは各自気を付けて行動してね。特にカエちゃん、イチ、ジュニア」

 リカコさんの声にも心配が溢れて元気がない。

 今回は顔も割れてるしね。

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i518214    ★お読みいただきありがとうございます★
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