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警視庁の特別な事情〜JKカエ優雅な日常を取り戻せ〜  作者: 綾乃 蕾夢
JKカエの場合

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21。自転車の荷台

 何だかんだと言ったところで、ジュニアとリカコさんのサイバー組が何をしているのかはよくわからない。

 やり取りは基本個別LINEだし、特に声がかかることもないし。


 まぁ、任せるって言った以上は待つしかないし、ジュニアとリカコさんなら大丈夫だろうけど。


 イチに怒られたのもあるけど、あれから休み時間の度にLINEが気になってしょうがない。

「香絵、最近LINEの返信早くなったよね」

「そうだね。前は既読にならない、返信遅いは当たり前。生きてんの? って思ってたもん」


 ゆったり流れる授業の合間の休み時間に、スマホを片手に持ったまま机に突っ伏していた顔を上げると、深雪と夏美が言いたい放題。


「LINE気になるの? 最近考え事してること多いみたいだし……。悩みあるなら話し聞くよ」

 机の正面からひょこっと顔を出した愛梨は心配そうにしてくれる。


 まぁ、悩みと言うか心配事。残念ながら、みんなに相談出来る内容じゃない。

「んー。ありがとう、大丈夫。もうちょい落ち着いたらね」

 適当に言葉を濁すと、ググッと両手を握った愛梨に応援された。

「頑張ってねっ。香絵」

「? お、おう」

 何を?


 ###


 ホームルームも終わり、帰り支度にざわつく教室の中でLINEの着信にスマホを見る。


 6月17日金曜日

 リカコ:誰か本庁の捜一にパイプある?

 榎本課長の事知りたいんだけど。

 15:05

 カエ:あるよ! たむたむが捜一にいる。

 榎本課長って気の弱そうなおっさんでしょ?

 15:05

 リカコ:じゃあ、寮で。

 15:05

 ジュニア:わぁお。カエがまともにLINE見てる。

 15:06


 悪かったね。



 ###


「カエ」

 寮への道すがら、背後から掛かる声に振り返ると、自転車に乗るイチが近づいて来る。


「あれ。イチ1人?」

 場所は朝深雪と待ち合わせてる橋に近く、寮にも近い。

 ブレーキをかけてあたしの横に止まったイチは、いつものように荷台にジュニアを乗せていない。

「ジュニアは抜糸するからドクターの所寄ってから来るって」

「わぁ。黒スーツとやり合ってからもう1週間かぁ。なんかここんところ、立て続けにいろいろ起こり過ぎ」

 脳裏を横切る記憶に軽くため息が出る。


「カエこのまま寮に行くだろ? 後ろ。乗ってくか?」

 イチが自転車の荷台を軽く叩いた。

 いつもはジュニアが座っている席が、今日は空いている。

「うん。乗ってく!」

 スポバを前カゴに押し込んで荷台に横座りをした。


「わわっ。何気にバランスとりにくいね」

「乗り慣れないからだろ。危ないから掴まっとけよ」

 掴まっとけって言われても、どこに掴まんのよ。

 夏服の、薄いワイシャツの背中を右手でそっと握る。

「行くぞ」

 イチの足が地面を蹴って、自転車は大きく揺れて走り出した。


 うわっ。

 反射的に空いていた左手が、身体をかばおうとイチの腰に掴まる。


 ワイシャツ越しに鍛えた背筋の硬さを感じた。


 乗るんじゃなかった。

 なんとも言えない気恥ずかしさにちょっと後悔。


「ジュ、ジュニアは簡単そうに乗ってるのに」

「慣れだろ。まぁ、後ろ向きにあぐらかいてられるのはジュニアくらいだろうけど。あのバランス感覚は最強だよ」



 寮までの道のりは今までにないくらい短くてあっという間。

 自転車の前カゴから出したカバンを渡される。

「チャリ片してくるから持ってて」

 イチが離れた隙に大きく深呼吸。


 きっと乗り慣れない自転車の荷台になんか乗ったから、呼吸が乱れたんだ。

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i518214    ★お読みいただきありがとうございます★
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