第三十五話 サテライトワールドマップ
○ダンジョンショップ楽輝、二階居住スペース、霧島幸太郎自室○
時刻は午後8時を回った。
帰宅してから、飯も食ったし、風呂にも入った。
リュックの中のポーションや解析メガネ、着替え、食糧等々、都合良く手に入れた収納の指輪にすべて移し、回収した剣と盾は、親父に全部押し付けてきた。
そして、プロちゃんへの星間転移術式の組込も無事完了。
ここまでは予想以上に順調に来れたな。
といっても、それがハッピーエンドに繋がっているかは、終わってみなけりゃ分からない。
兎に角、今は一刻も早く惑星モースへ赴き、三角さんの行方を探さなければ。
(プロちゃん、星間転移やってみるぞぉ。行き先は、惑星モースのあの岩柱の上。)
『わかったでしゅ。』
(それじゃぁ、レッツゴ~。)
シュン
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
○惑星モース、女神像の神殿前○
シュン
おお~念願の異世界到着かぁ。
にしてもこっちも夜なんだな・・・しかも月まで2つあるし。
と、まずは神殿に入って、女神像に魔石を奉納せねば。
ガチャリ
扉を開けて中に入ると、以前と変わらぬ姿の女神像があった。
そしてその女神像に祈りを捧げると、女神像は輝きを放ち始めた。
『よくぞ参った、我の第一信者よ。して魔石とやらは手に入ったのか?』
「あっ、はい。」
『ではその祭壇の上に置くが良い。』
女神像の前にある祭壇に、魔石を置くと、その魔石は瞬時に消えた。
『ほう、これが魔石ですか。なるほどのう。
此度はご苦労であった。そなたには今回のミッション達成の特典として、我の力の一片、『サテライトワールドマップ』を授けよう。』
サテライトワールドマップ?
・・・う~ん、名前からして人工衛星から見た感じの地図的なものかな。
『これでそなたの使命である、惑星モース布教の旅も捗るというもの。』
前にも聞いたな、その訳の分からん旅・・・
『では、もうそなたは下がって良いぞ。また次回のミッションも励むが良い。』
いやいや、そっちの用件は終わりだろうが、こっちにはまだ聞きたい事がある。
「あっ、すいません。女神様。ちょっとお尋ねしたいことが。」
『なんじゃ、申してみよ。』
「はい、実は今、この星に転移された地球人の女性の行方を探していまして、その女性が今どこにいるのか、ご存じないでしょうか?」
この女神像がこの星の神だというなら、三角さんの居場所くらい知っていても可笑しくない。
『そんなものは知らんな。』
ダメだったか・・・使っかえねぇなぁ、こっちの女神はっ。
『だが、そのくらい容易に探す事は出来る。』
おお、やっぱり女神様凄いっ。
『がしかし、それは『サテライトワールドマップ』を手に入れたそなたとて、同じ事。自分で探すのが良かろう。』
へっ、そうなの?
ワールドマップって只の便利な世界地図だとばっかり・・・
う~ん、となるとこれは最初のミッションとは桁違いの凄い特典なのかもしれない・・・
まあその分、苦労も桁違いだったけど。
とはいえそういう事なら、良いものが手に入った。
困難必至と思ってた三角さんの居場所が、労せず掴めるって訳だ。
「あっ、そうなんですね。有難うございました。」
となれば、もうここには用はない。
『ふむ、次回も期待しておるぞ。』
その言葉を最後に、女神像の輝きは失われた。
先を急ごう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
神殿の外にでると、俺はアイテムマスタージョブを確認してみる。
~~~~~~~~~~~~~~
『アイテムマスターLV6』
ランク :EX
種類 :インテリジェンスジョブ
状態 :ほっと一息
【ミッションクリア特典】
『作成アクセサリアイテムのDEX値上昇補正付与』
『サテライトワールドマップ』
【スペシャルスキル】
『アイテムアナライズ(極)』
『オールプロセス(極)』
『クイックプロセス(極)』
~~~~~~~~~~~~~~
おっ、ちゃんとあったな。
(Gさん、この『サテライトワールドマップ』って奴の解説たのむわ。)
『承知しました。え~、まずこれは2000km上空からの視点で、この星を見渡すことが出来るスキルのようなものです。』
(スキルのようなものって、スキルじゃないのか?)
『はい、このようなスキルは存在しませんし、これは神が持つ能力の一片を授けていただいたと言った方が、ご理解し易かったでしょうか。』
おお、じゃあやっぱりかなり凄い能力なんじゃないの?
苦労してミッションクリアした甲斐があったなぁ、ホント。
『そしてその能力と致しましては、目的地を探すサーチや拡大表示のズームといった2つの機能を搭載しております。』
(そのサーチの目的地ってのは、知り合いが居る場所って感じの設定でも探す事とかできるのか?)
女神様が簡単に探せるような事言ってた訳だし・・・
『それはその方がご存命であれば可能です。死体においては、個体識別が不可能になりますので。』
・・・おいおい、縁起の悪い事言うなよ。
でもそれって、俺がこのサテライトワールドマップで三角さんの居場所を確認した時点で、彼女の生死まで判明しちまうってことだよな・・・
・・・ゴクリ。
(Gさん、サンキュ。取り敢えず今から試してみる。)
サテライトワールドマップ、オープン。
俺の頭の中に、まるで衛星写真を見ているかのような映像が映し出される。
おお、ちょっと感動。
地球と同じく7割くらい海みたいだし、青くてとても綺麗だと思わされる。
そしてこの山脈みたいなところの赤い点が、現在地ってことでいいのかな。
さて、次はいよいよ運命の分かれ道。
頼むぞっ、どうか三角さんの居場所が見つかってくれ。
サーチ、三角桃香っ。
俺がサーチを掛けると、映し出されている星が、クルクルと高速に回り出す。
10秒ほど回転を続けると、今度は徐々にその速度を緩め、やがてピタリと停止した。
そしてその停止した星の中央には、一つの青い点が鮮やかに表示されている。
(こっ、これって、三角さんが生きてるってことで良いんだよなっ!Gさん。)
『そうですね。目的地が表示されましたので、マスターの探し人は、ご存命のようです。』
うぉっしゃあっ!
取りあえずお姉さんは無事だぞっ、飛鳥ちゃん。
『あと補足ですが、ズームで確認した場所は、実際にそこへ行った経験としてイメージ記憶されます。
これはつまり、転移術式の発動もまた可能ということ。
サテライトワールドマップには、こうした使い方も御座いますので、是非今後も有効にご活用下さい。』
おおっ、何気に凄いなっ、ズーム機能も。
さっすが神様の能力。
では早速・・・
ズームっ。
おお、イメージ通りにどこまでも倍率が上がる。
これなら本当に、まるで実際に地上に降り立った気分まで味わえる。
でもここまで凄ければ、遮蔽物透過機能なんてものも欲しかったところ・・・まっ、まあ贅沢は言うまい。
と、ズーム機能を確認しつつ、サーチされたポイントを確認してみると、そこは巨大な城塞都市の中にある、一軒の大きな西洋風のお屋敷。
三角さんが居るのは、あの大きな屋敷の中ってことか。
(それじゃあ、今すぐ行ってみるか。)
『はい、早く行きましょう、マスター。』
(三角さん救出にっ!)
『惑星モース布教の旅にっ!』
あれ?
次回、第三十六話 宮廷魔術師の館。




